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【知らないと損!】インド子会社が見直すべき税金問題&還付の仕組みとは

インド子会社が見直すべき税金問題&還付の仕組みとは

今回はですね、インド子会社は知らぬ間に税金を払い過ぎている、という話をしてみたいと思います。

典型的にはですね、インド国内にR&D拠点とかオフショア開発拠点などコストセンターとしての拠点をインド国内に持っている企業様によく当てはまるんですけど、知らず知らずのうちに日本とインドで税金を払い過ぎている可能性があるので要注意です。
この動画では、税金を払い過ぎている典型的な事例や、関連する日本の国税庁の通達について解説をすることで、払い過ぎていた税金が還付される仕組みや日本およびインドにおける適用法令、さらに具体的な還付申請の手続きと注意点について詳しくご紹介したいと思います。

1. 税金を払い過ぎている企業の典型事例

まずは、税金を払い過ぎている企業の典型的な事例について見ていきましょう。
インド国内にR&D拠点やオフショア開発拠点、GCC(グローバル・ケーパビリティ・センター)などを持っているような日本企業は、インド国内拠点でかかった費用に一定のマークアップを載せてサービスフィー、いわゆる、技術的役務提供(Fee for Technical Service)の対価としてインドに海外送金をすることで、インド側で必要となる運転資金をまかなっているケースって結構多いんですけど、このインド現地法人に対して日本から海外送金を実施する際には、日本側で源泉所得税を控除した上で送金する必要がある可能性が高いんですね。この場合の源泉徴収税率としては、日本所得税法上の非居住者に対する源泉徴収税率である20.42%か、もしくは日印租税条約に規定される軽減税率10%のいずれかが適用されることになります。ここで還付対象となるこの2つのケースについてご紹介したいと思います。

日本の所得税法に規定される20.42%が適用される場合

1つ目のケースは、日本の所得税法に規定される20.42%が適用されて、海外送金を実施した場合です。これは役務提供が日本国内で行われたとみなされるケースにおいて、日本国内源泉所得に対して適用される税率なんですけど、例えば、インド法人が発行した100の請求書に対して、日本法人は20.42%を控除して日本の税務署に納税をした上で、79.58をインド法人に海外送金するわけですね。この20.42の部分は日本法人の所轄税務署が発行する納税証明書(Withholding Tax Certificate)を入手して、インド側での法人税の確定申告を実施することによって、外国税額控除の適用を受けることができます。要は日本側とインド側で二重課税にならないように、日本側で納税した所得税を、インド側で納税する法人税から差し引くことができるわけですね。

ただ、日本法人に対する売上比率が高いインド法人の場合、特にR&D拠点などの場合は、日本本社に対する売上比率が100%だったりするわけなんですけど、日本で源泉徴収した所得税の合計金額が、インド側で納税すべき法人税額を上回ってしまうことがあってですね、その結果インド側で外国税額控除の適用を受けたとしてもすべてを相殺しきれずに残ってしまうケースがあります。

この場合、日本の所轄税務署に「租税条約に関する届出書」とともに還付請求書(様式11)を提出することで、日印租税条約に規定される軽減税率10%を超過して納税していた部分についてのみ、日本法人として還付を受けることができます。(※参照:国税庁通達「No.2889 租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求」)

日印租税条約に規定される軽減税率10%を適用する場合

もう1つのケースは、日印租税条約に規定される軽減税率10%を適用して、海外送金を実施する場合です。例えば、インド法人が発行した100の請求書に対して、日本法人は10%を控除して日本の税務署に納税をした上で、90をインド法人に海外送金するわけですね。さっきの事例と同じようにこの10の部分は日本法人の所轄税務署が発行する納税証明書(Withholding Tax Certificate)を入手して、インド側での法人税の確定申告を実施することによって、外国税額控除の適用を受けることができます。

ただ、同じように日本で源泉徴収した所得税の合計金額が、インド側で納税すべき法人税額を上回ってしまうことがあってですね、その結果インド側で外国税額控除の適用を受けたとしてもすべてを相殺しきれずに残ってしまうケースがあります。(※参照:所得税法第161条1項(6))

インド側では、この残った外国税額を翌年度に繰り越すことができない上に、日本側でも軽減税率10%の源泉所得税に対して相殺ができなかった部分については還付申請をすることができないので、インド法人としては二重課税が完全に排除できない、という状態になってしまうわけですね。つまり、この場合、すでに軽減税率を適用しているのでさっきご説明をした1つ目のケースのように日本法人としては還付請求することはできないんですけど、日本法人を申告管理人として選任をした上で、インド法人が日本で確定申告を実施することで、結果的に超課税額部分の還付を受けることができる、という仕組みになっています。

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2. 還付となる背景と適用法令

では、なぜこのような還付の仕組みが成り立つのでしょうか?
この背景には、他国にはあまり見られない日印租税条約の特徴「債務者主義」と、税金の計算方法の違い、そして、日本の法人税法上の税務申告義務、があります。

(1) 日印租税条約における「債務者主義」とは?

