Vol.0164 ウッタラーカンドの女性たちが松葉で創る新たな生活
PIRUL Handicraftsは、インド北部ウッタラーカンド州の小さな村、ケティカンにあるスタートアップです。この企業は、2021年にヌプール・ポハルカル氏によって設立されました。彼女の目標は、地元の松の葉(ウッタ―ラカンド州の方言で“Pirul”)を利用して手工芸品を作り、地域社会の女性たちに収入を提供することです。
ウッタラーカンド州とヒマチャルプラデーシュ州には松の木が豊富にあり、これらの木から落ちる,樹脂が豊富な針葉は、可燃性が高く環境内での分解も遅いです。これらの特性は、雨水が地面に浸透しにくく、地下水の水位が低下する原因となっています。PIRUL Handicraftsは、これらの松の針をアップサイクルして様々な製品を作り、地域の女性たちに生計を立てるための機会を提供しています。
このプロジェクトは、ヌプール・ポハルカル氏の社会貢献への深い情熱から生まれました。彼女は自身の家族が社会に貢献する様子を見て育ちました。特に父親がマハラシュトラ州の遠隔地で獣医師として働き、地元の村人を動員し、牧畜の訓練を施し、政府からの補助金を得る活動をしていたことに触発されました。ヌプールは、自身も社会開発セクターで働くことを志しウッタラーカンド州のケティカンでの活動を開始しました。
PIRUL Handicraftsは当初、松の葉はゴミだという認識が強く地元の女性たちを説得するのは難しいものでしたが、松の葉で作られた製品を実際に示し、女性たちと個人的なつながりを持とうと努力しました。やがて、このアイデアに若い女性たちが興味を持ち始め、注文が入るようになりました。事業は4人の女性から始まり、現在では100人以上の女性が関わるようになりました。
PIRUL Handicraftsは、植木鉢、イヤリング、配膳トレイ、収納ボックスなど、さまざまな製品を提供しています。これらの製品は、主にインスタグラムや展示会、デリー、ハイデラバード、バンガロール、ムンバイなどの12のオフラインストアを通じて販売されています。
また、地方自治体や企業からも大量注文を受けています。
彼らはこれまでに2万キロ以上の松の廃材をアップサイクルしてきました。
ヌプール・ポハルカルとPIRUL Handicraftsの取り組みは、地域社会における女性の自立支援と、環境に優しいアップサイクル製品の作成を通じて、地元の生態系と経済にポジティブな影響を与えています。
Source:松葉アートの輝き
自然資源を活用しながら、地域社会の女性たちに経済的自立の機会を提供するPIRUL Handicraftsの活動は、持続可能性と女性のエンパワーメントの両方を推進する試みです。
人口が世界一位のインドにおいても若者が雇用機会や教育機会を求めて都市部に移り、農村部では過疎化が進んでいます。ヌプール・ポハルカル氏が活動するウッタラーカンド州ケティカンでも、男性はより良い収入を得るために州外に移住し、農業、牧畜、家事など女性の負担が増える中で、地元の女性にも生計の機会を与える彼女の取り組みはとても価値のあることだと思いました。
(文責:大森太郎)