NEWS LETTER VOL.20 取締役会、定時株主総会のビデオ会議での開催について
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取締役会、定時株主総会のビデオ会議での開催について
(文責:安本理恵、Rianna Lobo / Global Japan AAP Consulting Private Limited)
改めて言うまでもありませんが、コロナ禍は世界中の企業の会議のあり方を変えました。
以前はインド国外在住の取締役はインドに出張して取締役会に出席することができましたが、世界的なコロナ禍の影響で、遠距離を移動して取締役会に出席することが難しくなりました。
更に、今でも、また国内に在住していたとしても移動が躊躇される状況は続いています。
インドの会社法(The Indian Companies Act, 2013)および会社法規則(the Companies (Meetings of Board and its Power) Rules, 2014)では、一定の条件の下、取締役がビデオ会議またはその他の視聴覚手段(video conferencing or other audiovisual means)を介して会議に出席することを認めていました。
つまり、同規則第8条では、
- 年次財務諸表の承認
- 取締役会報告書の承認
- 合併や統合に関する事項の承認
などに関連する事項は、ビデオ会議での決議が認められていませんでしたが、2021年6月15日、MCAは第8条を省略することを決定しました。
つまり、会社は年次決算承認を含む全ての決議において、取締役会、定時株主総会をビデオ会議で開催することが認められることとなりました。
ここでは、ビデオ会議による取締役会・株主総会の開催要件について詳しくご紹介します。
ビデオ会議による取締役会・株主総会の開催要件
1.ビデオ会議開催前の注意点
取締役は、会議が日時とともに録画保管され、取締役を容易に識別できる場合に限り、ビデオ会議を介して取締役会に参加することができます。
会議の招集通知では、ビデオ会議で会議に参加する選択肢があることを参加者(取締役)に通知する必要があります。
2.会議開始時の注意点
議長は会議の開始時に点呼を行い、ビデオ会議で参加している各取締役は以下の事項を確認します。
- 氏名
- 所在地
- 議題および会議に関連するすべての資料を受け取ったこと
- 当該取締役だけが会議に出席している、または会議にアクセスできることを確認していること
取締役会の開始から終了までの間、第三者のビデオ会議へのアクセスは認められません。
取締役会の許可なく第三者が物理的またはビデオ会議で取締役が出席している場所に立ち入ることができないように配慮する必要があります。
3.議長(Chairperson)および会社秘書役の責任
議長および(常勤)会社秘書役は、以下の責任を負います。
- 十分なセキュリティへの配慮および本人確認手続きを実施することにより、会議の有効性を保護すること
- 取締役およびその他参加権限のある出席者全員に対し、適切にビデオ会議が利用できるようにしておくこと
- 会議を録画し、会議の議事録を作成すること
- 会社の記録の一部として当該会議の録画保管をすること
- 会議中、すべての参加者が他の参加者をはっきりと聞き、見ることができるようにすること
4.参加者
すべての参加者は、議題について発言する前に、自分の名前を名乗ります。
万が一、ビデオ会議における発言が中断されたり、音声が不明瞭であった場合には、議長または会社秘書役がその参加者に再度発言するよう求めなければなりません。
議題が投票に付された場合、議長は点呼を行います。各参加者は投票時に自身の名前を名乗り、議長は投票内容を記録します。
また、各議題の審議の最後に、議長は当該議題に関する決定事項の概要と、多数決による決定に反対の投票をした取締役がいる場合にはその氏名を発表します。
5.会議会場
ビデオ会議で行われる会議については、会議の会場は招集通知に記載された会場とみなされ、その場所で会議が行われたものとみなされます。
会社法により取締役会に必要な書類は、会議会場で提出・回覧されたものとし、取締役の署名が必要な場合、ビデオ会議で参加した取締役が同意し、会議の議事録に記録されている場合には、同書類はビデオ会議で参加した取締役によって署名されたものとみなされます。
6.会議の議事録
議事録ドラフトは、取締役会の決定に従って、会議の終了から15日以内に、書面またはEメール等ですべての取締役に配布されなければなりません。議事録ドラフトは、最終的な確認がされるまで会社で保管します。
議事録には、ビデオ会議で出席した取締役の名前を明記する必要があります。
会議に出席したすべての取締役は、議事録ドラフトを受領してから7日(または取締役会が決定した合理的な期間)以内に、議事録ドラフトの正確性について書面で確認またはコメントを提出しなければならず、これを怠った場合には承認されたものとみなされます。
