【徹底解剖】駐在歴13年の経験からインド人の本質を9つの視点で解明!世界で成功する理由と日本人への本音とは?
駐在歴13年の経験からインド人の本質を9つの視点で解明!世界で成功する理由と日本人への本音とは?
今回はですね、インド人の魅力と意外に知られていないインド人が抱えている闇について話をしてみたいと思います。
皆さんはインド人に対してどのようなイメージを持っているでしょうか?よく喋る、とか、自己主張が強くてアグレッシブ、とか、もしかしたらあまり悩みを持ってなさそう、とかいろんな印象があるかもしれませんが、今回はですねここに挙げた9つの質問をもとに、これまで私が経験したエピソードも踏まえて私なりのインド人の本性を言語化してみたいと思います。ちなみに、私は2025年現在、チェンナイに10年、バンガロールに3年ほど住んでいるんですけど、他の地域は出張や旅行でしか行ったことがないので、私が知っているインド人はかなり南インドに偏ってしまっているかもしれません。異論・反論大歓迎ですので、ぜひ皆さんが知っているインド人についてもコメント欄で教えていただけると嬉しく思います。
1. インド人の多様性とは?
2. インド人は何を求めて働くのか?
3. インド人とスムーズに話すコツは?
4. インドのリーダーはどうやって人を動かす?
5. インド人が世界で成功する理由とは?
6. インドのビジネスマナー、意外なルールとは?
7. インドの採用、何が違う?
8. リモートワーク、インド人はどう見ている?
9. インド人は日本をどう思っているのか?
1. インド人の多様性とは?
インドって聞いただけで多様な文化や宗教、ビジネス商習慣などを思い浮かべる人も多いと思います。確かにそのとおりで、この国は、約8割がヒンズー教徒、14%がイスラム教徒、そして残り6%がキリスト教とかシーク教、仏教、ジャイナ教といった多彩な宗教背景を持つ人々で構成されています。そして、ヒンズー教の中にはカーストという独自の階級制度が存在していて、ジャーティーという血縁・地縁・職業ごとに異なるコミュニティも無数にあります。インドのカースト制度についてはこちらの動画でも詳しく解説していますのでご興味のある方はぜひご覧ください。
話を戻すと、こういった宗教やカースト・ジャーティーだけでなく、地域によっていろいろな文化や商習慣もあるので、「インド人」というひとつの単語でくくってしまいがちな私たちにとってはなかなか理解するのが難しいわけですね。インドはEUみたいなものだ、ってよく言われるんですけど、ほんとにそうだなーと思っていてですね、つまり、文化も宗教も言語も違うけど、通貨だけは同じ、なのでまさにEUですよね。ヨーロッパに住んだことがある人だったらはむっちゃよく分かると思うんですけど、オランダ人とフランス人はまるで違う人たちなのに「ヨーロッパ人」というひとつの単語でくくってしまった瞬間に、オランド人とフランス人それぞれが持っている文化や宗教や言語の違いがまるで見えてこなくなっちゃいますよね。
なので、インド人同士でさえコミュニケーションが取れないっていうことも当たり前に起こるわけですね。例えば、EU加盟国は現在28カ国で、24言語がありますけど、インド国内には29州と7つの連邦直轄領があって、460もの言語があると言われています。ここもまさにEUと似てますよね。主要な公用語としては、英語とヒンディー語を含む17言語がインドのルピー札紙幣にも記載されていて、英語とヒンディー語が表面に、残りの15言語が裏面に表記されています。北インドでは比較的ヒンディー語を話すエリアが多いんですけど、特に南インドでは州ごとに公用語が異なります。私もチェンナイに移住をした当時、タミル・ナードゥ州の公用語タミル語の勉強をしてたんですけど、飛行機で50分飛んだ隣町のバンガロールに初めて出張で行ったときに、ほとんど誰もタミル語を話していないことに気づいて、一気にモチベーションを失ったことをよく覚えています。バンガロールの公用語はカンナダ語というまったく違う言語なんですよね。ただ、州ごとに言葉が違うからこそ、インド人同士が英語じゃないとコミュニケーションが取れないので、これは私たち外国人にとっては南インドでの生活やビジネスが比較的しやすいひとつの要素になっているとも言えます。
あと、日本企業がインド人材を採用する際に直面する課題には、主に言語や食文化、家族の価値観、商習慣の違いがあります。特にインド人が日本に赴任するケースでは、英語が通じない日本社会で生きる難しさや、ベジタリアンやヴィーガン、ハラルなどに代表される食文化の違い、そして家族から遠く離れた地での生活、さらに、日本独特の企業カルチャーは彼らにとって大きな負担となるので、一企業として、一社会人としても、多様性をどのように受け入れるのかをしっかりと整理した上で、海外人材の受け入れ体制を整備しておく必要があります。
2. インド人は何を求めて働くのか?
