【進出前に必ず見て!】知らないと後悔するインドからの撤退方法を徹底解説!
知らないと後悔するインドからの撤退方法を徹底解説!
今回はですね、インドに進出をした企業がインドから撤退する方法について解説してみたいと思います。
インドに進出をしたものの、事業がうまく立ち上がらず、残念ながら撤退される企業様もいます。また、撤退手続きさえもスムーズにいかず、撤退に多大な労力・コストがかかってしまうケースも散見されます。
そこで今回の動画では、インドからの撤退方法の選択肢と、その中でも典型的な撤退手続きである自主清算(Voluntarily Liquidation)の手続きの全体像とその実態について解説してみたいと思います。
撤退する場合の主な選択肢
まず、インド事業を撤退する場合の主な選択肢としては、破産、自主清算、登記抹消、休眠会社の4つがあります。
もちろん、株式を他社に売却したり、グループ会社に株式を譲渡したりして撤退をすることも可能ですが、自社が自力で検討できる選択肢ではないのでいったん除外して考えたいと思います。
破産については、1,000万ルピー以上の債務不履行の状況にある会社を清算するための手続きで、会社再生手続きの申立てを行った上で、かつ、再生手続きが正式に否認されて初めて破産手続きへの移行が認められているもので、破産管財人に権限移譲をした上で手続きを進めていく形になります。一定の時間がかかりますけど、破産手続きが完了した後にもし何らかの偶発債務が出てきたとしても、その負担をする必要がない点において完全撤退ができる選択肢のひとつです。
自主清算については、債務不履行の状況にはない企業が自主的に会社を清算する場合の手続きで、インドに進出している日系企業がインド事業から撤退をする場合にはこの選択肢を取るケースが一般的です。
つまり、債権債務の整理をして、かつ、債権者との合意ができれば手続きを進めることが可能です。こちらも破産手続きと同様にかなり時間はかかりますけど、自主清算手続きが完了した後にもし何らかの偶発債務が出てきたとしても、その負担をする必要がない点において完全撤退ができるので、日系企業にとっては典型的な撤退方法のひとつになっています。
登記抹消手続きについては、会計年度2年間にわたってすでに事業活動が停止している企業にのみ認められている手続きで、登記を抹消する形で会社を解散させる方法です。こちらは条件さえ満たせば手続きとしては比較的シンプルなのですが、解散した後にもし何らかの債務が発生してしまった場合には、取締役等がその債務を負担しないといけない可能性が出てくるので、将来的な偶発債務を完全に遮断できるわけではないという点において留意しておく必要があります。
最後の選択肢は休眠会社化です。これも会計年度2年間にわたって事業活動を停止している企業にのみ認められている手続きなんですけど、休眠会社化したとしても、法人としての登記は残ったままなので、一時的に事実上の撤退をする、という形になります。一般的には、将来的にまたインド市場に参入する可能性がある企業がこの休眠会社を採用することになりますが、休眠会社化したあとも、最低限のコンプライアンス対応を引き続き求められるので、完全に撤退されたい企業様が採用されるケースは稀だと思います。
自主精算手続きの概要
ここからは、日系企業がよく採用する撤退方法、自主清算手続きについて見ていきたいと思います。
まず、インド国内でどれぐらいの企業が自主清算手続きをしていて、実際にどれぐらい時間がかかっているのか、ちゃんと清算できているのか、などの全体像を見ていきたいと思います。インド破産倒産委員会(IBBI)の2024年3月末付の直近レポートによると、会社清算手続きを開始した会社が全部で 1895 社あってですね、そのうち 1393社(全体の73.5%)が最終申請まで完了しています。時系列で見ると、コロナ禍以降に自主清算手続きを開始した企業が年々増えていることが数字でも見て取れますよね。ちなみに、最終申請までいった企業のうちの 807社(つまり57.9%)が会社清算が無事に完了していることもわかります。一方で、468件は引き続き清算手続き中という状況で、そのうち、清算手続きを開始してから2年以上経過してもまだ最終申請までいっていない会社が155社(つまり33%)もあるので、もちろん各企業様の財務状況やこれまでの事業の経緯・設立から現在にいたるまでの期間などによっても異なると思いますが、やはり自主清算の手続きはかなり時間かかることはデータからもよく分かりますよね。