確定した議事録は議事録に記載し、議長が署名します。
(当社により作成)
コロナ禍におけるその他緩和策および会社法改正
以下に、コロナ禍において企業省や登記局より打ち出された緩和策と、会社法改正に至るまでの経緯をご紹介します。
(1)年次決算承認における緩和策
会社法規則(the Companies (Meeting of Boards and its Power) Rules, 2014)の第8条により、年次財務諸表の承認などに関連する事項はビデオ会議での決議が認められておらず、そのような事項を決議するための取締役会や定時株主総会を開催するためには物理的に対面での会議を開催する必要がありました。
そこで、コロナ禍において、2020年3月19日、ビデオ会議で年次財務諸表承認等の取締役会決議を行うことができるよう、2020年12月末までという期限つきで緩和策が出されました。(その後2021年6月まで期限が延長されました。)
また、MCAは2020年5月5日付通達(circular no. 20/2020)を発行し、以下のような一定の追加要件・条件のもと、臨時株主総会開催要件の緩和を定時株主総会にも適用しました。
- 定時株主総会をビデオ会議で開催する場合、会社は株主の75%の承認を必要とする。
- 財務諸表、取締役会報告書、監査報告書およびその他の関連文書のコピーを会員にEメールで送信すること。
- 配当金支払いがある場合、会社は、株主が電子決済サービスまたはその他の方法で、配当金を直接銀行口座で受け取ることを許可しなければならない。会社が株主の銀行口座情報を持っていない場合、会社はワラント(株式買取権)や小切手を郵便で送付しなければならない。
(2)株主総会開催における緩和策
インド企業省(MCA:Ministry of Corporate Affairs)は、2020年4月8日付通達(circular no. 14/2020)と2020年4月13日付通達(circular No.17/2020)を発行し、企業がビデオ会議で臨時株主総会(EGM: Extraordinary General Meeting)を開催する方法についてのガイダンスが示されています。
このガイダンスには、以下のような情報が含まれています。
- 株主へのすべての通知は、Eメールで送信し、会社のウェブサイトがある場合はウェブサイトに掲示すること。会社が株主のEメールアドレスを所持していない場合は、会員に連絡してEメールアドレスを取得しなければならない。
- 開催通知には、株主がビデオ会議で会議にアクセスして参加する方法についての明確な案内文を記載する必要があります。また、会議前または会議中に技術的なサポートを必要とする株主のために会社がヘルプラインの電話番号を提供することが求められます。
- 会社は、投票が必要な場合に会員が投票内容を送信するために使用できる専用のEメールアドレスを作成する必要があります。機密保持のため、このEメールアドレスは会社が常に厳重に管理するものとし、投票の目的にのみ使用できるものとしなければなりません。
- ビデオ会議の手段として、出席者が同時に質問ができるように、または事前に質問を会社に提出する機会が与えられるように、双方向でコミュニケーションが取れるビデオ会議またはWebexの使用が認められています。Zoom、Skype、Teams等を使っても構いません。ビデオ会議は、先着順で最大500人が会議に参加できるようにしなければなりません(ただし、2%以上の株式を保有する株主、取締役、主要管理職等は何れにせよ出席する権利があるため適用しません)。
- 参加者には、会議の15分前にアクセスできるようにしなければなりません。
- 個人の株主はビデオ会議での参加へは代理人を立てることが認められていませんが、企業等の非個人株主は投票のために代理人を任命することができます。
- 投票は電子投票(e-voting)で行うことができます。投票はどのような電子投票システムでも行うことができますが、投票は会議中にのみ行うことができ、会議前に行うことはできません。さらに、株主は、上記3に記載された会社の指定のEメールアドレスにEメールを送信することにより、質問項目に対する回答を伝えることができます。
- 株主総会で可決されたすべての決議は、60日以内に会社登記局(ROC: Registrar of Companies)に提出されなければならない。
執筆者紹介About the writter
2014年より北インドグルガオン拠点の現地日系企業で法務や総務、購買等を中心とした管理業務を経験後、インドの法務および労務分野の専門性を深めるべく2018年に当社に参画し、南インドチェンナイへ移住。現在は会社法を中心とした企業法務や、労働法に基づく人事労務関連アドバイス、インドの市場調査業務を担当。2023年3月に退職。
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