インド人は、人生の成功を特定のパターンで考える傾向があります。それは、良い大学に入学して、欧米の大学に留学をして、有名な大企業や外資系企業に就職すること。そこでの経験を積んで、専門性を高めて、その結果としての高い給与を得ることが成功の典型的な形とされています。つまり、社会的ステータスが得られる有名企業に就職をすることと、そして、給料が高い業界・職種につくことが重要ってことですね。ご家庭の事情にもよりますけど、この「高いステータス」とか「高い給与」を目指す背景はむしろ自分のためではなく、家族や祖父母、親戚までを養うためであるケースも多くて、その責任感はむちゃくちゃ強いと感じることがあります。自分自身を犠牲にして家族や親戚を守ったり、自分自身が所属するコミュニティーにおける世間体に配慮をして家族や親戚のメンツを潰さないように自分自身を抑制しながら生きている人さえたくさん見ます。
例えば、私の知り合いのソフトウェアエンジニアはもともとは獣医になりたかったみたいなんですけど、獣医の給与水準が低いことを理由に親の意向でエンジニアの道を選ばざるを得なかったっていう話を聞きましたし、別の知り合いでインド企業の人事部門で仕事をしているインド人は、彼の同年代の親戚がアメリカの大手IT企業で仕事をしていることをたびたび成功例として引き合いに出されて、家庭内でいつも親戚と比較されるのでそのプレッシャーがむちゃくちゃつらい、と言っていました。インドではソフトウェアエンジニアは、会計士や弁護士、医者と同様、もしくはそれ以上に高く評価される職種のひとつになっていて、親が子供の進路を決めたり、場合によっては勝手に業界や職種を決められてしまう、っていうのは意外によくある話です。
あと、日本と比べるとフリーランスや個人事業主として働いているインド人も比較的に多い印象です。より良い報酬を得るためにどんどんリスクを取って脱サラするインド人は多いんですけど、ただ、結局安定した収入を得るのはそう簡単じゃんないので、その結果、また企業に就職し直すケースも少なくないです。実際、私もインドで採用活動をしていると、フリーランスを辞めて就職活動をしている候補者によく出くわします。特にコロナ禍以降は突然のレイオフや、給料の支払遅延と給与の未払いなどの問題に直面したインド人も多くて、安定した雇用・安定した収入(いわゆる、ジョブセキュリティ)を求める人は以前よりも増えたように感じます。実際、弊社に入社した従業員が初めての給料日に、「給料がちゃんと振り込まれていました!ありがとうございます!」って言って泣きそうな顔をして喜んでくれたこともあったんですよね。聞くと、どうやら前の会社では給料日にちゃんと給料が支払われたことが一度もなかったんだそうです。
ちなみに、結婚や家族の病気などを理由に、急にまとまったお金が必要になったときに、従業員からお金を貸してほしいという相談を受けるのもインドではよくある話です。このような相談があった場合、インドでは比較的こういったリクエストに応じる企業も多いんですけど、弊社でも、例えば勤続3年以上であれば月額給与の5ヵ月分を最大18ヵ月間で返済可能、といった規定を設定して、無利子での従業員へのローンをサポートしています。こういったリクエストに応じるかどうかも、インド人にとっては重要なジョブセキュリティとしての要素になっています。
3. インド人とスムーズに話すコツは?
