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【知らなきゃ損】インドから日本への海外送金実務を徹底解説!

インドから日本への海外送金実務を徹底解説!

今回はインドから日本への海外送金実務を完全解説というテーマで話していきます。

インド企業に請求したけどなぜか20%も引かれて振り込まれてきたとか、インド側からいろんな書類を出せと言われてなんのこっちゃ、と困っている企業担当者も多いと思います。最近は、個人が日本に海外送金をするときにもなぜか税金が取られるっていう法律もできて、これマジっすか?ってお問い合わせをいただくことも増えています。

今回の動画を見ていただくことで、インドから日本への法人および個人それぞれの海外送金実務に関して押さえておくべきポイントや仕組みの全体像、そして基本的な手続きや必要書類について詳しく知ることができます。

日本企業がインドでのビジネスを行う中で、さまざまな局面でインドから日本へ海外送金を実施しますが、主にこの5つに区分することができます。

ただ、海外送金の種類によって手続きも課税関係も違うのでひとつひとつその仕組みを理解しておくことが重要です。まず最初に、法人がインドから日本へ海外送金を実施する典型的なこの5つのケースについてご紹介をしたあと、法人および個人それぞれのケースにおける一般的な海外送金実務について解説をしていきたいと思います。それではいってみましょう。

インドから日本への送金

まず、法人がインドから日本への海外送金をする5つのケースについて見ていきましょう。

1、実費精算の場合(創業費を含む)

法人がインドから日本への海外送金をするケース、1つ目は、実費精算の場合です。

これは日本法人がインド法人の代わりに立て替えた費用の実費精算としてインドから日本に海外送金をするケースです。インド現地法人が設立されるまでに発生した設立関連費用などの創業費(Preliminary Expense)の精算もここに含まれます。実費精算の場合には、日本法人にDEBIT NOTEという請求書を発行してもらうことになります。請求書上にはReimbursement of XXXXという形で実費費用の精算であることがわかるように明記をして、その費用の根拠証憑である領収書や請求書・契約書、そして、金融機関ごとに必要となる海外送金依頼書類などとともに海外送金手続きを実施する形です。

2、無形資産取引の場合(ロイヤリティや役務提供、利息等を含む)

法人がインドから日本への海外送金をするケース、2つ目は、無形資産取引の場合です。

無形資産取引っていうとちょっと小難しいですけど、要は何らかのサービス提供の対価だったり、知的財産権の使用料・ロイヤリティだったり、利息だったりを日本に送金する場合がこれに該当します。こういった取引においてインドから日本に海外送金を実施する場合には、こういった書類が必要になるので、ひとつひとつ準備をする必要があるんですけど、

送金をする時に源泉徴収が必要となるので、インド側の所得税法と、日本とインドとの二国間で締結されている日印租税条約に対する理解が必須です。こちらは後ほど詳しく解説したいと思います。

3、物品輸入の場合

法人がインドから日本への海外送金をするケース、3つ目は、物品を輸入した場合です。

多くの日本企業がインド国内で物を販売したり製造したりしていますが、そのために必要な原材料や部品、商品などを日本から輸入する際の代金の支払いとして発生する海外送金がこれにあたります。こういった物を輸入する取引に関してインドから日本に海外送金を実施する場合には、こういった書類が必要になるので、こちらもひとつひとつ準備をする必要があります。ひとつ注意点としては、インド準備銀行RBIの規定で法的な支払期限があったり、通関申告をした後に請求書の修正をしなければならなくなった場合であっても、税関申告書に記載されている金額を超えて海外送金を実行することはできないので、税関申告の段階までに請求価格つまり輸入価格を確定しておく必要があるので注意が必要です。

4、配当の場合

法人がインドから日本への海外送金をするケース、4つ目は、配当の場合です。

インド現地法人に利益が出て、例えば株主である日本法人に対して配当金を支給する場合です。以前、インドには配当分配税という不可解な税金があってですね、法人税を払ったあとの税引後利益からさらに配当分配税をインド法人側が負担しなければならないという、世にも奇妙な税金があったんですけど、完全に二重課税ですよね、これは2020年4月から廃止されました。なので、現在はインドから日本に配当を海外送金する場合には、先ほどご説明をしたサービス提供の対価と同じように、インド側では源泉徴収義務はありますが、原則、配当所得として株主側のみで課税される形になります。

