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インド駐在 家族帯同ガイド|学校・住居・医療の準備と判断術

インド赴任の辞令が出た瞬間って、ご本人よりもご家族の方が動揺するケース多いですよね。「インド?子どもの学校はどうするの?」「病院は大丈夫なの?」「水も飲めないんでしょ?」と家族会議が緊急招集されるわけです。正直、アメリカやシンガポールへの赴任と比べると、「おめでとう」どころか「大丈夫?」と言われてしまう国ではありますよね。

でも、実は家族帯同でインドに来て「意外に楽しく暮らせています」「子どもがたくましくなりました」「むしろインドの方が居心地いいかも」という声もけっこう多いです。もちろん、何も知らずに来ると相当苦労するんですけど、押さえるべきポイントを先に知っていれば、インドの家族帯同は十分成立しますし、むしろ振れ幅の大きい苦楽をネタに家族の絆が強くなるという側面もあります。実際、グルガオンやバンガロールには子連れの日本人家庭がたくさん暮らしていますし、私自身も長くインドで生活してきて、「事前情報の量」が帯同生活の満足度をほぼ決めると実感しています。

本記事では、帯同判断で必ず問題になる「学校・住居・医療」の3点セットを中心に、インド駐在の家族帯同のリアルを解説します。

インド駐在員の子どもが通う学校——全土に2校しかない日本人学校の実態

帯同を考えるうえで最初にぶつかる壁が、子どもの学校です。結論から述べると、インドには日本人学校がデリーとムンバイの2校しかありません。日本の何倍もある広大な国土に、たった2校しかありません。

例えば、タイのバンコクには数千人規模といわれる世界最大級の日本人学校があり、シンガポールにも小学部だけで複数キャンパスがあります。駐在先として人気のアジア各国では「日本人学校に入れる」のがデフォルトの選択肢です。ところが、インドでは日本人学校という選択肢がある都市が、デリーとムンバイのみです。ベンガルールもチェンナイも日本人学校はゼロです。

ニューデリー・ムンバイ各校の規模と学費

ニューデリー日本人学校は幼稚部から中学部までが同じ敷地に入っており、生徒数は250名程度といわれています。ムンバイ日本人学校にいたっては、小中合わせて30名前後という非常にアットホームな規模です。

規模が小さいことは悪いことばかりではありません。先生の目が一人ひとりに行き届きやすい側面がありますし、「全校児童が全員顔見知り」という環境は、むしろ日本の大規模校ではなかなか得られない体験でもあります。

南インドの現実解——補習授業校の仕組みと限界

「赴任先は南インドだから日本人学校がない。どうしよう」というご家庭のために補足しておくと、日本人学校がない都市にも「補習授業校」という仕組みがあります。

例えば、チェンナイは特徴的で、世界的にも珍しい「準全日制」の補習授業校があります。文部科学省から校長先生が派遣されており、土曜日だけでなく平日も夕方に日本語の授業が開催されています。そのため、普段はインターナショナルスクールに通いながら、平日の放課後に日本語教育を継続できます。子どもたちやその送り迎えをする保護者は大変ですが、海外の補習授業校としてはかなり手厚い部類です。

一方、ベンガルールは通常の補習授業校なので、日本語の授業は土曜日の午前中のみとなっています。補習授業校は基本的に日本人駐在員の保護者によるボランティア運営で成り立っている仕組みです。

チェンナイの準全日制であっても、日本の学校と同等の教育がフルで受けられるわけではありません。あくまで「日本語と日本のカリキュラムへの接点を保つ場」と捉えて、日本の通信教育やオンラインの国語指導を併用するご家庭も多いと聞きます。

完璧を目指そうとすると、親も子も疲れてしまうため、「帰国後にキャッチアップできる最低ライン」を家庭ごとに決めておきつつ、南インドでしか得られない貴重な体験ができるようサポートしていくのが現実的な落としどころです。