冒頭ご説明したとおりインドにはいろいろな文化、宗教、言語があるので、その多様性は人々の考え方や性格にも現れています。ここでは私の独断と偏見にもとづいて、インド人とのコミュニケーションをスムーズに行うためのポイントを3つに整理してみたいと思います。
話の聞き方、割り込み方
まず1つ目は「話の聞き方、割り込み方」です。
インド人は自分の意見を積み上げ式でそのまま話す傾向にあるので、話が長くなったり、そもそも論点が外れることもよく起こります。インド人同士であればこれが彼らのスタイルなので論点が発散したり収束したりするのをそもそも違和感なく楽しんでいるように見えるのですが、我々日本人は特に仕事でこれをやられるとイライラしてしまいがちです。対話を効率的に進めるためには、多少強引にさえぎったり、割り込んで軌道修正したりして、話の論点を戻す必要があるので最初は慣れないと思いますが必要な対処方法のひとつだと思うのでぜひやってみてください。ただ、それをする前にまずは相手の話を聞いた上で、ある程度はその会話を楽しんでいるという姿勢を示すことも重要です。おれは「言うは易し、行うは難し」ですね、笑
感情的にならずにロジカルに
2つ目は「感情的にならずにロジカルに」という点です。
1つ目と重複する部分でもあるんですけど、インド人から異なる意見や考え方が出た場合、すぐに指摘するのではなく、まずはしっかりと話を聞いた上で理解を示すっていうのが大切です。生まれ育った環境や受けてきた教育がまるで異なるので、そんなインド人の意見や考え方が私たちと違うのは当然なんですけど、それに対して、自分はそれは違うと思う理由を、感情的にならず、淡々と論理的に説明することが大切です。「なんで分からへんの?」って正直面倒くさいって思ってしまうことはたくさんあるので私も人のことは言えないんですけど、特に、インドに駐在をする日本人は、組織の中でインド人よりも比較的役職が高い傾向にあるので、感情的にならない、というのはむっちゃ重要だと思っています。権力格差が大きいインド社会においては、社長や役員クラスの立ち居振る舞いや人間的魅力が、日本以上に組織の求心力を大きく左右してしまう可能性があるので、留意いただければと思います。
期待値の調整
3つ目は「期待値の調整」です。
インド人は納期に対する意識や、品質に対するコミットメントの基準が日本人とは大きく異なることがあります。これは、インド人に限った話ではなく、むしろ日本人の基準が異常なほどに高い、という話なんですけど、例えば、レポートの提出期限や、クライアントへの納品日、納税期限など、日本人が当然に重要視する期限に対して、自分が直接的な影響を与えていない原因、例えば、同僚の作業遅延とか、クライアントからの情報提供不足とか、システムエラーなどに対しては「私はできることをやった」「私のせいではない」だから「期限に間に合わなくても仕方ない」と考える傾向にあります。なので、外部要因が納期や品質に大きく影響する仕事の場合は、それも考慮して、実際の期限よりも早い期日を設定したり、想定される外部要因の影響とそれを考慮してでも達成しなければならない納期や品質に対する期待値をちゃんと丁寧に伝えた上で、その影響を軽減するために今からできることを明確に指示しておくことも重要になります。
4. インドのリーダーはどうやって人を動かす?
