Vol.0149 革新か遅れか?トヨタの1:6:90ルールで考えるEVとハイブリッドの未来
トヨタが電気自動車(EV)への完全な移行をためらっていることは広く知られています。最近漏洩した内部文書によると「1:6:90ルール」と呼ばれる戦略が明らかになりました。このルールによると、1台の電気自動車を製造するために必要な原材料で、6台のプラグインハイブリッド車または90台のハイブリッド車を生産できるとされています。トヨタは、これら90台のハイブリッド車がその生涯を通じて達成できる全体の炭素削減は、1台の電気自動車による削減の37倍にもなると主張しています。
電気自動車は高容量バッテリーに蓄えられた電力のみで走行し、排気ガスの排出がゼロという環境面でのメリットがありますが、走行範囲の限定や充電時間の長さなどの課題も抱えています。
一方、プラグインハイブリッド車は、従来の内燃機関とバッテリー及び電動モーターの組み合わせを使用することで、電力のみで短距離を走行後、ガソリンで長距離を走行できる柔軟性を持ちあわせます。そしてハイブリッド車は、充電ステーション等で直接バッテリーを充電をすることなく、内燃機関と電気モーターを組み合わせることで、自発的にバッテリーを充電することを可能にしています。
トヨタはこの戦略によって、ハイブリッド車の生産コストが低く効率が高いことから、排出削減により大きな影響を与えることができると考えています。
しかし、トヨタが電気自動車を全面的に受け入れることをためらっていることが、業界のイノベーションと進歩を妨げる可能性があると批判する声もあります。電気自動車は、走行範囲、手頃な価格、充電インフラの面で急速に改善しており、気候変動に効果的に対抗するためには、電気自動車を含む多様なアプローチが必要だと多くの人々が考えています。
Source:トヨタが提案する持続可能な車両戦略
インドで車は、移動手段としてだけでなく、社会的な成功のシンボルとしての価値が強くあります。また個人的な感覚では、インド人と話す中で男女問わず、車好きな人が多いように感じられます。
中間層が急速に拡大し、車を憧れのものとしてではなく、実際に購入できる余裕のある人々が増えているインドにおいて、環境への影響を最小限に抑えた車を製造していくことはとても重要です。トヨタがハイブリッド車に比重を置くことの是非は、現状では判断できませんが、電気自動車のインフラが整ってくると、よりクリーンで効率的な交通手段として電気自動車への移行が加速される可能性も考えられます。
(文責:大森太郎)