【2024年最新】インド法人設立の方法について徹底解説【海外法人】
インド法人設立の方法について徹底解説
今回はですね、インド現地法人の設立方法について徹底解説”というテーマで話していきます。
インドビジネスに関心を持っている皆さん、インド進出の方法としてまずは最初に何が思い浮かびますか?そうですね、現地法人の設立を最初に思い浮かべる人が多いと思います。
ただ、現地法人を設立するメリットやデメリット、また、正しい設立手続きを理解していないと、なかなかスムーズに進められなかったり、予期せぬコストが発生してしまう可能性もあります。
今回の動画を見ていただくことで、インドへの進出形態のひとつである現地法人の設立方法を正しく理解できます。私は2014年に創業以降、200社以上の日本企業のインド進出を支援してきました。その経験も踏まえて解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
このチャンネルでは、インドをはじめとした海外進出を目指す企業様の後押しになるようなノウハウを発信しています。ぜひチャンネル登録をお願いします。インドへの進出を検討している企業にとって重要なポイントとして、まずはインドの魅力と注意点について簡単に触れておきたいと思います。
魅力① : ずっと続く成長市場
ご存知の方も多いと思うんですけど、インド市場は急速に成長してて、2030年までにGDPランキングで日本を抜いて世界第3位に、2050年までにアメリカを抜いて世界第2位になると言われています。日本企業にとってインド市場が魅力的な投資先なり得るのはもはや当然だと思います。ただ、インドという国全体をひとつの市場として見てしまうこと人が多いので、そこは注意が必要かなーと思っています。インドは1つの州だけで1国と同じぐらいの市場規模がある。例えば、私が住んでいるベンガルールがあるカルナタカ州だけでも7,000万人近い人口がいるし、地域差や所得格差も非常に大きい国なんですね。なので、まずはどの州の、どういった層をターゲットにするのか事前にじっくりと時間をかけて、市場を理解する必要があります。
魅力② : とにかく若者が多い
こちらもすでにメディアで報道されている通り、インドの人口は世界ナンバーワンになりました。
2050年までつづくと言われている人口ボーナス期の真っ只中にいるので、若い世代がむちゃくちゃ多くて、しかも個人消費がどんどん活発になってます。新卒でも中途採用であっても、企業が採用活動をするととにかくたくさんの候補者が応募をしてくる状況なわけですね。逆にいうと、自社が期待している人物像をちゃんと明確にした上で、有象無象いるピンキリの候補者の中から優秀なインド人をしっかりと見極める力が試されている、っていう風にも言えるので、採用プロセスや判断基準をしっかりと設計しておくことが重要になります。
魅力③ : コミュ力抜群の人材
私個人的にここがいちばんの魅力だと思っているんですけど、「コミュ力抜群の人がいっぱいいる」これは、インドは多様性を重んじる世界ナンバーワンの民主主義国家なわけですけど、高度IT人材だけでなく、多くのグローバル企業のトップがインド人であることからも分かるように、とにかく優秀なマネジメント人材を多く輩出しているっていうのがインドの特徴です。物怖じせずに行動ができるところとか、世界中の人と分け隔てなく英語で関係を構築できるコミュニケーション能力は、世界トップクラスといってもいいんじゃないかと思っています。一方で多様な国だからこそ、いろいろな宗教・言語、そして所得格差・教育格差に加えて、地域によってことなる文化的価値観の違いもちゃんと理解をしておく必要があると感じています。
それでは、インド現地法人を設立するメリット・デメリット、そして法人設立の手続きにおける注意点や費用について解説していきます。
インド現地法人を設立するメリット
メリット①:柔軟な取引スキームの構築
現地法人という形態は、活動の範囲や資金調達方法という点でも、一部の外資規制を除いてほとんど制限がないので、自社が想定しているビジネスモデルに応じて、柔軟に取引スキームを構築することができます。また、私の肌感覚ではインドに進出している日本企業の90%以上が現地法人という形態で進出をしているので、多くの他社事例を参考に、取引スキームを構築しやすい、現地法人を管理しやすいという副次的なメリットもあります。
メリット②:事業のスケーラビリティ
現地法人であれば、活動の範囲や資金調達方法という点でほとんど制限がないと言いましたが、これによって事業のスケーラビリティ、長期的な事業の拡張性も確保することができます。当初は販売拠点からスタートをして、事業が拡大していく中で製造拠点に格上げをすることもできますし、必要に応じて本社から増資をしたり、第三者割当増資を実施して、事業パートナーを迎え入れることもできます。他の進出形態と比較して法人税率が低いので、投資効率が良い点も大きなメリットになります。
メリット③:市場へのアクセス
現地法人という形態は、インド市場に対して物やサービスを販売する直接的なゲートウェイになります。出張や駐在員事務所では直接的な営業活動が制限されますし、出張で数週間・数ヶ月しかインドに滞在しない日本人をインド人はそう簡単に信用しません。また、現地法人というしっかりとした法的主体を設立することで、インド人に対しても、インド市場に対してもある種の中長期的なコミットメントを示すことができ、信用力の向上にも繋がります。
