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インド人材の採用で成功する企業・失敗する企業の違いとは?現地で働くと見えてくる実態を駐在員が解説!

インド人材の採用で成功する企業・失敗する企業の違いとは?現地で働くと見えてくる実態を駐在員が解説!

今回はですね、インド人は本当に優秀なのか?という点を深掘りしてみたいと思います。

「インド人って頭がいいんでしょ?」
「数学得意らしいけど、本当なの?」

日本に帰国するとよくこういう質問を受けるんですけど、毎回どう答えるべきか結構悩ましいんですよね。確かにそういう人もいるけど、YESでもあり、NOでもあるという感覚。インド人材に注目しはじめている企業様が増えている中で半信半疑ながらそう期待したい気持ちもわかります。事実、Googleのサンダーピチャイ氏やMicrosoftのサティヤナデラ氏といったインド人のスーパースターたちが世界を席巻していますし、例えば楽天はインドで数千人規模のIT人材を雇用していて、近年は深刻化する日本の人材不足を補う手段として日本企業がインド人材を採用し始めているという話もよく聞きます。ただ実際、インド人はどれぐらい優秀で、私たち日本企業との相性はぶっちゃけどうなのか?今回はこの問いに対して、インドに住み、インド人と一緒に仕事をしてきた私の経験と、インド駐在員の話も交えて、インドで実際に起こっている現場のリアルを暴露したいと思います。

インド人はインドに住みたくない?

まずはじめにちょっと余談になっちゃいますけど、海外で出会うインド人によく「いつごろインドに戻ろうと思っているの?」と聞くんですけど、「戻るつもりはないです」って答えるインド人が結構多いんですよね。インド人に言わせると「せっかく海外で仕事をするチャンスを得たのに、なんで戻る必要があるんですか?インドなんかに戻りたくないですよ」って笑いながら話す人も結構いたりします。むしろ、私のようなインドに住んでいる日本人がかなり不思議に感じるようで、日本に住んでいるインド人に「なんでインドなんかに住んでるんですか?日本の方が良くないですか?」と疑問に思われることもあるんですけど、たしかにそうやなと、さすがにぐーの音も出ないですね、笑。

事実、インド国外で活躍するインド人のほとんどは、インド国外で得られるキャリアや自由、生活水準をそう簡単には手放したくないというのがリアルな声だと思います。そんな「インド国外で働くインド人」と「インド国内に働くインド人」との間には大きな隔たりがあってですね、実は大きく分けて5つの層に分けられると感じていますので、独断と偏見たっぷりですが、まずは前段として、インド人の5層構造について解説してみたいと思います。

インド人っていうのは本当にピンキリで多様すぎるので、ひとくくりにするのは無理があるんですけど、インド人を主にこの5層構造で考えると比較的整理しやすいかなと思っています。

① 第一層は欧米で活躍するトップエリート層です。

GoogleやMicrosoft、メガバンクなど欧米の超一流企業で最前線に立つインド人たちです。インド訛りが少なく、国際的に通用するむちゃくちゃ高い英語力とスキルを持っていて、現地の就労ビザをとってバリバリ活躍するトップティア人材ですね。

② 第二層は欧米以外の先進国・中東などで活躍する実力派層です。

例えば、日本、シンガポール、マレーシア、サウジアラビア、UAE、カタールなどに移住して仕事をしている人たちですね。欧米企業に就職するほどのトップエリートではないけど、国外転職によって先進諸国に移住をした優秀かつ堅実な人材で、親戚や知人のつてを頼って移住したり起業したりする実業家タイプもいます。

ちなみに、この第一層と第二層は、インド国籍を持ちつつインド国外に住んで活躍するインド人、いわゆるNRIのことを指しますけど、こういった在外インド人・NRIは世界に1,350万人ほどいると言われていて、海外で活躍するインド人としては割と目立つわけですけど、インドの人口から考えると1%未満なのでレアケースです。

③ 第三層はインド国内で高等教育を受けてインド国内都市圏で活躍するアッパーミドル層です。

私たちがインド国内で最も接するのはこの層なんですけど、英語はバリバリインド訛りの英語で、海外経験はほとんどない人が多いので、グローバルスタンダードのビジネスマナーや仕事のやり方が通じないことが頻発するので、一緒に仕事をすると文化や価値観の違いに悩むことも多々あります。ただ、我々がインドと中長期的に付き合っていく上で一番向き合うべき層でもあるので、我々日系企業にとって、もっとも理解すべき層とも言えます。

