Vol.0059 緊張感高まる印中間摩擦 インド政府は中国の通信機器を使用禁止に
国家安全保障を理由に、政府は中国の通信機器を禁止するように設定
12月17日付のタイムズ・オブ・インディア紙によると、16日、インド政府は初めて、通信機器や情報源の精査を義務付けるために、通信部門の国家安全保障指令を発行することを決定したとのことです。中国の機器ベンダーに対する対抗と見られます。
内閣安全保障委員会(CCS)によって最終決定された今回の措置によって、信頼できる情報源や製品のリストを政府に提出することになり、通信会社のライセンス基準も改正されることになります。
国家安全保障指令
- 国家サイバーセキュリティの担当は機器の信頼できる情報源のリストを作成する。
- インドの信頼できる提供元からの機器の使用を増やすための措置を講じる。
- 新方針は180日後に実施され、免許基準を改正する。
政府は今回の決定で影響を受ける国の特定を控えましたが、明らかに中国への対抗を狙ったものであり、華為技術(Huawei)や中興通訊(ZTE)などの企業は、精査の強化や、あるいは拒否などの影響を受ける可能性があります。
Huawei はインドの主要顧客として Airtel、Vodafone-Idea、その他の企業顧客を有し、またZTE は BSNL やその他のインド国有企業への主要なサプライヤーでもあります。すでに展開されている機器には影響しませんが、今後はすべての通信機器、特に5Gサービスに使用されている機器は厳しく監視されることになります。
これに対し、通信・IT相のラヴィ・シャンカール・プラサード氏は「『信頼できる製品 』を指定する方法は、指定された機関である国家サイバーセキュリティの担当が考案する。通信サービスプロバイダ(携帯電話事業者)は、指定された信頼できる製品を新たに取り扱う必要がある」と述べ、この政策は国家安全保障の必要性を念頭に置いたものであると付け加えました。
オーストラリア・米国・英国などの国では、特に5G分野でのアクセスを禁止されており、中国の機器ベンダーはすでに世界的に監視下に置かれています。機器ベンダー以外にも、HuaweiやZTEから製品を調達している一部の通信事業者も神経質になっており、特に政府が国営BSNLやMTNLのために中国製品を制限するようになってからは、その傾向はより強まっています。
携帯電話事業者の中には、インドと中国間の衝突がこれ以上激化すると、中国のプロバイダーからのネットワークサポートやアップグレードが停止する可能性があると懸念している関係者もいます。一方でノキアやエリクソン、アメリカのシスコ、韓国のサムスンなどにとっては、特に5Gサービスやインフラの展開に有利になるかもしれません。
通信機器以外にも強まる中国製品への規制
電子機器に限らず、ここ数ヶ月、インドは国家安全保障を理由に、通信から電力に至るまでの分野で使用される機器の中国からの輸入を禁止しています。
一部の禁止は、スパイウェアや悪意のあるソフトウェア(マルウェア)が輸入された機器に埋め込まれていることを懸念したことに起因しています。また、TikTok、PubG、UC Browser、WeChat、CamScannerなどの中国製アプリに対する措置も広く行われています。
昨年も政府はテロやデマの拡散のために盗難された携帯電話を使用されることを理由に、国際携帯機器識別番号(IMEI)のない中国製携帯電話の輸入を禁止しています。これも携帯電話のIMEI番号は、すべての携帯電話に固有に与えられた15桁の番号で、盗難された携帯電話の使用を防ぎ、 使用者の追跡を可能とします。
ラダック国境での緊張が高まる中、印中間の摩擦は通信・テック業界にも大きな影響を与えています。この二国の情勢は国際社会への影響も大きく、引き続き動向を見守る必要がありそうです。