インド現地法人を設立するデメリット
デメリット①:設立・事業立ち上げに時間がかかること
この後にくわしくお話をしますが、現地法人の設立手続きには2〜3ヶ月、実際に資本金の送金をして事業を開始できる状態になるまでに4〜5ヶ月かかるのが一般的です。そもそも、現地法人の設立が本社で承認されるまでにも多くの準備・時間が必要となるため、インド現地法人の設立においては少なくとも半年から1年ぐらい前から検討を始める必要があります。
デメリット②:管理・運用コストが大きいこと
現地法人の管理・運用は広範囲に及びます。基本的な税法や会社法だけでなく、州ごとに異なる労働法や、クロスボーダーの取引に適用される外国為替管理法など、適用法令は多岐に渡ります。特に製造業や大規模プロジェクトの場合、雇用する従業員も、取引先も多くなり、それに応じて事業リスクも大きくなります。
デメリット③:コンプライアンスの違反リスク
現地法人の設立後は、毎月のTDSと言われる源泉所得税、GSTと言われる消費税の納税や申告、親会社やグループ会社のような関連者との取引が発生した場合の移転価格税制への対応、取締役や株主としての会社法コンプライアンス、雇用した従業員に対する労務コンプライアンス、自社のビジネスモデルによっては必要となる許認可やライセンスの取得・更新など、幅広い対応が求められます。万が一ひとつでも対応が漏れていると法令違反となりビジネスに重大な影響がおよぶ可能性がありますので、専門家からのアドバイスを得ることはとても重要です。
ちなみに、こういったデメリットを解消して、もっとスピーディに、なるべくリスク・コストを抑えてインドに進出ができる新しい進出方法を採用する企業も増えてきてます。これは、EORという新しいスキームを活用した進出方法なんですが、このEORについては別の動画で解説をしたいと思いますので、ご興味のある方は概要欄からEORについて確認してみてください。
インド現地法人を設立する際の注意点
外国直接投資規制の確認
インドの外国直接投資規制、いわゆるFDIに対する規制ですね、これを確認して、皆さんが考えているビジネスが投資規制の対象となっていないかを事前に確認してください。
一般的な業種は自動認可で100%まで出資できるんですが、小売業や一部の不動産事業、銀行業、保険業、印刷出版業などの産業は投資が規制されているため注意が必要です。
進出形態の選択
インドでの進出形態を選択する際には、駐在員事務所(Liaison Office)、支店(Branch Office)、現地法人、LLP、プロジェクトオフィスなどの選択肢があります。それぞれの形態には設立手続きや活動範囲、コンプライアンスの負荷等が異なるため事前に比較・検討をする必要があります。
現地法人設立の要件
現地法人の設立には、取締役が最低2人必要で、そのうち最低1名はインドの居住要件を満たす居住取締役が必要です。また、株主は最低2者必要です。
設立手続きを進めるためには、授権資本と払込資本をいくらにするか、会社名をどうするか、希望する会社名と同じような会社がすでにインドに存在していないか、登記住所をどこにするかなどを決めておく必要があります。
ちなみに、現地法人設立以降の取締役会の運営を考えると、取締役の人数を3名以上にしておいた方が取締役会を柔軟に開催しやすいとか、株主についても可能な限り法人株主にしおいた方が年次株主総会を柔軟に開催しやすいといったメリットがあるのでぜひ事前に検討されることをおすすめします。
インド現地法人の設立手順と費用
1. 取締役登録の準備(DSCの取得)
インド現地法人の設立には、取締役候補のうち最低1名のDSC(電子署名証書ですね)が必要となるので、まずはDSCを取得するところから始めます。
2. 商号名の事前承認申請
インド現地法人の商号名については、登記局ROCに対して事前に承認申請をします。一般的には候補名をいくつか用意しておいて、登記局にまず最初に2つ提出して審査結果を待ちます。既に同じような会社名が登記されていたり、すでに商標登録がされている場合には却下されるので、却下された理由にもとづいて他の候補名でもう一回トライできるっていう流れです。ちなみにですね、この申請のために「SPICe+」っていうむちゃくちゃインドっぽい名前のフォームがあって、このPart Aの部分を使用して申請を行います。
3. 現地法人の設立登記申請
商号名が晴れて事前に承認されると、その商号名は20日間有効となります。どうしても書類の準備とかでもっと時間が必要な場合は有効期間の延長は可能なんですけど、この有効期間中にさっきのSPICe+フォームの今後はPart Bの部分を使って現地法人の設立登記を申請します。登記の際には登記住所を設置する州ごとに決められた印紙税や登記費用を支払って登記をする必要があります。登記費用は授権資本によって州ごとに計算式が決まっているんですけど、例えば、授権資本1億ルピーの会社をデリーに設立する場合、約100万ルピー程度の登記費用がかかるので、この場合はざっくり授権資本の1%程度が登記費用ってことになりますが、これは授権資本の金額や州によって1%未満から3%程度まで大きく異なるので個別に確認する必要があります。