学費の目安として、例えばニューデリー日本人学校は月額25,000ルピー(日本円で約4.5万円)で、転入時には入学金として20万ルピー(約36万円)かかります。スクールバスはグルガオン方面の主要マンションからも運行されているため、グルガオン在住でデリーの日本人学校に通わせるという選択も物理的には可能です。ただし、交通事情によっては片道1時間以上かかることもあるため、住居選びとセットで考える必要があります。

インターナショナルスクールの選び方——チェンナイ・ベンガルールの現実

日本人学校がない都市に赴任する家庭の答えはシンプルで、インターナショナルスクール一択です。グルガオン在住のご家庭はスクールバスでデリーの日本人学校に通えるため、この問題が切実になるのは南インドのチェンナイとベンガルールです。

都市別の学校環境——チェンナイとベンガルールの違い

チェンナイは日本人駐在家庭の間ではアメリカンスクールが主流です。選択肢が絞られているぶん、日本人家庭のコミュニティも学校に集まりやすく情報交換はしやすい側面もありますが、アメリカンスクールは学費がかなり高いため、会社の予算に合わない場合には子どもに合うインター校が見つかるかどうかという点で課題があります。

一方のベンガルールは、選択肢がより幅広く、学校の所在も点在しています。カナディアンインターナショナルスクール、ストーンヒル、TISB(The International School Bangalore)、補習授業校があるTrio World Academyなど、日本人のご家庭にとって候補となり得る学校は複数あります。カリキュラムもIB、ケンブリッジ式とさまざまで、親の教育方針によって正解が変わるところです。

ただし、ベンガルールの悩ましいところは距離で、こうした学校の多くは市の郊外にあるため、市内の居住エリアから車で1時間前後かかるケースが多くあります。ベンガルールの渋滞はかなり深刻なため、「学校選び=毎日の通学時間との戦い」になります。住居選びとセットで、実際に通学で混む時間帯にどれくらいかかるか確認しておくことをおすすめします。

学費の目安もお伝えしておくと、インター校の学費はかなりばらつきがあり、年間50万ルピーほどから、300万ルピー(日本円で約540万円)を超えるケースもあります。会社によって子女養育費をどこまで負担するかという予算の問題がありますし、ベンガルールでは補習授業校に通う子どもたちが150人近くになってきており、バンガロールにも日本人学校が必要ではないかという議論も起こっています。日本人学校ができると日本企業にとっての進出候補先としてより注目を集めますし、企業側にとってもコストが下がるというメリットがあります。

ただし、親御さんの立場では、日本人学校がないからこそインター校の費用を全額会社が負担してくれているという実態もあるため、現状を望む声もあります。せっかくインドに来たのだから英語の環境で学ばせてあげたいと考えるのも自然なことで、インド駐在の隠れた福利厚生と言えるかもしれません。

学費の目安と学校見学で確認すべきポイント

人気校は学年によって空きがない場合もありますし、入学手続きに時間がかかるケースもあります。赴任が決まったらできるだけ早く、可能なら下見の段階で学校見学を申し込むのが鉄則です。現地には日本語で学校見学から入学手続きまでサポートしてくれるサービスもあるため、活用することも一つの方法です。学校見学で「見ておいてよかった」という声が多いポイントは以下の通りです。

  • 教室のエアコンと空気清浄機の設置状況(デリーの夏と冬の大気汚染を考えると、快適さの問題ではなく健康の問題です)
  • 外国人の生徒の在籍割合(インド人が9割以上の学校だと行事や保護者コミュニティの雰囲気もインド式になるため、事前にイメージしておくことが重要です)
  • 給食や食堂の衛生管理(遠慮せずに見せてもらいましょう。学校側の反応を見るだけでも管理体制のレベル感がわかります)

お子さんが小さいうちは英語環境への適応が早いですが、小学校高学年以降だと本人の負担が大きくなるケースもあります。「英語漬けで最初の半年は大変だったけど、1年経ったら現地の友達と普通に遊んでいた」という声もあれば、日本の受験を見据えて単身赴任を選んだご家庭もあります。ここはお子さんの年齢と性格次第なので、家族でじっくり話し合うべきポイントです。

