Vol.0015 インド人従業員を増員するIBM、他の外資系企業にとってもインドはまだ魅力的な市場だろうか?
IBMが重視するインドのIT人材
インド大手経済メディアのThe Economic Times社の2020年6 月19日付報道によると、IBMは直近1週間のうちにインド国内での求人募集を新たに500件追加したようです。同社は国別の従業員数を明らかにはしていませんが、世界に35万人いる従業員のうち3分の1はインド国内にいると推測されており、今後もインドを主力としていくようです。
DeepDive Equity Research(ディープダイブ証券リサーチ)のリサーチ部門トップであるRod Bourgeois氏は、「アメリカ、ヨーロッパ内で十分なIT人材を見つけることが厳しくなっている今、IBMを含むその他のIT企業は引き続きインドの豊富なIT人材を頼らざるを得ないだろう。IBMの今回のインド人の採用は人件費削減も考慮してのことだろう。」と述べています。
IBMは2012年から収益が下降傾向にあり、クラウドとコグニティブコンピューティングに焦点を当てたサービス内容に事業を再編成してきています。昨年7月にはRed Hat(レッドハット)を買収したことで世界1位のハイブリッド・クラウド・プロバイダー(※)となりました。インドでの採用に注力している一方で、同社が現在焦点を当てている分野での専門性が低く、新要件に適応できないと判断した従業員の解雇が進んでいるようです。
コロナ禍のWork From Homeで活路を見出すIBM
IBMはバンガロール、ハイデラバード、ノイダ、グルガオン、コルカタに構える約93万平米のオフィスのうち約半分の賃貸契約を更新しない意向を示しており、会社出勤せざるを得ない約25%の従業員以外にはWork From Home(以下WFHという)を認める形で固定費削減を進めています。
インドでは約2ヶ月もの間ロックダウンで外出禁止が強制されたため、WFHをせざるを得ない状況でしたが、同社はその間でも以前と変わらないサービスを提供できていました。他の国でもWFHを勧め、オフィスの賃貸契約を解消し、人件費の安いインドで採用を積極的に行っていくことは近年業績が伸び悩んでいる同社にとっては賢明な判断だと思います。
また、新型コロナウイルスの影響によって失業率が伸びていることに加え、今年4月に卒業したばかりのインド人新社会人の多くも就職難民となっているので、他の外資系企業でもこのような動きが進み、インドに活気が戻ってくることを期待しています。
※ハイブリッド・クラウド・プロバイダーとは、さまざまなプラットフォーム間を連携するオンプレミスのインフラやプライベートクラウド、パブリッククラウドサービスなどで構成されているコンピューティングやストレージ、各種サービスを総合的に提供できるプロバイダーのこと。