④ 第四層はインド国内都市圏以外の国内企業勤務層です。

例えば、生まれ育った街をこれまで一度も出たことがなくて、飛行機にも乗ったことがない人も多いのがこの層です。英語が苦手な人も中にはいますが、まだ都市には出てきていない隠れた逸材が眠っている可能性もあるので、我々日系企業としてもこういった層から優秀な人材を発掘することができると会社と従業員が一緒に成長しやすい理想的な成長ストーリーを描けるチャンスもあります。

⑤ 第五層は農村部・地方の非正規労働層です。

ローカル言語しか話せない人が多くて、教育レベルも低めなので日本人駐在員が直接コミュニケーションを取るケースは稀です。家族で生計を立てるために、露天商や建設労働などに従事しているケースも少なくありません。

それではここからはインド人は本当に優秀なのか?という点を少しずつ深ぼっていきたいと思います。

「インド人=数学が得意」は本当か?

まず、日本でよく言われるのが、「インド人は数学が得意」っていう話ですよね。結論から言うと「数学が得意な人がたまーにいる」というのが正解です。確かにインド国内には理工系の大学は多いですし、インド工科大学IITやインド経営大学院IIMを中心とした超優秀な大学を出て、海外で活躍しているような在外インド人は基本的に数字に強いと思いますけど、先ほどの5層構造の上位2層は全体の約1%ですよね。第三層の中で一部数学が得意な人を合わせてもせいぜい数%ぐらいだと思います。私がこれまで付き合ってきたインド人の中には、簡単な四則演算でさえ頭の中でできない人も結構いましたし、数字で定量的に説明するのが苦手な人も意外に多いです。数字を見せれば簡単に伝わる話を、むちゃくちゃ長い説明をされて結局何が言いたいのかよく分からないなんてこともよく起こります。なので、「インド人=数学が得意」というのはステレオタイプなのでこの点はまず認識をあらためる必要があると思います。とは言え、もし仮にインド人の数%が数学が得意だとしても、それだけでも数千万人はいるわけですから、やはり人口大国はむちゃくちゃ強いですよね。

「インドのIT人材は優秀」は本当か?

そしてもうひとつ日本でよく言われるのが「インドのIT人材は優秀」っていう話ですよね。これも結論から言うと「優秀なIT人材がたまーにいる」というのが正解です。もちろん超一流大学IITを卒業したインド人エンジニアや、アメリカ企業で活躍するインド人エンジニアは優秀な人が多い傾向にはあるでしょうし、こういったIT人材は優秀なインド人の中でもトップオブトップにいる超エリートなので、優秀なのはもはや当たり前の話です。

こういったエリート層ばかりを採用できればいいんですけど、ただ、日系企業が採用する可能性のあるインド人エンジニアの多くはおそらく先ほどの5層構造の中で言うと第3層にいるインド人です。ましてや、インド人エンジニアに日本語能力を期待すればするほど、優秀なエンジニアを採用できる確率は激減していきます。

ちなみに、これはインドで開発チームのマネジメントをしている日本人駐在員から聞いた話で、もちろん個人差があることは大前提に置いた上での話なんですけど、一般的なインド人エンジニアのコードの品質は日本人が期待する50〜70%程度のレベル感だと考えた方が良いそうです。つまり、エンジニアが書いたコードのレビュー依頼、いわゆるプルリクを上げるスピードが早くても、日本人が期待するコードの品質にはなっていないケースが多くてそのレビューにかなり負担を強いられるとのことでした。なので、プルリクが上がってきても、レビュー者側で本番環境に反映されるまでに時間がかかってしまう傾向にあるわけですね。ただ、この論点は優秀さの違いではなくて開発方針の違いやその優先順位の違い、と捉えられる可能性もあるみたいで、「優秀なIT人材がたまーにいる」っていうのはあくまで「日本人が定義する優秀なIT人材がたまーにいる」と言い換えておいた方が良い可能性があります。