このSPICe+のフォームってもともといっこいっこの法人設立手続きがバラバラになってたものをひとつに統合したもので、今はインド中央政府が管理する形で全体の手続きが電子化されて便利になったと言えばそうなんですけど、今は当局の担当官の顔も見えないので、逆にいうと前だったら困った時に実際に担当官に会いに行って、そこをなんとかーってお願いしたりして会社名を承認してもらったりもできたんですけどそういう柔軟な対応ができなくなってしまったというのはひとつ大きな変化でした。
現地法人が設立されると、COIという設立証明書と、PANという税務番号、とTANという源泉徴収番号、そしてDINというそれぞれの取締役に発行される取締役識別番号が発行されることになります。インドでは謎の3文字単語がいっぱい出てくるのでぜひこちら参考にしてみてください。ちなみに、取締役に発行されるDINは設立時に最大3名までっていう風に決まっているので、法人をつくるときに取締役を4人以上にしたいときは、4人目以降の取締役は法人を設立した後にDIR-3というフォームで別途DINを取得してから、取締役を追加する必要があります。
4. 第一回取締役会の開催
さて、ここからは法人設立後のステップになりますが、
つぎの手続きは法人設立までに登記住所が決められなかった会社のみが対象です。
法人設立の時に具体的な住所を決定できない企業は、州だけ先に決めればいったん法人設立登記を完了させることはできるんですけど、この場合、法人設立後30日以内に会社の登記住所をForm INC-22というフォームを使って追加登記をして、法人設立に必要な登記情報がすべて出揃う形になります。なので、登記住所もふくめて法人設立が完了しているときに設立後最初にやるのが第一回取締役会の開催です。
会社法で、現地法人の設立登記完了後30日以内に、第一回取締役会を開催することが義務付けられています。この取締役会では、現地法人の概要全般に関する追認だったり、銀行口座の開設、承認権限者の選任、初年度の会計監査人の選定などを決議することになります。
5. 銀行口座の開設手続き
次に、第一回取締役会の開催してすぐに銀行口座の開設手続きを進めます。
銀行口座の開設は、資本金送金の受け皿となる口座として重要なんですが、可能なかぎり日系の銀行で口座開設をすることをおすすめしています。というのもですね、資本金を受け取ったらインド国内の受取側銀行にFIRC(Foreign Inward Remittance Certificate)及びKYC(Know Your Customer)という書類を発行してもらわないといけないんですけど、インド地場の銀行だと結構苦労するケースが多いんですね。前に実際あったんですけど、出資金の送金が例えばムンバイの別の中継銀行を経由してベンガルールに着金する、みたいなことが起こるんですね。そうすると、一番最初に出資金を受け取ったムンバイの中継銀行がFIRCを発行すべきなのか、それとも最後に受け取ったベンガルールの銀行がFIRCを発行すべきなのかで見解が分かれたりするんですね。そのまま、お互いがお前が発行すべきだ、いやいやそっちで発行しろとかで平行線になったまま半年経っても必要な書類が手元に届かない、ということが起こったので。日系の銀行さんであれば既にインド国内の主要拠点に支店を開設しているので、こういった書類の発行や、日本側でも事前に口座開設準備の対応をしてくれるのでとても安心感があります。
6. 資本金の送金
口座を開設したら、次に資本金の送金です。
本社からインドルピー建てで資本金の送金手続きをします。そのときに、もし円建てで送金手続きをしてしまうと、ルピー建の払込資本金額と、円建てからルピー建に換算された後の実際に着金する金額との間に差額が発生してしまうので、必ず資本金と同額のルピー建てで送金処理をする必要があります。差額が発生しますと、過剰分は日本に返金をしなければならないですし、不足分は日本からまた送金をしてもらわなければなりませんので、必ず資本金と同額のルピー建てで送金処理をする必要があるわけですね。資本金が着金したら、さっき説明をしたFIRCとKYCという書類を銀行に発行してもらいます。
7. 第二回取締役会+株式割当
資本金が着金したら第2回取締役を開催して、株式の割当を決議します。
会社法上、会社設立登記後60日以内に株式の割当を完了させる必要があります。株式割当の登記をするときに、取締役会決議の抜粋が必要となるので、資本金が着金した後に、第2回の取締役会を開催する流れです。
8. インド準備銀行RBIへの報告
つぎにインド準備銀行に報告します。株式の割当が完了してから30日以内に、インド準備銀行RBIのウェブサイト上でユーザー登録を行って、FC-GPRというフォームで資本金の着金と株式割当の報告する必要があります。
9. インド登記局ROCへの事業開始の届出
さいごに、事業開始の届出を登記します。法人設立が完了してから180日以内に、INC-20Aというフォームをつかって事業開始の届出を会社登記局へ提出する必要があります。提出するときに銀行取引明細で資本金の着金が確認できる必要があるので、法人設立後はスムーズに銀行口座の開設を進めて、資本金が着金次第、銀行取引明細を共有してもらうよう準備をしておくのが良いと思います。ということで今回はインド現地法人を設立するメリット・デメリット、そして設立方法について解説しました。