India Weekly Topics

週刊インドトピックス

vol.0180 インド社会に羽ばたくケアリーバーをサポートするCLiC

インドの社会起業家ギリシュ・メータ氏が設立した非営利スタートアップCare Leavers Inner Circle Forum (CLiC)は、18歳で児童養護施設を離れた子どもたち(ケアリーバー)を支援する活動を行っています。
メータ氏自身が同じ境遇を経験し、その経験からこのプロジェクトを立ち上げました。メータ氏は8歳で父を失い、母の手を離れて親戚のもとで働かされるなど困難な少年時代を送り、12歳で児童養護施設に入所しました。18歳で施設を出る際に未来への不安を強く感じたことが、このプロジェクトを始める原動力となりました。

彼は児童養護施設を退所後、NGOが運営する子ども支援ヘルプラインでの仕事を見つけることができ、そこで同じように退所後の生活に苦しむ仲間たちと出会いました。彼は、まずはWhatsAppグループを通じて支援ネットワークを作り、その後Josh Community(社会課題解決に向けた団体)の助けを借りてCLiCを正式に立ち上げました。CLiCは、退所後の子どもたちに対する住居や就職、法的支援、メンタルヘルスカウンセリングなど、多岐にわたるサポートを提供し、支援対象者は30歳までサポートを受けられます。また、UNICEFの協力を得て、ラジャスタン州の施設を訪問し、ケアリーバーのデータベースを構築しました。CLiCの活動には、特に女性が直面する課題に対する支援も含まれています。例えば、結婚や家庭生活のプレッシャーに対するサポートも提供しています。

 

CLiCは、現在8つの州で1,500人のケアリーバーを支援しており、起業インキュベーターや企業パートナーと連携して活動を拡大しています。政府との連携も進めており、全国規模でのサポートを目指しています。メータ氏は、ケアリーバーの社会統合の課題は大きいが、CLiCのモデルは拡張可能であるとして、より多くの政府や政策の支援を求めています。

 

Source:18歳を超えるケアリーバーのための新しい支援モデル

 

インドは他国と比較しても、法制度の未整備や資金の不十分さからケアリーバーに対するアフターケアが不十分だとされています。また、人口の大多数を占めるヒンドゥー教の価値観では、家族や血縁関係が重視されるためケアリーバーに対するスティグマの一因となっています。
このようなインド特有の問題に対して、児童養護施設出身者で設立されたCLiCの取り組みは、とても価値のあるものだと思います。また、彼らのようなNGOなどの活動だけでなく、政府の大規模かつ現実的な支援が待たれます。

(文責:大森太郎)