India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0007 新型コロナウイルスとインド経済成長。最適解はどこにあるのだろうか?

コロナウイルス感染対策とインドの経済成長の最適解は

インド経済成長率41年ぶりのマイナス成長の見通し

インド大手経済メディアのThe Economic Times社の2020年5 月27日付報道によると、企業・政府、または金融商品などに独自の格付け情報を提供するFitch Ratings(フィッチ・レーティングス)が今年度のインド経済の見通しを 前年比マイナス5.0%に下方修正したようで、今年度のインド経済成長率は1979年から実に41年ぶりのマイナス成長となりそうです。

今年4月時点ではプラス0.8%の経済成長を予想していたため、大幅な下方修正となりました。背景としては、新型コロナウイルスの新規感染者を抑えるために、経済活動を強制的に制限するロックダウンが当初予定をしていたよりも大幅に長引いていることが原因となっており、各格付け会社は当初に比べて、インドの経済成長率の大幅な下方修正を発表しています。

先述したFitch Ratingsに加え、CRISIL(クリシル)は今年度の経済成長率予想を、当初のプラス1.8%からマイナス5.0%に、SBI Research(SBIリサーチ)は当初のプラス4.7%からマイナス6.8%に下方修正をしています。Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)も今年度の経済成長率はマイナス5%になることを示唆しておりますが、その内訳としては4-6月期を当初の前期比年率マイナス20%からマイナス45%に下方修正、7-9月期はプラス20%と予想を上方修正、10-12月期と来年1-3月期はそれぞれプラス14%とプラス6.5%としており、今年度の第二四半期からはプラス成長に回復するという見通しをたてています。

インド政府の厳格なロックダウンによる経済活動の規制はGlobal Economic Outlook(世界経済フォーラム)が予測する5月の世界全体のGDPにも大きな影響を与えましたが、Fitch Ratingsによると来年度(FY2021-22)のインド経済成長率はプラス9.5%に戻ると予測しています。

ロックダウン後もインドのコロナウィルス感染者は増加

新型コロナウイルス対策のロックダウンですが、ロックダウン中も新規感染者は増え続け、5月27日現在、合計感染者数は15万人を超えました。直近5日間の1日当たりの新規感染者数は6000人を超えており、アメリカ、ブラジル、ロシア、EU圏の国々に続き、累計感染者数世界第10位となっています。現在進行中の“ロックダウン4.0”では大幅な規制緩和が行われ、私が住んでいるバンガロールでは、これまで閉まっていたファストフード店(テイクアウトのみ対応)、アパレルショップ、携帯ショップなどが次々に営業を再開し始めました。歩行者の数も格段に増えており、マスクをせずに出歩いている人も目立つようになってきました。

経済活動を優先せざるを得ない状況の中で、規制緩和に伴う新規感染者の増加は想定済みであろうと思われますが、この規制緩和を機にさらなる感染爆発が起こってしまう可能性もあります。ロックダウン4.0は5月31日に終わる予定ですが、今後インド政府はどのような対応を取るべきなのか。国の経済を守りつつ、新型コロナウイルスと上手く付き合っていくための新しい政策、それを生み出すための柔軟な思考と、スピード感が重要となってくる中で、インド政府が全労働者にインストールを義務付けた『Aarogya Setu』も含め、インドが得意とするIT技術を活用し、官民一体となったスタートアップの活躍にも期待をしています。

Source :Fitchのインド経済成長率予想、大幅な下方修正
その他格付け機関によるインドFY21のGDP予想
Goldman Sachs、4-6月期GDP前期比年率45%減に下方修正

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