Vol.0131 Web3.0時代の決済をスムーズにするスタートアップ「Onmeta」とは?
インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2022年8月18日付けの報道で、Web3.0加盟店の決済ゲートウェイをサポートしている『Onmeta社』を取り上げています。
そもそもWeb3.0とは?
Web3.0は、「分散型インターネット」と称される次世代のインターネットを指します。
これまでのインターネットでは、GAFAM(※1)と呼ばれる巨大企業などが個人情報や利益を独占していました。最近よく耳にするようになったWeb3.0は、ブロックチェーンをはじめとする技術を利用し、情報を分散管理することで、巨大企業による独占からの脱却を目指そうとしています。
Web1.0の時代から遡ってみてみましょう。
Web1.0は、インターネットが普及しだした1990年代のWebを指しています。言語もHTMLがメインで、回線の速度も遅く、テキストが主体となっていました。コミュニケーションは一方通行で、ユーザーのインターネットの使用目的は情報収集のみでした。「Google」「Yahoo!」「MSNサーチ」など発信側の数も少なく、個人のホームページを持っている人も限られていました。
2000年代の半ば頃から始まったと言われているWeb2.0の時代の特徴としては、インターネットの通信速度が高速になり、容量の上限も大きく、相互コミュニケーションが可能となったことです。Web1.0時代の一方通行のコミュニケーションとは異なり、多くのユーザーが自分から発信、ユーザー同士の相互コミュニケーションが可能となりました。
「Youtube」や「Twitter」など、我々が今使用しているサービスのほとんどはWeb2.0に分類されます。
不換紙幣と暗号通貨の交換を可能にするOnmeta
バンガロールに拠点を置くOnmeta社は、Web3.0加盟店の決済ゲートウェイをサポートしており、消費者が不換紙幣(政府発行の通貨)を暗号通貨に交換し、その暗号通貨でNFT(※2 Non-Fungible Token)資産を購入できるよう支援しています。
例えば、ゴアで開催されるWeb3.0カンファレンスに参加したいが、オンラインでチケットを購入するには暗号通貨を使用するしかないとします。暗号通貨を持っていなくても心配はいりません。Onmetaを利用すればデビットカードやUPIを使って暗号通貨を購入し、カンファレンスに参加することができます。
Onmetaの創業者であるBharat. T氏とKrishna Teja氏は、以前、OlaやRapidoといったWeb2.0企業の決済領域を担当していました。同僚から友人になった2人は、決済領域での専門知識をWeb3.0の領域で生かしたいと考えており、この思いが、2022年にOnmetaを設立することにつながりました。
Onmetaの仕組み
Krishna氏によると、Onmetaの体験は、Web2.0空間における決済ソリューションの仕組みに似ています。「Eコマースサイトでは、ユーザーが ”PayPalで購入” をクリックすると、ウィジェットが開き、そこでカード情報を入力し支払いを行います」と例を挙げます。
現在、FlipkartやAmazonなどのECサイトを運営しているWeb2.0企業は、Mobikwik(※3)やRazorPay(※4)などの決済ソリューションをサイトに統合し、取引を行っています。同様に、Web3.0企業も、ユーザーが従来のお金を暗号通貨に変換し、NFTを購入できるような決済ソリューションを必要としています。
しかし、中央集権的な暗号通貨取引所や暗号通貨市場に行くのは、KYC(※5)手続きに悩まされる面倒なプロセスです。したがって、ユーザーにとっては、自律分散型アプリケーションを経由してフィアットマネー(従来のお金)を暗号通貨に交換する方が便利な場合があります。分散型アプリケーションはセキュリティ面で妥協することなく、ユーザーの個人データを第三者取引所に渡すこともありません。
OnmetaはB2Bモデルで実行され、そのプラットフォームはPolygon(※6)のインフラ上に構築されています。同社は間もなく、イーサリアムやBNBチェーンなど他のブロックチェーンにも進出する予定です。
また、同スタートアップは将来的にオフランプサービスを提供する予定です。これは、暗号トークン、NFT、およびその他のデジタル資産を売却して現金を購入するものです。
規制への対応
Krishna氏は、各国の法規制を理解することが大きな課題だと言います。彼は、「Onmetaはすべての国の規制を遵守する」と断言しています。
