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【たった1動画でわかる】インド株券の電子化手続きを徹底解説!

インド株券の電子化手続きを徹底解説!

今回はインド株券等の電子化手続きについて徹底解説していきたいと思います。

すでにインドに進出している日本企業はご存知だと思いますが、2023年10月27日付のインド企業省の通達によって、インド国内の非公開会社が株式などの有価証券を電子化することが実質義務付けられました。これからインドに進出を検討している企業にとっても重要な手続きなんですけど、これほんまにやらなあかんの?て疑問に思っている企業や、全体像が掴めない中ですでに対応に苦労されている企業も多いと思うんですよね。

今回の動画を見ていただくことで、インドにおける株券等の電子化の義務化についての真実と、具体的な手順や必要書類、注意点、そして、手続きをスムーズに進めるためのポイントが理解できるようになります。

インド企業省の通達の概要

まずはこの株券の電子化を、そもそも日本企業は本当に対応すべきなのかどうか、対応しなかった場合にどのような弊害や罰則があるのかについて整理しておきたいと思います。

2023年10月27日付のインド企業省の通達によると、一部の企業を除くすべての非公開会社に株式等の有価証券を電子化することを推進しているという状況です。この例外的な企業とは、資本金が4,000万ルピー以下で、かつ、売上4億ルピー以下の小会社のことを指すんですけど、まず、大前提として親会社(Holding Company)や子会社(Subsidiary Company)は小会社の定義から除外されているので、インド子会社としてインドに進出している日本企業は「小会社」とはならず、自動的に株券の電子化の対象企業になっています。

ただ、通達の文面においては株券等の電子化を「推進する(英語ではFacilitateと書かれているんですけど)」つまり推進しているだけなので、義務化が明記されているわけではない、ってところが混乱を招く原因になっています。

なお、今回の改正によって、非公開会社はForm PAS-6という登記フォームに基づいて株式資本に関する登記を半年に1回実施する必要があるのですが、このForm PAS-6には、ISINという証券識別コードの記入が必須になっているのと、株式等の有価証券の情報の詳細を記載する必要があってですね、もし電子化されていない株式等の有価証券がある場合はその詳細の記載と電子化されていない理由を明記する必要があって、関係筋の情報によると、今後さらに他の登記業務にも影響がおよぶ可能性もあるのではないか、という声もあります。

この株券の電子化手続きには、こんな感じでインド現地法人側と株主側それぞれに手続きがあるんですけど、このForm PAS-6という登記作業についてはインド現地法人側で対応すべき項目になるので、最低限インド現地法人側のこの部分の手続きだけでも保守的に対応をしておいた方が良いのではないか、と考えています。

対応期限は、2023年3月末の会計年度末日から18ヶ月以内、つまりほとんど既存企業については2024年9月末が期限ということになりますね。日本企業はほぼ非公開会社(いわゆるPrivate Limited Company)という形態で、インドに子会社を設立しているので、インドに進出している日本企業のほとんどは基本的に2024年9月末までに対応することが推奨されている、という状況ですが、この後ご説明をする罰則が適用となる可能性も見据えて、このインド現地法人側の手続きだけは先に対応しておくことをおすすめしています。

株券等の電子化手続きをしないことによる弊害や罰則

次に、株券等の電子化手続きをしないことによる弊害や罰則についてご説明します。
まず、株券等の電子化手続きを実施しないことによる弊害は、2024年10月以降に新株の引き受けや株式の譲渡ができなくなるということです。例えば、近い将来資本金を引き上げる増資をしたり、第三者に株式を譲渡したりする可能性がある場合には、早急に電子化手続きを実施しておいた方が良いということになります。

次に、株券等の電子化手続きを実施しないことによる罰則についてはインド現地法人側の手続きと株主側の手続きに分けて考えておくと良いと思います。つまり、この表の株主側のDemat Accountの開設や株券等の電子化手続きが実施できなかったことに対する直接的な罰則は規定されていないものの、インド現地法人側の手続きに含まれるForm PAS-6が正しく登記できないという事態になった場合には、インド会社法第450条に規定されるこのような罰金が課されるリスクがあるので、なるべくこの部分の手続きだけは早めにやっておきましょう、ということになります。