インド駐在員の住居は東京並みの家賃——理由と人気エリアの相場

「インドって物価安いんでしょ?家賃はどれくらい安いの?」という声が聞こえてきそうです。ところが、駐在員の住居に関しては、これが完全な誤解です。日本人駐在員が住むレベルの物件は、東京と同レベルか、場合によっては東京より高いケースも散見されます。

なお、インド駐在員のリアルな本音とインドの物価の実態については、こちらの記事もあわせてご参照ください。

人気エリアの家賃相場と居住環境

駐在員はインドの「インド人社会」に住むのではなく、インドの中にある「外国人・富裕層社会」に住むことになるからです。停電時のバックアップ電源、浄水設備、24時間のセキュリティ——こういった設備が揃った物件は限られており、そこに世界中の駐在員と現地の富裕層が集中します。需要と供給の関係で、家賃はどんどん上がります。具体的な相場として、日本人に人気のエリア——デリーならヴァサント・ヴィハール、グルガオンならゴルフコースロード沿い——では、2〜3LDKのマンションが月15万〜30万ルピー(日本円で約27万〜54万円)ほどします。

内見で確認すべき「インフラの裏側」チェックリスト

物件の内見時のチェックポイントは、日本とはまったく異なります。

きれいな大理石張りの物件に「いいじゃん」と契約したら、住み始めた初日に停電してエレベーターが止まり、水も出ない、退去しようとしたらセキュリティデポジットを返してくれない——インドではこれが普通に起こり得ます。新築よりも十分に利用実績のある物件の方がよいという声もあるほどです。

見るべきは築年数でも内装の豪華さでもなく、以前どういう人が住んでいたか、オーナーの人柄はどうか、バックアップ発電機が建物に付いているか、貯水タンクの容量は十分か、浄水器は設置済みか、という「インフラの裏側」を確認する作業が中心になります。日本では「この物件、発電機ってありますか?」などという質問はしませんが、インドでは必須の確認事項です。

契約面でも、備え付けの家具・備品リストやセキュリティデポジットの返還条件、修繕の負担区分などで揉めるケースが多いため、契約書は必ず専門家か経験者にチェックしてもらうことをおすすめします。

だからこそ、住居選びは「学校とセット」で考えるのが鉄則です。子どもの学校を先に決めて、スクールバスのルートと通勤動線の両方が成立するエリアで物件を探す——この順番を逆にすると、毎日の送り迎えで家族が心身を消耗する生活になってしまうため、生活の基盤づくりには十分注意が必要です。

家族帯同の医療・食・安全——「もしも」に備える準備

家族帯同で一番不安なのが医療です。特に小さいお子さんがいるご家庭では「熱を出したらどうするの?」が最大の心配事です。インドの公立病院の環境は日本の感覚とはかけ離れていますし、衛生面の不安も否定しません。

しかし一方で、デリーやグルガオン、バンガロールなどの主要都市の私立総合病院は、日本の病院と遜色ない設備を持つところも増えています。

主要都市の日本語対応医療インフラ

例えば、グルガオンならFortis Memorial Research Instituteでは医療通訳サービスの会社が日本語ヘルプデスクを設置しており、日本人医師による外来診療が行われていることもあります。デリー側ではMax系列の総合病院に外国人向け窓口があり、小児・産科専門のRainbow Children’s Hospitalにも日本語ヘルプデスクがあります。

ベンガルールでは日本人医師は常駐していませんが、Sakra World HospitalやManipal Hospitalなどの主要病院には日本語ヘルプデスクが設置されており、診察の予約から医療通訳、保険のキャッシュレス対応までサポートしてくれます。「英語で症状を説明できるか不安」というご家族でも、いざというときに医療にたどり着ける体制は整っています。