インドって世界的にみても権力格差がとても大きい国の1つなので、このリーダーの立ち居振る舞いや人間的魅力、従業員とのコミュニケーションの取り方は、人を動かす上でもっとも重要です。そして、この権力格差の大きさを戦略的に活用した仕事における的確な指示出しとか、就業規則や各種規定類の整備、明確な評価基準に基づくフィードバック、あと、仕事上の厳しさと個人としての信頼関係をいかにバランス良く補完して従業員のモチベーションを管理できるかが、日本以上に組織のパフォーマンスに大きな影響を与えると感じています。「褒める」と「叱る」の黄金比は「3:1(ロサダの法則)」って言われますけど、我々日本人は一般的に仕事の納期や品質に対する期待値がインド人よりも高くなりがちで、結果的にあまりインド人を褒めない傾向にあるので、ちょっと褒めすぎちゃったかな〜ってぐらいでもいいのかもしれないですね。
ちなみに、「人を動かす」という点において、日本とインドとの違いでもっとも大きいなーと個人的に感じているのは、「上から下へ流れる指示系統」です。
日本のように職場の人間関係や現場のチームワークを重視するマネジメントスタイルだったり、中間管理職や現場が自分で考えて、上司に提案をする、つまり下から上へ逆流するボトムアップ型の改善みたいなものは、インドでは基本的に期待できないんですよね。なので、経営陣は現場の状況をちゃんと理解した上で的確かつ明確な指示をして、それがちゃんと達成できているか、仕事の状況を細かくフォロー・モニタリングする必要があります。このフォローアップの時には、EメールよりもWhatsAppやSlackなどのコミュニケーションツール、緊急性の高い仕事であれば電話やウェブ会議、さらに重要度が高ければ直接会って話す、という形でコミュニケーションの取り方やその優先順位も、状況に応じて使い分けることもむちゃくちゃ重要です。
5. インド人が世界で成功する理由とは?
近年、インド出身のリーダーたちが世界のトップ企業や政界でも注目されるようになりました。GoogleやMicrosoft、IBM、そして最近ではIT企業のみならずシャネルやスタバ、イギリスの元首相も含めて、インド出身のトップ人材が多岐にわたって活躍しています。そういったインド人たちが持つ能力や資質の中でも特に突出していると感じているのが「インターパーソナルスキルの高さ」です。
「インターパーソナルスキル」っていうのは、 多様な人材と効果的にコミュニケーションをして協力して仕事を進めることができ、かつ、信頼関係を築くことができる能力、みたいな意味なんですけど、要は、コミュニケーションスキルとかチームワークとかオープンネスとか共感とか社交性みたいなものをバランス良く持ち合わせているコミュニケーションの総合力みたいなものですね。いろんな文化や宗教、言語、カースト、格差が混在しているインドにおいて、インド人は生まれ育った環境として対人能力や異なる個人とのコミュニケーションスキルを自然と身につけてきたんじゃないかと思っています。慶應義塾大学の教授である安宅和人さんも、AIの発達にともなって他者とうまく関わる能力、すなわち「インターパーソナルスキル」が今後ますます重要になってくると指摘しているんですけど、この点においては日本企業が今後いかに、インド人の、特にマネジメント人材を活用していくことができるか、これがグローバル展開を目指す企業にとってとても重要な人事戦略になり得るのではないかと感じています。
ちなみに、インド人経営者のリーダーシップ能力を分解するとこの5つに集約できると考えているんですけど、これについてはインド人材のマネジメント方法と合わせてこちらの動画で詳しく解説をしていますので、もしご興味ある方はぜひ見てみてください。
- 妄想力と鈍感力
- 自信と愛情
- 積み上げ力
- トラブルシューティング力
- 猛獣使いスキル
6. インドのビジネスマナー、意外なルールとは?