5、会社清算の場合

法人がインドから日本への海外送金をするケース、5つ目は会社清算の場合です。
インドに進出をしたものの、残念ながらインド事業から撤退をすることとなった場合には、インド現地法人に残っている資産を現金化して、債権債務を清算した上で最終的に残った現金を日本に返還することができます。この場合、通常の海外送金のときに必要な書類に加えて、清算人による最終報告書や証明書、取締役会の清算決議書の抜粋、新聞での一般公告コピーなどの書類も追加で必要となります。

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海外送金において理解しておくべき税務論点

海外送金手続きの際に一般的に必要となる書類については先ほどご紹介しましたが、ここからは、インド法人から日本法人に海外送金をする際にもっとも一般的な取引である人的役務等のサービス提供の場合を想定して、理解をしておくべき税務論点について解説いたします。主な論点は、(1)適用される源泉所得税率、(2)インドでの税務申告義務、(3)事前準備書類の3つです。

(1)適用される源泉所得税率

まず1つ目は適用される源泉所得税率についてです。

インド法人から日本法人への海外送金の場合に適用される源泉所得税の税率には、①インド所得税法に規定される適用税率20%か、②日印租税条約に規定される軽減税率10%のいずれかが適用されることになります。

インド所得税法に規定される適用税率20%については、2023年のインド予算案で税率が10%から20%に引き上げられたんですが、もしこの20%を適用する場合には日本法人はインドの税務番号PANを取得する必要はなく、インドでの税務申告義務も免除されますが、インド側で控除された20%の税金を日本側で外国税額控除に適用することはできません。

一方で、日印租税条約の軽減税率10%を適用したい場合には、日本法人の所轄税務署が発行する居住者証明書(Tax Residency Certificate)とForm 10Fの提出が必要で、さらに、日本法人のPANを取得した上でインドでの税務申告も必要となります。この場合、インド側で源泉徴収された10%の源泉所得税については、日本側で外国税額控除の適用が可能となるので、二重課税を回避することができます。

(2)税務申告義務

2つ目はインドでの税務申告義務についてです。

これは(1)関連者間取引かどうか、(2)取引の金額と継続性、という2つの判断基準に基づいてインドでの税務申告義務が発生するかどうかを判定することになります。

「関連者間取引かどうか」については、例えば、インド子会社から日本の親会社に海外送金をするようなケースですね。この場合は、親子会社間取引つまり関連者間取引がベースになっていてインドでの移転価格税制の対象になるので、日本の親会社も自動的にインドで税務申告をする必要があります。

次に、「取引の金額と継続性」という観点です。例えば、もし仮に取引価格が1億円でかつ顧客企業との取引が継続的に取引が発生する場合、先ほどご説明をした源泉所得税の適用税率が10%か20%かによって、インド側で控除される税金の金額も大きくて、つまり日本側で受け取れる金額が9,000万円か8,000万円かになるのでむちゃくちゃインパクトが大きいですよね。

この場合は日印租税条約の軽減税率10%を適用して、日本側でも外国税額控除を適用して二重課税にならないようにした方がお得、ということになります。
一方で、もし取引価格が10万円でかつ顧客企業との取引が一回きりというようなケースだと、源泉所得税の適用税率が10%でも20%でも、受け取れる金額は9万円か8万円ということになり金額的な重要性・インパクトはほとんどありません。この場合は、もし仮に日印租税条約の軽減税率10%を適用したとしても大したメリットはなく、逆にいろいろな書類を準備したり、PAN番号を取得したり、インドで税務申告をしなければならなくなったりと、むしろそっちの対応にかかる手間・コストがかかってしまいますので、あえて20%の税率を適用する代わりにインドでのPAN取得義務や税務申告義務を免除しておいた方がお得、ということになります。

(3)事前準備書類

3つ目は事前準備書類についてです。これまでご説明をした中で、すでにお気づきの方も多いと思いますが、①インド所得税法に規定される適用税率20%か、②日印租税条約に規定される軽減税率10%のいずれを適用するかによって必要な事前準備書類が変わってきます。ざっとまとめるとこんな感じになりますが、ここでForm 10FとNon-PE Declarationという2つ書類について簡単に説明しておきたいと思います。

