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【緊急速報】インドGST税制が大改革!私たちの生活・事業はどう変わる?【GST 2.0完全解説】

今回はですね、 インドGST税制の大改革「GST 2.0」について、皆さんの生活やビジネスにどう影響するのかを徹底解説してみたいと思います。

今回の税制改革はインド史上最大の経済改革の1つだと言われるほど、インドの経済界、そして世界が注目をしています。もちろん、インド在住のわれわれ日本人にとっても日々の買い物において大きな影響が出てきますし、2C/2B問わずインドに進出している企業様にとっても商品やサービスによって、また、各企業様のビジネスモデルによってもその影響は多岐にわたります。

さらに、トランプ関税の影響に対する緩衝材としての効果もむちゃくちゃ期待されています。そこで今回の動画ではですね、新しいGST税率の構造の全体像や、実際にGSTの税率が変更された453品目の中から具体的にどの品目やサービスが値下がりして、どの品目が値上がりするのか、さらにインド経済への影響、そして、動画の最後には直近のGST評議会を踏まえて発表されたビジネスにむちゃくちゃ大きな影響を与え得るその他の重要な変更点についても解説いたしますので、ぜひ最後までご覧いただければと思います。

インドGST税制が大改革!私たちの生活・事業はどう変わる?

まずは皆さんにインドのGST税制改革「GST 2.0」の全体像についてお話ししたいと思います。

2025年9月3日に開催された第56回GST評議会において、この「GST2.0」は次世代型のGST制度として発表されて、ヒンドゥー教のお祭り「ナバラトリ」の初日である2025年9月22日から発効される予定になっています。ものすごい良いタイミングですよね、っていうのも、50%のトランプ関税により輸出販売が落ち込む可能性を考えますと、消費税減税による内需を引き出すことである意味、トランプ関税のネガティブな影響を緩和できますし、来月10月はヒンズー教の新年を祝う「ディワリ」、まさにこのインド最大の祭事商戦が始まるこのタイミングで税制改革を発表して一気に消費活動を促すわけですね。

さらに、これらの大改革は、税率構造とかコンプライアンスの簡素化も含めて、ビジネス環境そのものを改善することによる経済成⻑のさらなる加速をも目指しています。

まずは税率構造から。これまでのGST税率は、主に5%、12%、18%、28%という4段階で構成されていました。それが今回の「GST 2.0」では、より「市⺠に優しい簡素な税制」へと合理化され、大きく3つの段階に整理されることになったんですよね。では早速見ていきましょう。

GST 2.0の全体像と新しい税率構造

まずは新しいGST税率の構造から見ていきたいと思います。

これまでは4段階で構成されていたものが、標準税率を18%として、必需品や優先セクターの品⽬に適⽤されるメリット税率が5%、それに対して、特定の嗜好品や⾼級品に選択的に適⽤されるデメリット税率が40%というよりシンプルな構造になります。


あと、これまでもありましたけど、特定の品⽬については引き続き0%または免税が適用される形になります。

それでは私たち日本人として一番気になる何が安くなって、何が高くなるのかをひとつひとつ見ていきたいと思います。

【朗報】税率が引き下がる品目・サービス

今回の改革で最も注目すべきは、多くの生活必需品や、私たちにとって身近な品目・サービスの税率が引き下げられる点です。これは、特に中間層や低所得者層の家計負担を直接的に軽減することを狙ったものと言えると思いますが、消費活動を促して経済成長を後押しする重要な成長エンジンになるとも言えますよね。

⾷料品と⽇⽤品

まずは⾷料品と⽇⽤品です。超高温処理をするUHTミルクとかパッケージ包装されたパニール、ピザパン、インドのパン類(チャパティとかロティとかパラタですね)、こういったものはこれまで5%または18%だったところから非課税になります。これは、ミルクやパンなどでもともと非課税だったものや、チャパティやロティは5%だったにもかかわらず、パラタは18%だったりと、地域差はあれどインド国内で同じように食されているインドのパン類似品目との間における公平性を確保するための変更ですね。

次に、バターやギー、チーズやナッツ類、乾燥フルーツ、ソース、パスタ、インスタント麺、チョコレート、コーヒーの抽出物、コーンフレーク、ビスケット、アイスクリーム、そして、ミネラルウォーター、こういったものはこれまで12%または18%だったところから「5%」に引き下げられます。