日本とインドのビジネスシーンにおいていくつか知っておくべき礼儀やマナーがあるのでご紹介したいと思います。例えば、日本では応接室やタクシーでの上座・下座、名刺交換のマナーなど、独特のビジネスエチケットがあると思いますが、インドのビジネスマナーの観点は少し違います。
カジュアルでパーソナルな関係性
まず1つ目は「カジュアルでパーソナルな関係性」です。
インドのビジネスエチケットは日本と比べるとよりカジュアルで、よりパーソナルな関係性を重視する傾向にあります。インドでのビジネスには人脈が大事、ってよく言われますけど、ビジネスの話を始める前に、まずは相手と個人的に仲良くなること。一緒に食事をしながらお互いの家族や食文化、交友関係に関する話をして、仕事とは関係のない相談をされたら、むしろチャンスと捉えて恩を売っておくことも時には大切です。
右手のエチケット
2つ目は「右手のエチケット」です。
インドの伝統的な習慣として、握手をしたり、物やお金を渡したりするときには右手を使うのが礼儀とされています。「不浄の手」と言われる左手を使うことは一般的には好ましくないとされているので、もしご自身が左利きである場合には意識的に配慮をした方がいいと思います。
ディワリギフトの文化
3つ目は「ディワリギフトの文化」です。
インドには毎年11月ごろにディワリというお祭りがあってですね、その際にディワリギフトという贈り物をプレゼントする文化があります。日本のお歳暮・お中元に似た商習慣ですよね。日本ではこのお中元は今の時代には合わない虚礼であるとして廃止を発表する企業も増えていますけど、インドでは今もこのような贈り物を通じて、従業員や取引先、ビジネスパートナーとの関係を深める文化が残っているので、ギフトを送る場合も、受け取る場合も相手との交流を深める良い機会と捉えて、対応するのが良いと思います。
公私関係のバランス
4つ目は「公私関係のバランス」です。
インドはトップダウン型の社会で、上下関係を重視するからこそ、それを感じさせないだけのトップのコミュニケーション能力やインターパーソナルスキル、人間的魅力が重要だと感じています。仕事やビジネスにおける交渉ごとや契約関係と、一個人としてのカジュアルな対話や個人的関係性については、しっかりと区別をしつつ、一方で、お互いが相互に作用し合うので、双方のバランスとメンテナンスが必要になります。
感情的にならないこと
最後5つ目は「感情的にならないこと」です。
もはやビジネスマナーとは少し違う話になっちゃいますけど、むちゃくちゃ重要な基本マナーだと感じているので5つ目に入れました。それぐらいインドで仕事をしていると、トラブルや遅延って日常茶飯事なんですよね。
ただ、そのような状況になっても感情的になってしまわないように注意すること、むしろ、例えば従業員からは度量の大きいトップとしての威厳や、冷静かつスピーディーに問題を解決するトップとしての立ち居振る舞いを期待されている節があります。この点、インドで仕事をしていると日本人である私はついイライラしてしまうので、ある種自分の器・度量を試されているような感覚を持ちながら仕事をしています。
7. インドの採用、何が違う?
インドでもっとも難しいと感じているのが人材採用です。有象無象(うぞうむぞう)いる人材プールの中からどうやって優秀な人材を見つけ出すのかという難しさもそうですし、そもそも欧米諸国を見ているインド人が多い中でどうやって自社や日本に興味を持ってもらうのかという難しさもあります。
優秀なインド人材は引く手数多(ひくてあまた)なので内定を獲得した後も入社直前まで引き続き良い条件で採用してくれる他の企業を探し続ける人が多いんですよね。つまり、内定を出したにもかかわらず入社直前で辞退されてしまうケースもよく起きます。日本企業の知名度って仮に上場企業であってもインド国内ではあまり知られていない場合も多いので、内定後であっても引き続き自社の魅力をしっかりとアピールして、入社するまでにランチ会をアレンジしたり、WhatsAppで近況を報告したりしながら、少しずつ関係性を構築していく工夫をすると内定辞退のリスクを軽減できると思います。
あとは、どこまでレジュメの行間やその背景を見抜くことができるかも重要です。候補者がどのようなチーム構成で働いていたのか、レジュメに記載されている業務のうち具体的にどの部分を担当していたのか。現場の作業レベルに落とし込んで、可能な限り具体的な質問をぶつけ、担当していた業務の理解度が本物かどうかをしっかりと確認することがむちゃくちゃ重要です。私はこれまで1000人近くのインド人を面接をしてきたと思いますが、レジュメに書いている業務内容のほとんどは部下にやらせていただけ、っていう人もたくさんいましたので、職務内容によっては、その場で実務テストをさせたり、マネジメント人材であれば特に事前にLinkedinなどのSNSを調べたり、外部業者を使ったバックグラウンドチェックを実施することで、本人の発言との整合性を取っていくことも有効だと思います。
最後に、そもそも優秀なインド人材に興味を持ってもらうために、自社に入社するメリットをしっかりと言語化しておくことも重要です。自社がどういったビジョンを持っているのか、事業計画や目指している職場環境、インド人にとっての魅力的なキャリアプランなど、具体的に伝えられるポイントを明確にしておくことが大切です。例えば、アメリカの会社に就職したインド人が、多くの企業でそのトップや経営メンバーになるケースは多いですけど、こういったすでに体現されている“アメリカンドリーム”のような事例は、まだ私たち日本企業には多くありませんが、せめてどのような“ジャパンドリーム”の可能性があるのかを言語化して、面接の場で候補者に説明できるかどうかはとても重要だと思います。
8. リモートワーク、インド人はどう見ている?