また、他の懸念点として暗号通貨の不安定性があげられます。スリッページ率(注文時に指定したレートと実際に約定するレートとの差)の管理も困難であると言います。
Onmetaの営業・事業開発責任者であるPrateek Gupta氏は、「市場の弱気な見通しは、スタートアップには影響しない」と言います。「我々はソリューションレイヤーなので関係ない。dApps(分散型アプリケーションのこと)には決済チェックアウトソリューションが必要になる。求められるコンプライアンスや規制のレベルを考えると、市場の状況にもかかわらず、企業は我々のサービスに依存するだろう」と強気の姿勢を見せています。
競合と市場の成長
Web3.0のチケットプラットフォーム「TickEth(※7)」を含む5つの加盟店が、OnmetaをdAppsに統合しています。Prateek氏は、「我々はこれまでに50万ドル以上(約6800万円)の取引を処理し、取引ごとに手数料を徴収している」と語っています。
Krishna氏によると、ほとんどの決済ソリューションは、米ドルやユーロなどの欧米通貨にフォーカスしている中、Onmetaは、発展途上国、特にインドの通貨に注目しているようです。
「発展途上国は規制環境が複雑で、規制を理解し構築するには現地のプレーヤーが必要だ。私たちは、発展途上国市場に焦点を当て、それらを開放し、より大きなWeb3.0のエコシステムの一部となる手助けをしたい」とPrateek氏は言います。
世界的には、Transak(※8)、MoonPay(※9)、Wyre(※10)、Onramper(※11)などの企業が、暗号のオンランプおよびオフランプサービスを提供しています。2021年、暗号サービスを提供する企業は、170億ドル(約2億3000万円)相当のVCマネーを集めました。
Onmetaの今後
Onmetaは、シードラウンドで資金を調達し、事業を拡大しようとしています。
「私たちは、異なる地域や異なるブロックチェーンに拡大したいと考えている。より大きなビジョンは、Web3.0で複数決済を可能にすることである」とKrishna氏は言います。
筆者も個人的にNFTサービスや暗号通貨取引を経験したことがありますが、NFTや暗号通貨の世界は規制が複雑で、頻繁に改定があること、また各国で規制内容が異なります。そのため、本記事の中でPrateek氏が述べているように各企業は費用対効果を考えた時にOnmetaに頼らざるを得ない状況が生まれてくるでしょう。Onmetaは現在はB2Bモデルで運用していますが、近い将来B2Cモデルでの運用を開始してくれることを期待しています。
※1 GAFAM:Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftのこと
※2 NFT:Non-Fungible Token、代替可能なトークン。デジタルデータに資産価値がつき、さまざまな分野で活用されている。
※3 Mobikwik:2009年に設立されたインドの決済サービスプロバイダーであり、携帯電話ベースの決済システムとデジタルウォレットを提供している。(https://www.mobikwik.com/)
※4 RazorPay:インドのオンライン決済プラットフォーム。2020年に米オンライン決済サービス「PayPal」と提携している。(https://razorpay.com/)
※5 KYC:Know Your Customerの略で本人確認を行う手続きを指す。
※6 Polygon:イーサリアムブロックチェーンと互換性を持ったブロックチェーンネットワークを構築や接続をするためのプロトコルおよびフレームワーク
※7 TickEth:チケット販売のプラットフォーム(https://ticketh.io/)
※8 Transak:https://transak.com/
※9 MoonPay:https://www.moonpay.com/
※10 Wyre:https://www.sendwyre.com/
※11 Onramper:https://onramper.com/
Source:
Web3.0とは?:https://www.ecbeing.net/contents/detail/318
Web3.0加盟店の決済ゲートウェイをサポートするOnmeta社:https://yourstory.com/the-decrypting-story/digi-currency-fiat-crypto-onramp-offramp-web3/amp