あと、日用品ではヘアオイルとかシャンプー、歯磨き粉、石鹸、自転車やその部品、食器、台所用品、裁縫用ミシン、傘、ベビー用哺乳瓶、おむつ、ナプキン、ろうそくなど、こういった一般消費財・日用品も12%または18%だったところから「5%」に引き下げられます。この辺りは日々の買い物が少しお得になるので、嬉しい変更ですよね。

動画を見る

医療・ヘルスケア関連

2つ目は医療・ヘルスケア関連の品目です。

まず、個⼈向けの医療保険および⽣命保険サービスが、18%から一気に「免税」になります。ちなみに免税対象となるのはあくまで個人向けの保険なので、インド在住の日本人が一般的に加入している企業が福利厚生の一環として契約してくれているグループ医療保険については対象外になっているので、私たち日本人には直接的な影響は少なそうです。

あと、がん治療薬や希少疾患の治療に⽤いられる薬なども非課税になります。その他の医薬品や医療用酸素、体温計、診断キット、血糖値測定器などの医療機器も、これまで12%または18%だったところから「5%」に引き下げられます。これ、なんで全ての医薬品が非課税にならないのかっていうと、薬の原材料を仕入れた時に企業が支払っているGSTの仕入税額控除が受けられなくなると、企業が薬全体の販売価格を引き上げてしまう可能性、つまり、結果的に消費者の負担が増える可能性があるので、多くの医薬品のGST税率は5%に留められているということのようです。

ちなみに、GST納税額の計算ロジックは基本的に日本の消費税と同じで、この図のとおりですね、顧客から預かったGST(日本で言うところの仮受消費税)から、仕入れ先に支払ったGST(日本で言うところの仮払消費税)を差し引くことで納税額が決まる仕組みになっているので、そもそも顧客から預かるGSTがなければ、仕入れたときに支払っているGSTの仕入税額控除が受けられなくなるっていうわけですね。このGST税制の仕組みについてはこちらの動画で詳しく解説していますのでご興味ある方はぜひご覧ください。

農業機械・⾃動⾞・家電

3つ目は農業機械や⾃動⾞・家電ですね。

トラクターや農機用タイヤ、灌漑システムやスプリンクラー、農業関連機器はこれまで12〜18%だったところから一律で5%に引き下げられ、自動車も排気量が1200cc以下の⼩型車ガソリン車や1500cc以下の⼩型ディーゼル⾞、そして350cc以下のオートバイ、三輪自動⾞、トラック、バス、救急⾞、すべての自動車部品(トラクター部品を除く)もこれまで28%だったところから「18%」に⼤幅に引き下げられます。あと、これまで贅沢品と⾒なされていたエアコンとか⾷器洗い機も28%から「18%」に統一されますので、新車や新しい家電の購入がますます手頃になることが期待されています。

それ以外の品目をいくつかご紹介したいと思いますけど、
ソーラー調理器やソーラー温⽔器などに加えて、ソーラーパネルやバイオガスプラント、⾵⼒発電、⽔素燃料電池⾞など、再生可能エネルギー関連の製品は一律で12%から「5%」に引き下げられます。あと、セメントが28%から「18%」に引き下げられているのも大きいですよね、インフラ事業のコストや住宅建設コストに大きな影響を与える品目で、ちゃんと消費者に還元されれば経済へのインパクトも大きい領域だと思います。

あと、1⽇あたり7,500ルピー以下のホテル宿泊サービスが12%から5%に引き下げ、ジムやサロン、ヨガセンターなどの美容・フィジカルウェルビーイング関連サービスも、これまで18%だったところから5%に引き下げられるので、私たち日本人のインド生活でも比較的利用頻度の高いこういったサービスが値下がりするというのは嬉しい変更点ですね。ただ、この7,500ルピー以下のホテル宿泊サービスは税率が5%に下がるんですけど、without ITCつまり仕入税額控除としては使えなくなるという変更になっているので、企業が負担をする出張旅費としてはコストが上がってしまう可能性がある点は留意が必要です。

ちなみに商品やサービスが税率が変更される前に提供されて、請求書が税率が変更された後に発行されるようなケースでは、税率が適用されるタイミングは実際にその対価の支払が行われたタイミングに応じてこんな感じで整理することができます。つまり、税率が変更される9月22日までにすでに支払いが終わっている場合には、この支払日時点での税率、つまり旧税率が適用されることになります。一方で、9月22日以降税率変更後に支払いをした場合に、この支払日かもしくは請求書の発行日いずれか早い日が課税のタイミングになるので、新税率が適用される形です。