コロナ以降は世界中でリモートワークがある程度一般的になりましたけど、日本ではあらためて従業員に出社を求める企業も増えてきているという報道もあります。インドでも出社を義務付ける会社や、一部在宅勤務を認めるハイブリッド型で運営している企業もあってさまざまですね。ちなみに弊社では、コロナ以降、週2日の在宅勤務を認めていて、つまり週3日出社(水曜は全員出社)、勤務時間は10:00〜15:00をコアタイムとするフレックスタイム制を導入しているんですが、私の個人的な見解としては、基本的にインド人には出社してもらった方がパフォーマンスは高いと考えています。ただ、(1)コミュニケーションの質とスピード、(2)職場の文化、(3)通勤時間、(4)家族との時間、(5)リモートリスク、という5つの論点からリモートワークの是非を総合的に判断する必要があると感じているので、弊社の事例も含めてご紹介したいと思います。
コミュニケーションの質とスピード
まず論点の1つ目はコミュニケーションの質とスピードです。一人だけで完結できる仕事かどうかなど、役職や職種によっても違ってくるとは思いますけど、通常は、一人でまだ完結できない若手社員やチームで連携する必要がある業務も多いと思いますので、オフィスで一緒に仕事をしながら、上司や同僚にいつでもすぐに相談ができる環境をつくる、つまり、オフィスに出社をすることの価値はむちゃくちゃ高いと思っています。この点について、最近採用した子育て中の女性従業員で人事部門のマネージャーに聞いてみたんですけど、「人事部門の立場としては全員出社を強制したいけど、従業員の立場としてはやはり一部在宅を認めてほしい」と正直に語ってくれました。
職場の文化
2つ目は職場の文化です。インドでは職場に対してどこか家族的なつながりを期待している従業員が多くてですね、この家族的な雰囲気や、それに近い職場の文化みたいなものがインド人にとって企業に所属することのひとつの価値基準になっていると感じています。なので、こういった職場の文化を醸成するためには、出社をして一緒にランチを食べたり、仕事とは関係のないカジュアルな雑談ができる環境・機会をつくることがむっちゃ大事ですよね。在宅勤務を認めれば認めるほど、従業員個人がよりフリーランス的な動き方に近くなって、家族的な雰囲気も職場の文化も薄まっていってしまうので、それはそれで離職率を高める結果になってしまう可能性があります。なので、インドでは原則出社を基本方針として、会社の規模や採用計画に基づいて、どこまでリモートワークを認めるべきかを検討するのが良いと思います。
通勤時間
3つ目の論点は、通勤時間です。渋滞が酷いエリアに住んでいる従業員においては特に配慮すべき点なんですけど、弊社の場合ですとお子さんがいる女性従業員がたくさんいて、片道1〜2時間かけて出社しているメンバーが何人かいて、現在産休中の従業員も2名います。なので、一定のリモートワークを認めるハイブリッド型にして、働き方にある程度の柔軟性がないと、子育てと仕事の両立が難しくなってしまいよね。
家族との時間
4つ目は家族との時間です。インドでは従業員が家族の病気や家庭の事情で突然仕事を休んだり、それが理由で突然辞めてしまったりするケースは少なくないんですよね。また、例えば、子育てをしながら仕事をしている女性従業員は、配偶者や親の協力を得ながらオフィスに出社しているケースも多いので、柔軟な働き方を認めることで、家族からの協力がより得られやすくなるという価値もあると考えています。家族のつながりが強いインドにおいて、従業員の家族の協力を得ることは会社にとっても極めて重要です。もちろん、リモートワークを認めれば認めるほど、仕事のパフォーマンスや職場の文化については一定のネガティブな影響が出てしまうリスクがあるので、少なくとも仕事の結果に対しては厳しく見ていく必要がありますけど、通勤時間という無駄を削減して、家族との時間を十分に作ってもらうことで双方Win-Winとなる形が作れると理想的だなーと考えています。
