Vol.0027 投資家の注目が高まるチェンナイのスタートアップ企業。ビジネスをする上でのチェンナイの魅力とは
インド:チェンナイのスタートアップに集まる注目
インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2020年8 月12日付けの報道によると、チェンナイを拠点とするスタートアップへの注目度が高まっているようです。
これまでの投資先は主に、インド最大の商業都市であるムンバイ、インドのシリコンバレーと呼ばれるバンガロール、デリー首都圏の三大都市を拠点とするスタートアップ企業に集中していました。H1 2020(2020年上半期)のインド全体でのスタートアップの資金調達額は41.6億ドルで上記三大都市の合計の資金調達額は38.5億ドルと未だにインド全体の資金調達額の9割以上を占めていますが、資金調達に成功した企業の数および調達額は2018年からはほぼ横ばいです。
一方でチェンナイ拠点のスタートアップで資金調達に成功した企業はH1 2018は10社、H1 2019は13社、H1 2020は17社と増加を続けており、H1 2020の調達額はH1 2018の2倍以上となっています。
チェンナイに注目が集まるその背景とは
その背景として、チェンナイのスタートアップ企業は比較的、早期に新規テクノロジーを採用し、安全な運営かつ財務的に慎重なビジネスを構築してきており、その面において投資家からの注目を得ているようです。
実際にチェンナイ拠点のソフトウェアを提供している“Freshworks(フレッシュワークス)”や“Zoho(ゾホ)”のようなスタートアップ企業がユニコーン企業まで成長したことはチェンナイのスタートアップエコシステムが強力であることを証明しています。
また、チェンナイは他の都市と比較しても、産業と学術の基盤が非常に多様化しているためか、優秀な人材が多く、さらに、インド工科大学マドラス校リサーチパーク(IIT Madras Research Park)のような質の高いインキュベーションセンターは企業立ち上げに必要な基盤を提供することを可能にしています。
新型コロナウイルスの蔓延が原因でH1 2020のインド全体での資金調達額はH1 2019に比べ減ってはいますが、インドが投資家にとって魅力的な国であることは変わりありません。これまでの常識が通用しなくなった現在、投資家の方たちはニューノーマルの波に乗ってくるニュートレンドを慎重に見極め、ポートフォリオを再構築する必要が出てきました。
今後はさらなる外資との連携も期待される
チェンナイ拠点の農業テックスタートアップ共同創業者兼CEOのKarthik Jayaraman氏は「チェンナイはこれまでSaaS(Software as a Service)を中心としたIT技術によるクラウドサービスと相関する印象がありましたが、今後は金融サービスや小売、サプライチェーンなど、これまでデリー首都圏、ムンバイ、バンガロールを中心に発展していた様々な産業においても強力で持続可能なスタートアップが生まれてくる可能性が大いにあるだろう。それらの企業がどこまで成長し得るかはスタートアップの資金調達面でのエコシステムがどのように発展していくかにかかっているであろう。」と述べています。
スタートアップの成長を支える地域特有の仕組みや産業集積を含む、その土地の特性や強みはビジネスに直接的な影響を与えます。また、インド進出を視野に入れている外資系企業にとって、当地のスタートアップとの連携をインド進出の足がかりとするケースも今後増えてくるように感じています。日系企業とインド国内スタートアップの連携事例が今後増えていくことを期待しています。
Source:チェンナイのスタートアップ企業、投資家の注目高まる
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