Vol.0150 インド発、世界へ―スペシャリティコーヒーで繋ぐ新たな旅
Roastery Coffee Houseはインド発のスペシャリティコーヒーチェーンで、インド国内に7つの店舗を持ち、2023年12月にはフィンランドのヘルシンキで新店舗を開設しました。これはインドのコーヒーチェーンとしては初のヨーロッパ進出です。同社はフィンランドでの開店は、インドのスペシャリティコーヒーを世界に広めるための一歩として位置づけています。
創業者のNishant Sinha氏は、フィンランドを選んだ理由として、国際コーヒー機構によるとフィンランド人が世界で最も多くコーヒーを消費する国であること、そしてフィンランドで非常に人気があるインドのモンスーン・マラバールコーヒー⁽*1⁾の起源がインドであることを多くのフィンランド人が知らないことを挙げています。
インド国内でのRoastery Coffee Houseは、インドのカフェチェーンが一般的な西洋風のデザインを取り入れているのに対して、インド建築とデザインを強く取り入れています。例えば、ハイデラバードでは緑を多用し、ジャイプール店は敷地内に伝統的な井戸を設置するなど、店舗ごとに地域性を反映させています。
Roastery Coffee Houseの成功は、独自性と顧客満足度の高さにあり、看板商品であるビーガンクランベリーコーヒーは各店舗の一日平均で1,500カップを売り上げています。インドのコーヒー市場は成長を続けており、Custom Market Insightsによると2022年の4億7800万ドルの評価から、12億2470万ドルに達すると予想されています。
Sinha氏は他のコーヒーブランドとの競争ではなく、インドのコーヒーを世界に広めるという共通の目標に焦点を当てています。インドには成功しなかったコーヒービジネスがたくさんあることからも、彼は長期的に持続可能なビジネスモデルを目指し、インド国内外で慎重に拡大を進めていく計画です。
またフィンランドでの店舗開設は、他のヨーロッパの国々への拡大の足がかりとなることを期待しています。
*1 モンスーン・マラバールコーヒーは、18世紀から19世紀にかけて、インドからヨーロッパに木製帆船でコーヒー豆を輸送していた際に、コーヒー豆が高湿度と海水の影響を受けて、その外見と風味が変化したことでうまれた。この歴史的偶然より着想を得てモンスーン・マラバールコーヒーの加工法が生まれた。選別された生豆をモンスーン風が吹き抜ける倉庫に数カ月間保管することで、サイズの膨張し、色が淡くなり、豆内部の糖分が変化して風味が変化する。
Source:ヨーロッパを目指すインドコーヒーの新星
Roastery Coffee Houseがフィンランドに店舗を開設することは、とても挑戦的なことだと感じます。
インドは一大コーヒー豆の産地で、筆者が暮らすカルナータカ州はコーヒープランテーションの中心地域として知られています。
日本にも2021年に、インドのスペシャリティコーヒーを扱うBlue Tokai Coffeeが進出していますが、あまり知られているとは言い切れません。
Sinha氏が言うように、インドのコーヒーブランドが各々の強みを生かして、インドコーヒーが世界的に広がりを見せていくのか注目したいです。
(文責:大森太郎)