商品やサービスが税率変更前に提供され、請求書が税率変更後に発行される場合の取り扱い
・支払いが税率変更前に行われた場合 → 支払日時点の税率が適用(つまり旧税率)
・支払いが税率変更後に行われた場合 → 支払日または請求書の発行日どちらか早い方(つまり新税率)

【注意】税率が引き上げられる品目・サービス

一方で、今回のGST税制改革では特定のアパレル商品や嗜好品(Sin Goods)、高級品(Luxury Items)、そして一部のサービスなどで税率が引き上げられます。

まずはアパレル商品から見ていきたいと思います。アパレルについては、2500ルピー超の商品については従来の12%から18%に引き上げられます。これ結構厳しいですよねー、2500ルピーっていう日本円で4200円ぐらいなんですけど、たとえば最近インド国内での店舗展開を進めているユニクロも、商品の多くが2500ルピーは超えてしまっているのでユニクロにとってはなかなか厳しい増税と言えると思います。ちなみに2500ルピー以下のアパレル商品は従来と同様必需品として引き続き税率は5%です。

次に嗜好品を見ていきたいと思います。たとえば、炭酸飲料とかカフェイン飲料、特定のタバコ製品、あと、パン(Paan)ってご存知ですかね?インドの噛みタバコみたいなものなんですけどナッツ類に加えて香辛料・甘味料とかが葉っぱでくるんであってインド人は食後とかにお口直しで食べたりするみたいなんですけど、まーこれがクソ不味くてですねお口直しどころかさらに悪化させるかなりキワモノです。こういった嗜好品がこれまで28%または18%だったところから一気に40%に引き上げられます。一般的に健康に良くないと言われているものが対象となっているイメージですね。

あと、カジノとか競⾺クラブへの入場料、インドの国民的スポーツであるクリケットIPLなどのスポーツイベント入場料、ギャンブルや宝くじ、オンラインゲームなどに請求される費用もこれまで28%だったところから一気に40%に引き上げられます。

次に贅沢品についても見ていきたいと思います。わかりやすい贅沢品で言うとプライベートジェット機とかヨットとかが対象になっていますけど、これ以外にも排気量350ccを超えるオートバイとか、排気量1200ccを超えるガソリン車や1500ccを超えるディーゼル車なども28%から40%に引き上げられています。

ただ、自動車のGST税率の変更については従来の旧税制で適用されていたCess(追加課徴金)の廃止とセットになっているので、「旧税率+Cess」と「新税率」を比較する必要があるので、ここからは自動車のGST税率についての全体像を整理した上で、解説したいと思います。

自動車のGST税率の構造変化

これまで説明したとおりですね、小型車の税率が18%から5%に引き下げられ、それ以外は28%から40%に引き上げられるという話をしたんですけど、旧税制で課税されていたCessという追加課徴金が新税制では廃止されることになったので、実効税率で比較すると基本的にすべての車種で税率が軽減されることになります。

こんな感じで一覧にするとよくわかると思いますが、全長4メートル以下、エンジン排気量1200cc以下のガソリン車、1500cc以下のディーゼル車については旧税制の適用税率が28%に対して、Cessという追加課徴金が1%から4%上乗せされていたので、実効税率で見ると29%から32%だったわけですね。

これが新税制ではCessが廃止されて一律18%に引き下げられるわけです。たとえば、Tata Nexonなどは現在の実行税率最大31%から18%に減税となるので、販売価格も大幅に引き下げられるわけですね。先ほどの小型車以外の乗用車も同様に、旧税制の適用税率が28%に対して、Cessが15%から22%上乗せされていたので、実効税率で見ると43%から50%だったわけですね。これが新税制ではCessが廃止されて一律40%に引き下げられるわけです。たとえば、高級SUVのToyota Fortunerは現在の実行税率50%から40%に減税となるので、販売価格も最大34万9,000ルピー(日本円で約60万円ぐらい)大幅に引き下げられるわけですね。こういった実効税率の低減を背景に、自動車メーカー各社は続々と値下げを発表し始めています。

ちなみに、電気自動車はどうなのか、というと、この表にあるとおりですね、まったく変わっていません。

そもそも旧税制でも適用税率は5%でかつCessも電気自動車は対象外になっていました。新税制でも引き続き一律5%となります。当初は高級EVについては高い税率が適用される可能性も示唆されていたんですけど、結果的にすべてのEV車が一律で5%に統一される形になったわけですね。アメリカの大手EVメーカー・テスラもつい最近インド国内でのショールームをオープンしたばかりですけど、インド政府としてはこのEVをより普及させていきたいという政策の方向性がこういった税制改革を見ていてもよくわかりますよね。