すなわち、「日本語でかかれる・サポートしてもらえる医療インフラ」は、デリー・グルガオン圏だけでなくベンガルールやチェンナイも含めて、かなり整ってきていると言えます。

赴任前に備えておく3つの医療準備

家族帯同の医療で押さえるべきポイントは3つあります。

  • 海外旅行保険や駐在員保険のキャッシュレス提携病院を赴任前に確認しておくこと
  • かかりつけにする病院を「元気なうちに」一度見学しておくこと
  • 常備薬と母子手帳・お薬手帳の英訳を準備しておくこと

この3つをやっておくだけで、いざというときの安心感がまったく違います。

食と水については、基本ルールはシンプルで、「水道水は飲まない、生ものは避ける、火の通ったものを食べる」——これは外務省の医療情報でも明記されている基本です。

インドでお腹を壊さない具体的な対策については、こちらの記事もあわせてご参照ください。慣れてくると感覚が緩みがちですが、お子さんの歯磨きの水まで気を配っておくのが無難です。雨季の後はデング熱をはじめとした蚊が媒介する感染症のシーズンでもあるため、虫除けや網戸の管理、夕方の外遊びの時間帯には特に注意が必要です。デング熱には特効薬もワクチンもないため、「蚊に刺されないようにする」ことがほぼ唯一の対策です。

帯同か単身か——後悔しない判断のための3つの軸

帯同すべきか、単身赴任にすべきか——これが最も重い問いです。

正解は家庭ごとに異なりますが、判断の軸になるポイントを3つに整理します。

  • 赴任地に「帯同インフラ」があるかどうか。同じインドでも、デリー・グルガオンやバンガロールのように日本人コミュニティ・学校・日本語対応医療が揃っている都市と、日本人が数百人しかいない地方都市では、帯同の難易度がまったく異なります。「その都市に日本人が何人くらい暮らしているのか」「子連れの帯同家族は何世帯いるのか」などをまず把握することが出発点です。
  • お子さんの年齢とタイミング。未就学児〜小学校低学年は新しい環境への適応が早く、英語習得というリターンも大きいです。一方で、中学受験や高校受験が視野に入る年齢だと、教育の継続性の問題が生じます。「何年で帰任予定か」と「子どもの学年」の両軸から検討するケースが多くなります。
  • 配偶者の生活設計。帯同で最も負荷がかかるのは、実はお子さんよりも配偶者のほうです。日本の仕事を辞めることのキャリアへの影響に加えて、インド現地での新生活の立ち上げ、そして孤独感——ここを丁寧にケアできるかどうかが駐在生活を左右します。逆に、インド駐在のメリットを見出し、現地の日本人コミュニティや配偶者自身の居場所を先に設計できたご家庭は、帯同生活の満足度がかなり高い傾向にあります。

この3つを検討した結果、「まず単身で行って、半年後に呼び寄せる」という段階的な移住を選択するご家庭も多いです。

実際に住居や学校を自分の目で確かめてから家族を呼べるため、きわめて合理的な選択肢です。会社側の立場でも、駐在員の家族の定着は本人の仕事のパフォーマンスに直結するため、下見渡航の費用や学費補助を赴任パッケージに組み込んでおくことは、人事制度としてぜんぜん高い買い物ではありません。

「家族がインドを好きになってくれるかどうか」——これが駐在の成否を分ける最大の変数です。「そうは言ってもインドを好きになれる気がしない」という方にこそ参照いただきたい記事が2本あります。

▶インド駐在員が語る「実はインドがむちゃくちゃ良いところ」については、こちらの記事をご参照ください。

▶インドの「下請け文化」——どんどん人に任せて自分は楽をする、という日本と真逆の生活哲学については、こちらの記事をご参照ください。

家事も育児も運転もどんどん人に任せるのが当たり前のインド生活は、慣れると日本より楽だったという帯同家族の声が非常に多いため、赴任前の家族会議の材料にしていただければと思います。

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