多くの諸外国との租税条約を見ていると、今回ご説明をしているような技術的役務提供の対価については多くのケースで「役務提供地基準」が適用され、役務が提供された現地国を源泉とする所得(つまり、日本から見ると国外源泉所得)として見なされるので日本から諸外国への海外送金を実行する際に、日本側で源泉徴収をする義務はないケースが一般的です。一方で、日本とインドとの間で締結されている日印租税条約第12条の規定によると、今回ご説明をしているような技術的役務提供の対価についてはその支払者(債務者)の居住地である日本を源泉とする所得、つまり「日本国内源泉所得」として見なされることとなっていて、日本側で10%の源泉徴収義務が発生してしまうことになります。

(2) 税金の計算方法の違い

ちなみに、還付の仕組みが成り立つもう一つの背景として、税金の計算方法の違いがあります。今ご説明をした日本で納税をする10%の源泉所得税というのは収入金額(つまり売上)に対して課税されるのに対して、日本側で税務申告をする際に適用される約25.5%というのは課税所得(つまり誤解を恐れずにざっくり言うと利益)に対して課税されますよね。例えば、売上高が100、利益20の事業だとすると、源泉所得税は100に対して10%の10となりますが、税務申告をして適用される法人税は利益20に対する25.5%で5.1ということになります。なので、結果的に源泉所得税の方が大きくなってしまう、というケースが多発するわけですね。

(3) 日本の法人税法上の税務申告義務とは?

あと、ここでは日本の法人税申告義務についてお話をしておきたいと思います。っていうのもですね、還付になるかどうかという話はいったん置いておいて、「債務者主義」に基づいて「日本国内源泉所得」を受け取っているインド法人は、実は、そもそも日本で毎年税務申告を実施する義務を負っていることになります。まー実態としてはですね、日系企業のインド子会社が日本で税務申告をしているケースはまだまだ少なくて、それを税務署から指摘されたっていうケースもほぼ聞いたことが無いんですけど、要は、税務申告をすると結果的に還付になるケースが多いので、日本の税務署もこの申告義務を指摘したところで税金を還付しないといけなくなっちゃうので積極的に指摘をせず、むしろあえて黙認しているんじゃないかなと、思っています。なので、日本での税務申告手続を外注する場合はその手間・コストがかかるので、実際にいくらぐらい税金が還付される可能性があるかをシミュレーションした上でインド現地法人としての対応をご検討される企業様が多いのが実態です。

3. 還付申請のための具体的な手続き

ここからは還付申請のための具体的な税務申告手続きについて解説したいと思います。インド現地法人の日本における税務申告手続きについては、主に次の7つのステップに分けて実施します。

  1. 対象事業年度にかかるインド法人財務諸表等の必要書類一式の収集
  2. 減価償却費の日本の法人税法ベースでの再計算
  3. 未確定債務等の加算調整処理
  4. 臨時的な役員報酬等の加算調整処理
  5. 源泉所得税にかかる事業部門における日本円建て部門別財務諸表の作成
  6. 日本法人を納税管理人(税務申告の代理人)として選任・登録
  7. 日本の所轄税務署に対して税務申告を実施

インド現地法人が日本に銀行口座を持っていれば、必ずしも日本法人を納税管理人として選任をする必要はないんですけど、通常は口座を持っていないケースがほとんどなので、日本法人の口座を受け皿として活用して、税金の還付を日本法人が代わりに受け取る形をとります。そして、税金が還付されれば、日本法人からインド法人に海外送金をして、最終的にはインド側に返金してあげる、という流れですね。

ちなみに、「日本国内源泉所得」を受け取っているインド法人はそもそも日本で毎年税務申告を実施する必要がある、っていうお話をしましたが、この法人税申告による還付期限は申告期限から5年以内となるので、例えば2025年3月期の場合、その申告期限である5月末から5年間なので2030年5月末が還付期限になります。また、実態として、仮に税務申告をしていなかったとしても税務署から指摘を受けるケースは稀、っていう話をしました。ただ、一度、この還付請求をするために税務申告を実施すると、税務署側も明確に申告の事実を認識をすることになりますので、翌年度以降も毎年税務申告をし続ける必要がある点は考慮した上でご判断をいただくのが良いと思います。

さて、本日はインド子会社は知らぬ間に税金を払い過ぎている、という話について解説しました。インド国内にR&D拠点とかオフショア開発拠点などコストセンターとしての拠点をインド国内に持っている企業様はぜひ参考にしていただければと思います。

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