その他、ビジネスにとって重要な変更点

最後に、今回のGST評議会で提案された税率以外の変更点の中でも、インド国内で事業展開されている企業様にとって重要な変更点を大きく3つに区分してご紹介しておきたいと思います。

仕⼊税額控除(ITC)の取り扱い

1つ目は、仕⼊税額控除(ITC)の取り扱いですね。

たとえば、今回のGST税制改正によって免税対象となった品目については、これまで仕入れた際に支払っていた控除対象となるGST(つまり仕入税額控除)については2025年9月22日以降に還付申請しなければならないこととなります。あと、サプライチェーン上で税率逆転構造になっている品目が結構あったりするんですけど、たとえば、アパレル産業の原材料であるポリエステル、ナイロンなどの合成繊維とか糸は12%〜18%のGSTがかかっているんですけど、完成品で2500ルピー以下の服の販売時には5%のGSTしかかかっていないんですよね。つまり、アパレルメーカーは支払GSTがどんどん累積していってしまうという税率逆転構造になっているケースがあるわけです。

こういう構造をInverted Duty Structure(IDS構造)といってですね、税率逆転構造に起因する還付請求については輸出に対する還付と同様に、還付請求額の90%を暫定的に承認する制度が2025年11月から導入されることになります。これはこういった逆転税率構造に悩まされてきた企業にとってキャッシュフローの改善につながりますよね。

GST登録手続きの簡素化

2つ目は、GST登録手続きの簡素化です。

これは、毎月の課税売上にかかる仮受GSTが自己申告ベースで25万ルピー以下と見込まれる小規模事業者を対象としたGST登録スキームなんですけど、申請してからなんと3営業日以内に自動で登録が承認されるといった提案がされていてですね、これも結構インパクト大きいですね。この簡素化によって従来の新規GST登録者の約96%が恩恵を受けると言われていてですね、これも2025年11月1日から運用開始される予定になっています。インド現地法人を立ち上げた際にGST登録に結構時間がかかってしまうケースも散見されるので従来よりもスムーズに事業を立ち上げることができる可能性が期待されます。

あと、詳細はまだ協議中ということのようですけど、eコマース事業者を通じてサービスや商品の販売をおこなう小規模事業者向けに、GST登録要件が簡素化される可能性があります。つまり、これまでは複数州にわたってオンラインでEC販売を行っているような場合には州ごとにGST登録が求められていたんですけど、これがどうやら簡素化される、という話のようです。日本からの越境ECによるインド市場参入を検討している企業様にとっても朗報ですね。

サービスの供給場所に関する例外規定の削除

最後3つ目は、サービスの供給場所に関する例外規定の削除です。日本でも消費税の輸出免税という考え方があると思うんですけど、インドでもたとえばインド子会社から日本本社へのサービスの輸出については原則、サービスの供給場所をその受益者である日本本社の所在地とみなす、つまりインド国外でサービスが提供されたとしてインドの消費税であるGSTは課税されないんですね。

ただ、一部例外規定があってですね、たとえば、インド国内の代理店とかインド子会社である販売会社が、日本本社の代わりに販売活動を支援しているようなケースでは、インドGST法上の「Intermediary Service(いわゆる仲介サービス)」に該当してですね、サービスが提供された場所をサービスの提供者の所在地とする、つまりインド国内でサービスの提供が行われたものとみなす、という例外規定がありました。

なので、こういった仲介サービスに対する販売手数料とかコミッションに対して18%のGSTが課税されていたわけです。この仲介サービスに関するIGST法上の例外規定がなんと今回のGST評議会で削除されることが提案されて、GSTが課税されなくなる可能性があります。これは結構大きな変更点で、インド国内に販売拠点を設立して、本社やグループ会社から販売手数料としてコミッションを得る、というビジネスモデルを想定していた企業様にとっては朗報だと思います。

さて、皆さん、いかがでしたでしょうか?今回は、インドのGST税制に導入される大改革「GST 2.0」について、その新しい税率構造、値下がりする品目・サービス、値上がりする品目・サービス、そしてビジネスに重要なその他の変更点について解説いたしました。今回の税制改正に限らず、最新の税制で特に重要なものなどがあれば都度今回のように動画にしていきますので、引き続き情報をキャッチアップしていきたいという人はぜひぜひチャンネル登録をお願いいたします。