つまり、エンジニアがコードを書いた後にCI/CDパイプラインなどで自動テストを走らせたり、機械的にバグ検知をする仕組みが前提になっているケースは多いと思いますけど、インド企業では多少コードが荒くてもスピーディーにプルリクを上げさせて事後的に対処していく開発方針をとっているフェーズ、要はプルリクの質を上げることに対しては日本ほど重要視されていないフェーズもあれば、スタートアップでプロトタイプやMVPなどの開発をしているフェーズだとスピード重視でむしろ品質は多少粗くてもOK、みたいな状況もあるとは思うので、こういったフェーズでの開発経験しかないインド人エンジニアのパフォーマンスが、日本人が期待するレベル感ではなかったとしても、優秀ではないと決めつけるのは時期尚早ということも十分にあり得るのかなと感じます。つまり、自社が期待しているコードの品質を細かく定義して、開発方針やその優先順位を丁寧に、粘り強く伝え続ける必要があるかもしれません。

これですね、エンジニアに限らず、例えば弊社のインド人経理スタッフにも同じことが言えると感じてるんですよね。日本本社の経理部門が期待をする数字の整合性やその粒度、日本人が見やすいと感じるフォーマット、期限に対する意識まで、ある種日本人であれば当たり前のレベル感が、インドだとぜんぜん違うんですよね。つまり、そもそもインド人が成果物として目指しているゴールと私たち日本人がある種「勝手に」持っている期待値が最初からかなりズレているので、そのギャップを埋める工夫をしなければ非効率な出戻りが発生してしまうのも当たり前なわけです。一切の修正をせず、レポートをそのまま顧客に提出できるレベルのアウトプットが一発で出てくるケースっていうのは稀なので、何回かキャッチボールをしながら仕上げていくことを前提にしておく必要があるわけですけど、このキャッチボールの数を減らしていけるように自分が期待している期待値を正確に、丁寧に、粘り強く伝え続ける必要がありますし、期日の重要性や期日に遅延した場合に起こり得るリスクも説明する必要があると考えています。

インド人材は日本の救世主になれるのか?

インド人に対する誤解や、短絡的なインド信仰も散見されますけど、それでも日本企業にとって、インド人材はむちゃくちゃ貴重なパートナーになってくれる可能性に秘めていると感じます。高い失業率という人口大国であるがゆえの慢性的な社会課題を抱えているインド。そんなインドは、逆に日本企業が抱えるさまざまな人材不足の課題を解決し得るだけの豊富な人材を複層的に抱えていて、その層がむちゃくちゃ分厚いからですね。IT人材に限った話ではなくて、例えば、警備や建設、飲食、ホテル、介護などのホスピタリティ業界に至るまでさまざまで、そういった人材は、私たちがよく知っているデリーやムンバイ、バンガロール、チェンナイ、ハイデラバードといった主要都市圏だけじゃなくて、プネやマンガロール、コインバトールといった街もそうですし、ナガランド州やアッサム州など東アジア人のような顔立ちのインド人が住む北東インドの都市にも多くの人材がいます。

そもそも人材不足という日本の中長期的な課題に対しては、それこそ中長期的に取り組んでいく必要がありますよね。日本とインドを比較したときの文化や商習慣の違い、言葉の壁、業務プロセスの違い、このどれをとってもお互いが歩み寄って時間をかけて解決していく必要がある課題です。インド人に日本語を学ばせて日本色に染めようとするのではなくて、インドという国の文化を理解・尊重して、日本人も英語を学んで、そして、仕事のやり方や業務プロセス・方針を丁寧に伝えていくこと、そのすべてを時間をかけてひとつひとつ実現していくことこそが何より大切で、自社が成長をする貴重な学習プロセスにもなるのではないかと感じます。

そして、トランプ政権になったアメリカや、あと、極右政党の躍進が目立つヨーロッパ諸国でもですね、移民の受け入れが今後ますます厳格化して、欧米企業への就職が難しくなっていくことが想定される中で、就職先としての日本の魅力が相対的に上がってきています。インド人が日本企業への就職を考えるとき、一般的には英語でのコミュニケーションの難しさや給料の低さが気になると思いますけど、それでも日本企業に就職したいと思ってくれるインド人が増えていく可能性があるので、ぜひ我々日本人としても全力で歩み寄っていきたいですよね。

さて、皆さん、いかがでしたでしょうか?今回はインド人は本当に優秀なのか?という点についていろいろな視点から考察をしてみました。インド人材に関心を持っている企業様はぜひ参考にしていただければと思います。