Vol.0084 インド発アプリを世界に。「Local to Global」を使命とするKShark App
アプリ開発スタートアップ『KShark Apps』
インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年3月11日付けの報道で、デリーを拠点とするアプリ制作会社の『KShark Apps』を取り上げています。
KShark Appsは2016年にKartik Sharma氏によって設立されました。50万ルピー(約75万円)の自己投資でKShark Appsを設立し、現在も毎月投資を続けているようです。設立から約5年経った現在ではGoogle Play StoreとApple App Storeに50以上のアプリを提供しており、2020年度の時点で1,000万ルピー(約1500万円)の利益を記録したようです。同社は個人ユーザーと法人ユーザーの両方をターゲットにしており、『セキュリティ、安定性、スケーラブル(※1)なインフラを重視し、ユーザーにアプリを楽しんでもらえるようにしている』とSharma氏は述べています。
KShark Appsの人気アプリ
2019年にKShark Appsが構築したデータ管理のアプリ『Root Power Explorer』は、400万件のダウンロードを記録し、成功を収めました。また、最近立ち上げた『Carbon Scanner』は149ヶ国で展開されているようです。このCarbon ScannerではクラウドOCR技術(※2)を使用して、スキャンした文書をテキスト形式に変換することが可能です。対応言語も幅広く、ヒンディー語、カンナダ語、テルグ語、マラヤーラム語、マラーティー語、ベンガル語に加えグローバルな言語にも対応しており、現時点で合計57以上の言語に対応しているようです。ユーザーは、ID、パスポート、書籍、その他の重要な文書をスキャンして、Carbon Scannerに安全に保存することができます。また、Google DriveやDropboxのアカウントにドキュメントをアップロードすることもでき、データの保存場所やアクセス方法を完全にコントロールすることができるようです。
KShark Appsの収益モデルと今後の計画
KShark Appsの収益は、広告収入とプレミアム販売の2つのカテゴリーに分類されます。広告収入には、GoogleやFacebook、アフィリエイトネットワークから得られる収入が含まれ、プレミアム売上には、アプリ内課金や有料アプリの販売が含まれます。インドネシア、インド、スリランカ、パキスタン、ネパールなどの発展途上国のユーザーの多くは、先進国のユーザーほどアプリにお金を払わない傾向にあるため、同社はこれらの地域向けに価格を下げることで対応しています。これらの国のユーザーの利用状況は先進国とほぼ同等であるため、米国、英国、ヨーロッパ、カナダなどの国と比較すると、収益性は低くなります。そこで同社は現在、内蔵の広告キャンペーンによってこれらのユーザーを収益化しようとしているようです。
競合にはRang Media、IntellectSoft、NMG、VironITなどの大規模なアプリ開発スタジオがあります。KShark Appsは今後数ヶ月間は、iOSアプリのエコシステムに向けた高品質なアプリの開発・提供に注力することを計画しているようです。
「Made in India」アプリの今後の展望
昨年、インド政府が50以上の中国製アプリを禁止し、独自のアプリチャレンジを開始したことで、インドのアプリエコシステムは今日、非常にユニークな状況にあります。インド国内の開発者には、国内だけでなく世界中のユーザーに向けて「Made in India」アプリを開発するよう呼びかけています。Sharma氏はこの中国製アプリの禁止に関して『インドのアプリのエコシステムに恩恵をもたらしており、その成長に今後重要な役割を果たすだろう』と考えを述べています。
インド政府はアプリ開発スタートアップを支援しており、KShark Appsが目指しているようにインドで開発されたアプリが世界に広がる「Local to Global」戦略の可能性を信じています。最近Googleが突然検索アルゴリズムを変更したことで、アプリを再びランキングに載せるためには、特別なマーケティング活動を行う必要があり、より多くの広告費やPR活動への投資が不可欠になりました。しかし、インド政府が同産業に積極的に投資をしているためアプリ開発スタートアップにとってそこまで大きなダメージはないようです。
インドには優秀なエンジニアが多く、今後世界で人気を勝ち取るインド発のアプリが開発される可能性は大いにあり得ます。特にFinTech、EdTech分野は競争率も高く、日本よりも進んでいるように感じているので、先進国の中でも引けを取らないメガアプリが生まれてもおかしくありません。インドの経済水準が発展していること、スマートフォン利用者が増えてきていることからも、今後のインド国産アプリ開発のさらなる盛り上がりに期待したいと思います。
※1 スケーラブル:利用者や取引量の増大に対し柔軟に適応できる能力・度合のこと
※2 OCR技術:Optical Character Recognitionの略。光学的文字認識。手書きや印刷された文字をスキャナーやカメラで読み取り、コンピュータが読み込むことのできるデジタル文字コードに変換する技術。
Source:アプリ開発スタートアップのKShark Apps