ちなみに、こちらはインド破産倒産委員会が公表している実際の企業データを弊社で加工したものですが、自主清算手続きを実施した日本企業に限定してデータをみていくと、Date of Commencement/清算手続き開始日から、Date of Dissolution/清算完了日までにかかった日数が実際に公表されていて、ざっと見る限り平均2年程度、長期に及んだケースでは4年以上かかっている企業もちらほらあることがわかります。
自主精算手続きの流れ
次に、具体的な自主清算手続きについて解説をしていきます。
自主清算手続きの全体像・ステップの概要としてはこんな感じになっていまして、まず最初に清算手続きに入る前の準備として、債権債務・資産負債の清算や、訴訟・係争事案の解消、従業員との雇用契約や取引先との契約解消などを行います。
次に、取締役会や臨時株主総会を開催して、清算人Liquidatorの選任や報酬、取締役からの自主清算に対する宣言などを決議した上で、インド破産投資委員会IBBIおよびインド会社登記局ROCに報告します。
ここからは基本的に選任された清算人にほぼ全ての権限が移譲される形になるため、清算人が中心となって手続きを進めていくことになります。具体的には英語および現地語の新聞2紙での一般公告、必要に応じて税務当局からのNOC取得、
そして、資産/負債の最終的な清算や株主への余剰金償還を実施した上で最終報告書を作成し、インド破産投資委員会IBBIおよびインド会社登記局ROCに対して提出した上で、
インド会社法審判所NCLTに対して会社の解散を求める申し立て行なって、最終的にNCLTからの解散決定通知書Final Orderが発行されれば、インド登記局ROCに通知をして手続きは完了です。
企業様から多くいただく質問
自主清算手続きにおいて、企業様からはよくこういったご質問をいただくことが多いのでひとつひとつご回答・解説していきたいと思います。
- 多額の債務が残っている場合に、自主清算手続きはできますか?
- 税務当局からのNOCは絶対に必要ですか?過去税務調査が終わっていない年度はどうなりますか?
- 清算手続き中に過去の取引先から異議申し立てがあった場合どうなりますか?
まず1つ目の質問は、多額の債務が残っている場合に、自主清算手続きはできますか?という質問ですね。
冒頭にお話しをしたとおり、自主清算手続きは債務不履行の状況にはない企業ができる手続きなので、何らかの方法で債務を清算する必要があります。よくあるケースでは株主が増資をして債務を清算したり、たとえば、債務残高が親会社に対するものの場合には、親会社が債権放棄をして、つまりインド現地法人側では債務免除の手続きを行なったりするケースが多いと思います。ちなみに、債権放棄をした場合、インド現地法人側では会計上債務免除益が計上されるので、これによってインド側で追加で法人税の納税義務が発生するかどうかは事前にシミュレーションをしておく必要があるのでご留意ください。
2つ目の質問は、税務当局からのNOCは絶対に必要ですか?過去税務調査が終わっていない年度はどうなりますか?というご質問です。
昔は税務当局からのNOCは必須だったんですけど、現在は必ずしも必須というわけではなくなっています。むしろNOCの取得に相当に時間がかかってしまって、迅速な自主清算手続きの進行を遅らせる原因にもなっていたんですよね。ただ、清算手続き開始時点において、すでに税務調査が実施されていたり、税務当局と何らかの係争事案がある場合には先に解決しておく必要があるのと、NOCを取得していない場合において、会社清算手続きが完了するまでの期間はたとえ公示期間の後であっても引き続き税務当局からの調査・追徴課税等の権限は残っている点は注意が必要です。
3つ目の質問は、清算手続き中に過去の取引先から異議申し立てがあった場合どうなりますか?というご質問です。
清算人が選任されると5日以内に一般公告をおこなって、会社清算に対して異議のある債権者は30日以内に申し出るよう要請する形を取ります。もしこの期間中に申し出がなかったら、原則、その時点で未請求の債務については消滅します。もし、何らかの追加債務が発生する場合は速やかに支払う必要があるわけですけど、もし十分な資金が残っていない場合、清算手続きを継続するかどうかが取締役に問われる形になります。っていうのも、取締役は清算手続きを開始するときに、宣誓書の中で、清算手続きにおいて発生する債務については支払能力を有していることを宣誓供述しているわけですけど、もし追加債務の支払いができない場合にはその宣誓書が無効となってしまい、場合によっては破産手続きに移行せざるを得なくなる可能性もあります。
皆さん、いかがでしたでしょうか?今回は、インドに進出をした企業がインドから撤退する方法について解説をいたしました。すでにインドに進出されている企業様や、インドに進出を検討されている方はぜひ参考にしていただけると嬉しく思います。