リモートリスク
最後5つ目はリモートリスクです。
これは性悪説に立ってリモートワークという働き方を見た時に、万が一の場合に想定されるさまざまなリスクについてなんですけど、例えば、就業時間中に自宅で隠れて副業をしたり、同時に複数の企業でフルタイムの仕事をしていたという大胆なインド人もメディアで取り上げられていたので、従業員の中にはリモートワークを過度に悪用するケースも実際はあるようです。リモートワークだからこそ、トップやマネージャークラスの精緻なレビューやフィードバック、業務の進捗管理など、マネジメントメンバーに負荷がかかりすぎてしまうっていうリスクもあるので、オフィス出社を前提としたリモートワークの活用とその適度なバランスを常に考え続ける必要があるなーと感じています。
9. インド人は日本をどう思っているのか?
最後にインド人は日本をどう思っているのか?という話をしたいと思います。基本的に、インド人が考える日本のイメージは、アニメや漫画、日本食、禅を中心とする日本特有の文化と、スズキやトヨタなど自動車を中心とした製造業の技術力の高さ、そして、日本人に対してはDiciplineとかPunctualっていう言葉をよく使ってくれるんですけど規律正しく、約束を守ってくれる、納期を守ってくれる信頼できる人たち、という印象を持たれていると思います。そういう意味で、日本に興味・関心を持ってくれているインド人はむちゃくちゃたくさんいるんですけど、一方で、日本企業で働きたい、日本で仕事したい、と考えているインド人は残念ながら稀です。インド人の就職先ランキングトップ100などを見ていても、ここに入ってくるのはマルチスズキぐらいで、優秀なインド人材のほとんどは欧米系企業を見ています。
これもある意味当然なんですけど、英語が堪能なインドのトップ人材にとって、日本語を勉強することの経済合理性ってなかなか見出しにくいですよね。日本企業の多くは英語があまり通じないですし、欧米企業と比べて給料も低い上に円安も進んでいると。さらに、旧態依然とした日本独特の企業文化を知れば知るほど日本で働く魅力を見出しにくいっていうのは極めて自然な感覚だと思います。そんな中でですね、日本企業の多くの募集要項の採用条件欄に「日本語能力検定N1もしくはN2」って書かれているので、そんな募集要項を冷ややかな目で見ているインド人がたくさんいるのも想像にかたくないですよね。
ただ、失業率の高さが問題になっているインドにおいて、優秀なトップ層ではなくて、もう少し日本企業にとって”ちょうど良い”層のインド人に目を向けてみるとまだまだ可能性は無限にあると考えています。例えば、日本の中小企業が一流企業には就職ができなかった地方のインド人材の中から隠れた逸材を比較的に安い賃金で発掘したり、日本の食品加工会社が、東洋人の顔立ちをしていてキリスト教徒が多い(食事制限のない)インド北東州の人材の中から将来の幹部候補生を採用したり、こういった採用戦略が考えられます。つまり、ちょうど良い層のインド人から見れば、日本企業で技術と文化と言語を学びながら、キャリアップを目指したいと考える層は一定数いるはずなので、日本企業にとってもまだまだ大きな可能性を秘めていると感じます。
皆さん、いかがでしたでしょうか?私の限定的な経験にもとづく偏見ばかりの内容だったかもしれませんが、「インド人ってどんな人?」について9つの質問からいろいろと考察をしてみました。もし皆さんが持たれていたインド人のイメージと違っていた部分があれば、ぜひぜひコメント欄に書いてみてください。この動画を見ている他の人にもきっと参考になるものと思います。