Vol.0071 コロナ禍の産物、趣味学習プラットフォームのYellow Classとは
Yellow Classができた背景
インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年1月25日付けの報道で、3歳から12歳の子供向け、全世界で通用するレベルの趣味学習プラットフォーム、『Yellow Class』を取り上げています。
Yellow Classはシリアルアントレプレナー(※1)のAnshul Gupta氏によって、ロックダウン真っ只中の2020年6月にグルグラムを拠点に設立されました。Gupta氏は10年以上にわたってスタートアップのエコシステムに参加しており、3つの事業を構築してスケールアップ、そのうちの2つを売却し、2019年に4つ目のベンチャーである『goFlatmates』を立ち上げました。goFlatmatesはAIを駆使し、好みの賃貸住宅や同居人を探すサービスで、2020年初頭までは順調だったようです。しかし、コロナ禍により市場が完全に崩壊し、事業の方向転換をせざるを得ない状況になりました。
Gupta氏とYellow Classの共同創業者であるArpit Mittal氏はともに小さい子を持つ親であり、『自身の生活の中からYellow Classのアイデアが浮かんだ』と述べています。『コロナ禍以前は、3歳から12歳の子供たちはアニメを観たり、オフラインで何かをして遊んでいた。しかしコロナが流行り始めてからあらゆる分野でオンラインが台頭してきた』と追加しています。
Yellow Classのサービス内容
エドテックスタートアップの大多数がK-12(※2)向けのアカデミックな内容の学習に進出している中、Yellow Classは趣味学習のためのワンストッププラットフォームを目指しているようです。Yellow Classには現在30人以上のインストラクターが在籍しており、ダンス、絵画、クラフト、クリエイティブライティング、ストーリーテリング、火を使わない料理、ヨガ、マジックなどを含む50以上のプログラムを受講することができます。
各クラスの所要時間は40~50分で、価格構成はNetflixのようなシステムとなっており、一定期間固定費を払うと、あとは好きなだけクラスに参加することができます。そのため、通常のエドテックサービスの1/10の価格で、10倍の内容を学習することができます。(現在はYellow Classの利用料は無料で、次回の資金調達後にサブスクリプションシステムを導入するようです。)
Gupta氏は『我々は、オンラインクラスを受講するにあたって毎月5,000ルピー(約7,100円)を支払う余裕のない中流階級のインド人向けに本サービスを構築している。1日2GBのデータ容量があり、4G接続環境にある人は誰もが私たちの顧客になり得る。』と述べています。また、上記に挙げた趣味学習クラス以外にも投票、コンテスト、DIY活動、オーディオガイド、ビデオガイドなどのサービスがあり、このようなサービスでは母親コミュニティと提携して、3歳から12歳の子を持つ母親のための「子供の人格形成計画支援』」を目的としているようです。
今後の拡大計画
Yellow Classは2020年12月に過去最大の25,000人以上の子供たちがクラスを受講したと主張しています。これまでのところ、アートとボリウッドダンスのクラスが最も人気があるようで、インドと中東での成長率が最も高く、50ヶ国以上からなる27万5000人の母親コミュニティに拡大しているようです。
同社は、2021年年末までに同プラットフォーム上のクラスの種類を600まで増やすこと、100万人の子供たちが学習している状態にまで拡大することを計画しており、さらに今後5年間で5000万人の母親が子供のために世界レベルの趣味学習にアクセスできるようにすることを目指しています。
全体として、「おもちゃ・趣味・DIY」市場は2025年までに78億ドルの産業になると予測されています。『この産業は未熟だが、急速に成長している。趣味学習はロングテール(※3)のスペースだ』とGupta氏は総括しています。
個人的には今後学校の在り方が変わるだろうと感じていますが、それ以前に日本の多くの小学生が通っている「習い事」の概念が変わってきそうです。Yellow Classのようなオンライン趣味学習プラットフォームの誕生によって、エリアや価格にとらわれず、幅広い選択肢の中から自分の気になるクラスをいくつでも受講できることは子供たちにとってゲーム感覚であらゆるスキルを獲得することを可能にするでしょう。また、オンラインによって誰もが均一なクオリティで学べるため、子供の教育のためにより質の高いクラスや、先生を求める母親の苦悩や遠方まで送り迎えをするなどといった労力も低減できそうです。現在Yellow Classの対応言語は公表されていませんが、日本語で類似サービスが誕生すれば、日本でも流行るのではないでしょうか?
※1 シリアルアントレプレナー:新しい事業を何度も立ち上げる起業家のこと。連続起業家ともいう。
※2 K-12:From kindergarten to 12th gradeの意。小学校に入る年齢から12年目(6歳~18歳)までの人口を指す。
※3 ロングテール:販売機会の少ない商品でもアイテム数を幅広く取り揃えること、または対象となる顧客の総数を増やすことで、総体としての売り上げを大きくする手法、または概念。