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株券等の電子化手続きについて

ここからは株券等の電子化の具体的な手続きについて解説していきたいと思いますが、その前に、この手続きにはいろいろな専門用語が出てきますので、まずは専門用語について簡単に整理しておきたいと思います。

1つ目は株式等の管理サービスを行うSEBI(インド証券取引委員会)の登録業者であるRTAですね。これは、Registrar and Transfer Agentという言葉の頭文字をとった言葉になっていますけど、このインド証券取引委員会のホームページ上にこんな感じでRTAの事業者リストが検索できるようになっています。

2つ目はこのRTAが連携するインドの証券保管所であるNSDLとCDSLがあります。NSDLはNational Securities Depository Limitedの頭文字、CDSLはCentral Depository Services Limitedの頭文字で、インド国内にはこの2つの証券保管所しかありません。
そして3つ目は、Demat Accountいわゆる証券口座を取り扱う銀行や証券会社等の機関であるDPですね。これはDepositary Participantという言葉の頭文字をとった言葉になっていて、これもインド証券取引委員会のホームページ上でこんな感じでDPの事業者リストが検索できるようになっています。先ほど1つ目に紹介をしたRTAがこのDPのライセンスを持っている場合もあるので念のためご留意ください。

インド現地法人側で取得すべき証券識別コードであるISIN(International Securities Identification Number)と、株主側が取得すべきインド税務番号であるPAN、そして、同じく株主側が取得すべき株券の電子的に保有するために必要となるDemat Accountがあります。

インド現地法人側の手続き

まず、インド現地法人側の手続きとしては取締役会で以下のような決議を執り行う必要があります。付属定款の変更を行う場合には、株主総会決議も必要となるので注意が必要です。

  • 付属定款の変更(必要な場合のみ)
  • RTAの選任
  • NSDLもしくはCDSLへの登録
  • ISINの取得

次に、選任をしたRTAを通じてNSDLかCDSL、もしくはNSDLとCDSLの両方への登録を行います。

ISINの取得のためにこういった書類一式をNSDLおよびCDSLに提出をすると2〜3週間程度でISINの番号が発行される形になります。

株主側の手続き

一方で、株主側の手続きについては、まだPANを取得していない企業はPANの取得からスタートをします。
次に各株主ごとにDemat Accountの開設をする必要がありますので、こういった書類(ここが一番大変なんですけど、株主側の取締役会決議書や決算書類含めてかなり多くの書類を準備してかつ公証やアポスティーユ認証を受けた上で)書類一式をDPに提出をしてDemat Accountの口座開設を依頼します。Demat Accountが開設され次第、紙ベースの株券に加えてDemat Reqeust FormをDPに送付して電子化の依頼をする形です。

登場人物も合わせて全体像を図解するとこんな感じになると思います。

主な登場人物はこの6人で、インド現地法人側でISINを取得するために連携が必要となるのがRTA、そして、NSDLおよびCDSL。株主側でDemat Accountの口座開設のために連携が必要となるのが税務当局とDP、ということになります。一見、株主側とインド現地法人側の手続きがそれぞれ分かれているように見えますが、DPとRTAとの連携であったり、ISIN番号とDemat Accountでの株券の電子化手続きにおいてリンクしていることが確認できると思います。

インド現地法人側の手続きには書類の準備期間等も含めると全部で約2〜3ヶ月程度、株主側のDemat Accountの開設には書類の準備期間等も含めると3〜4ヶ月程度の時間がかかる可能性があるので、各社の状況に応じてどのように手続きを進めていくかご検討いただくのが良いと思います。

今回は、株券等の電子化手続きについて詳しく解説してみました。手続きの全体像を理解し、ひとつひとつの手続きに必要な書類を前もって準備していくことで、スムーズに電子化の手続きを進めることができます。ぜひ参考にしていただけると嬉しく思います。

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