Vol.0147 インドの明日を変える医療技術の進化
Bain & Co⁽*¹⁾とHealthQuad⁽*²⁾による報告書によると、インドのヘルスケア・イノベーション市場は、今後数年間で大きな成長を遂げると予測されています。特に、医薬品サービスとヘルステック分野によって、その成長の80%が牽引される見込みです。2028年度までには市場規模が現在の300億ドルから600億ドルに倍増するとされています。
この市場の成長には、ヘルスケアへの消費者の関心の高まり、ヘルスケアにおけるグローバル・サプライチェーンの再構成、インドの科学技術の深化、および新技術や医薬品の承認プロセスの迅速化や、研究開発支援の拡大などの規制緩和による追い風が寄与すると見られています。インド全体のヘルスケア市場は2023年度に約1800億ドルと評価されており、2028年度までに約10-12%のCAGR:Compound Annual Growth Rate(複合年間成長率)で成長し、3200億ドルに達すると予測されています。
ヘルスケア・イノベーションは、現在300億ドルと評価され、市場全体の15%を占める急成長分野です。市場規模の55%は輸出が占めていると推定されており、CDMO⁽*³⁾、CRO⁽*⁴⁾、製薬業界に特化したITなどの医薬品サービスと、ヘルステックが支配的です。また、ワクチンやバイオテクノロジー、メドテック(Medical Technology)が新たな成長分野だと目されています。
さらに、AIと機械学習の利用がヘルスケアシステムにもたらす利点として、ヘルスケア・バリューチェーンの全分野にわたって5-10%の節約が期待されています。インドの医薬品サービスは、ヘルスケア・イノベーション市場の約50%を占め、その85~90%は輸出による収益で支えられています。
ヘルステック市場も、2020年の30億ドルから2023年度には70億ドルに増加し、ヘルスケア・イノベーション分野全体の約25%を占めるなど、急速に成長しています。この成長は、COVID-19とヘルスケアの効率化ニーズの両方によって成り立っています。
また、グローバル・サプライチェーンの再構築は、インドにおける科学的・技術的専門性の高まりと相まって、さらに発展を続けることが予測されています。
*1 グローバルな経営コンサルティング会社
*2 ヘルスケアセンターに特化したベンチャーキャピタル
*3 CDMO : Contract Development and Manufacturing Organization(医療品開発製造受託機関) は、製薬会社から委託された薬品の開発や製造、時には包装に至るまでの一連のサービスを提供する組織。CDMOは、設備投資や運営コストを節約し、より効率的に製品を市場に投入できるように支援する。
*4 CRO : Contract Research Organization (医療品開発業務受託機関)は、製薬会社やバイオテクノロジー企業が行う臨床試験や他の研究活動を代行する組織。新薬の開発において、安全性や有効性を評価するための臨床試験には高度な専門性が必要なため、多くの企業がCROのサービスを利用する。
Source:インドの製薬とヘルステックの力
インドは以前より、医薬品の製造コストの低さや、大規模な生産能力、製薬産業を支援する多くの政策などからジェネリック医薬品大国として世界的に知られています。
筆者自身も薬局に行くと、とても安価で高品質な医薬品を簡単に購入することができるため、とても助かっています。
インドの医薬品サービスやヘルステックのさらなる進展は、より質の高い医療サービスへのアクセス拡大や、医療費の削減に貢献すると考えられます。また、AIや機械学習の応用は、医療現場での効率化や診断の精度向上に繋がることが予想できます。インドがグローバルな医薬品サービスの供給地として、世界中の医療イノベーションに貢献し、世界中の人々の健康水準向上に役立つことを期待したいです。
(文責:大森太郎)