Form 10Fはインドからの送金をうける日本側の会社が「私たちはこういう会社です」と、自社の身分証明をするための自己申告形式の書類になっていまして、従来はワードデータに入力をして紙ベースで提出すればよかったんですけど、2023年10月から電子申告が求められるようになりました。この電子申告手続きにはインド側で電子申告をする日本法人のPANは必要ありませんが、法人代表者個人のDSC(デジタル署名証明)と個人PAN番号が必要になるので厄介です。法人代表者がDSCやPANを持っていない場合には、Proxy(いわゆる代理人)を立てて申告をする方法もありますので御社がご契約されている会計事務所等にご相談されることをおすすめいたします。

次に、Non-PE Declarationは、インドからの送金をうける日本側の会社が「私たちはインド国内にPE(恒久的施設)を持ってないですよ」と、自主的に宣誓する書類になっていまして適用する税率に大きな影響を与える書類です。つまり、インド国内に支店やプロジェクトオフィスなどの何らかの拠点を持っていたりすると、それらがPE(恒久的施設)と見なされて日本法人(つまりインド税務当局から見た場合の外国法人)がインド国内で事業をしていると見なされるんですね。そうすると、この取引の対価がPE帰属所得と見なされて、外国法人に対する税率である40%が適用される可能性があるんですね。

インドから日本の個人口座に海外送金をする場合の注意点

最後に、インド駐在員がインドから日本の個人口座に海外送金をする場合の注意点について解説したいと思います。
まず、大前提としてインド駐在員はインド国内で受け取ったルピー建の給与については、基本的に、手取り給与金額を上限に日本の個人口座などに自由に海外送金することができます。個人の場合、ネットバンキングから書類をアップロードする形で海外送金ができるケースは多くてですね、その時に必要となる書類はこんな感じなんですけど、金融機関によって手続きや求められる書類が異なるケースもあるのでお取引先金融機関にお問い合わせください。

次に、注意点についてなんですけど、2023年10月から年間70万ルピー以上の海外送金を実施した個人は、TCSという税金が20%も銀行から徴収されるという通達がインド政府から発表されました。海外に送金しただけで20%の税金が取られるってちょっとあり得ないですよね?私が実際に使っている銀行や、その他地場の大手金融機関に確認してみたんですけど、結構見解が分かれているようです。実際に私が利用している金融機関はこの税金はインド永住者にのみ適用されるもので、永住権を持たない外国人駐在員は対象外という見解を持っていて、実際に私も昨年日本に70万ルピー以上海外送金をしましたけど、TCSという税金は一切徴収されていませんでした。ただ、他の金融機関を使っている駐在員では実際に20%の税金が取られたという人もちらほら出ています。

こういう状況を鑑みるとですね、お取引されている金融機関に直接確認をするか、もしくは、確定申告を依頼している会計事務所に26ASやTISという税務当局ポータルから入手できる書類をダウンロードしてもらって、課税年度においてTCSが徴収されていないかどうかをチェックしておくと良いと思います。このTCSは源泉所得税と同じように、個人所得税を前払いしている、という性質のもので、最終的には個人の確定申告のときに精算されるので、個人が負担すべき所得税が増えるわけではありません。ただ、インド駐在員のケースにおいては、個人所得税を会社が代わりに負担することとなっている場合には、万が一駐在員の個人口座からTCSが徴収されてしまった場合には会社からその分を返金してもらう必要があると思いますので会社の経理部門に確認するのが良いと思います。

ちなみに、少し余談になりますけど、インド駐在員のケースではご自身のビザやFRROの期限が切れると、自動的に銀行口座が凍結される可能性があります。日本に帰国をした後も何らかの理由で口座を維持しておきたい方は、NRO(Non Resident Ordinary)という非居住者用口座に切り替えておく必要があるので、こちらもお取引されている金融機関に確認してみてください。

さて、みなさんいかがでしたでしょうか?今回は、インドから日本への海外送金実務について解説いたしました。インドからの海外送金はその種類によって手続きや課税関係が異なりますので、ぜひひとつひとつの仕組みを理解をした上でスムーズな海外送金を実現していただければと思います。

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