Vol.0076 注目のコネクテッドフィットネススタートアップSynq.Fit
ホームフィットネススタートアップのSynq.Fit
インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年2月15日付けの報道で、自宅にいながらフィットネスを可能にするスタートアップの「Synq.Fit」を取り上げています。
Synq.Fitは2020年6月にデリーNCRを拠点にPratik Sud氏、Rajat Sahni氏、Sameer Joshi氏によって設立されました。同社の提供する「Synq.Fit Bike」は、家族全員のためのジムとして推進されています。共同創業者の3人はそれぞれ違う分野で活躍していましたが、健康とウェルネスに対するパッションを共有しており、それがSynq.Fitの設立につながりました。Doctor On CallとQuickDocというヘルスケア関連の2つのテクノロジーソリューションを設立した経験を基に、Pratik Sud氏は2人と手を組み、インドのコネクテッドフィットネス(※1)業界に革命をもたらすことを目指しています。現在、同スタートアップは8人のフィットネストレーナーと9人の技術・運営チームを抱えており、毎月メンバーが増えているようです。
『私たちは、フィットネスを通じて生活と幸福度を向上させるという共通の目標を持っているインド全土のフィットネス愛好家のコミュニティを作るために立ち上がった。最新のテクノロジーとデザインを活用して、いつでもどこでも最高の自分になれるようにサポートしたい。』とSud氏は説明しています。
コロナ禍でホームフィットネス機器の需要拡大
先通しが見えないコロナ禍の中、在宅ワークが主流になり、私生活と仕事の境界線が曖昧になっているという現状があります。これは健康問題にも関係しており、健康に対する人々の認識は大きく変化しています。消費者は健康、フィットネス、ウェルネスに関して以前に増してより気にするようになりました。しかし、パンデミックによるソーシャルディスタンスやロックダウンなどの安全対策のために、ジムでフィットネスゴールを追求することが難しくなっています。この現状を打開するために、Synq.Fitは設立されました。主力商品であるSynq.Fit Bikeは2021年1月に発売され、自宅に設置することで、安全で快適なワークアウトを提供しています。
Home Fitness Equipment Global Marketのレポートによると、実際にパンデミックの影響でホームフィットネス機器世界市場は2019年の76億ドルから、2020年には94.9億ドルまで成長したようです。
Synq.Fit のビジネスモデル
「Synq.Fit Bikeは、自宅でいつでも好きな時にオンデマンドでクラスを受けたい人のためのハイエンドなインドアサイクル」で、21.5インチのインタラクティブなフルHDタッチスクリーンディスプレイが搭載されており、BluetoothとWi-Fi接続にも対応しています。Synq.Fit Bikeは、非常にコンパクトでメンテナンスも少なく、インドの家庭向けにデザインされています。各部品は台湾と中国で製造され、組み立てはインドで行われているようです。
Synq.Fit Bikeにはフィットネスルーティンのオンデマンドビデオライブラリが付属しており、育成されたインストラクター主導のフィットネスアクティビティやライブセッションを毎日提供しています。また、毎日無制限のプレミアムライブトレーニングが受けられる有料のサブスクリプションプランも用意されているようです。新規ユーザーは、このプレミアムサブスクリプションを最大6ヶ月間無料で利用できます。この後は年間18,000ルピー(約26,000円)、もしくは毎月1,500ルピー(約2,200円)で利用可能とのことです。
Synq.Fit Bikeの小売価格は120,000ルピー(約175,000円)で、現時点で180以上の予約注文があり、そのうち165人の手元にSynq.Fit Bikeが届いており、アクティブユーザーとなっているようです。また、現在第2部の予約注文を取っており、『最初の500台を85,000ルピー(約124,000円)の割引価格で提供』しています。同社は2021年半ばまでにユーザーを1,000人以上に拡大することを計画しているようです。
インドでは去年の3月にロックダウンが始まり、それまでオフラインでサービスを提供していたインストラクター主導のフィットネスクラブはオンラインでのクラスを提供し始めました。また、ダンスやヨガなどの趣味学習を自宅で行うことのできるYellow Classのようなプラットフォームも誕生し、フィットネス関連のスタートアップが多く取り上げられるようになりました。しかし、ホームフィットネス機器を提供するスタートアップで注目されている会社はあまりなかったように思います。
インドは変化に対して柔軟で、あらゆる業界で次々と注目のスタートアップが誕生しており、日本よりも進んでいると感じることが多々あります。しかしホームフィットネスに関しては日本のほうが古くから関心が強く、今でも規模が大きいように思います。実際にゲームと連動したオンラインフィットネス商品や、自宅でできるフィットネス家電など20年以上も前から人気があり、現在ではVRやARが導入されたゲーム感覚でできるフィットネス商品も多くあります。これは体型や健康に関しての意識が昔から高い日本だからこその傾向だと思います。
コロナ禍の影響ももちろん大きいですが、それ以前からインドでは近年、若い世代を中心に健康や体型に気を遣う人が増えているので、今後インドでのホームフィットネス機器市場がどのように成長していくのか楽しみです。
※1 コネクテッドフィットネス:スマートフォンやウェアラブル機器などを使って運動データをオンラインで管理したり、自宅にいながらフィットネスジムのレッスンにリアルタイムで参加できるサービス
Source:自宅にいながらフィットネスができるSynq.Fit