India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0165 スイートな危機? カカオ高騰が描く、インドクラフトチョコレートの新たな展開

カカオ豆価格の高騰が国際市場で記録的な水準に達し、インドのクラフトチョコレート業界に影響を及ぼしています。
ベンガルールで有名なチョコレートフィロソフィーなどのチョコレートメイカーは、在庫がなくなり次第、商品の価格の上昇を余儀なくされています。一方で、アムルやマース社などの大手企業は、製品のサイズを縮小するか、価格を上げる動きを見せています。

カカオ豆の不作は、主にコートジボワールやガーナといった世界最大のカカオ豆生産国での気候変動による干ばつや異常気象、さらには植物病など複数の要因によって引き起こされています。この影響で、クラフトチョコレートを含む多くのショコラティエは現在、国内の生産者に目を向けています。
カカオは1960年代半ばにイギリスの大手菓子メーカー、キャドバリーによってインドに持ち込まれて以来、ケララ州、タミルナドゥ州、アンドラ・プラデシュ州、カルナータカ州で栽培されています。
たとえば、タミルナドゥ州のレガルプランテーションズは、ヨーロッパのミシュラン星付きレストランにカカオ豆を毎年35トン(収穫量の4分の1)を卸しており、この高品質な豆は国際的な評価を受けています。

大手菓子メーカーが価格高騰の影響を受けて、チョコレートのカカオ含有量を変更することが予想され、インドのクラフトチョコレートメーカーにとっては、大手ブランドから顧客の注意を引き付ける機会ともなります。これにより、これまで低賃金に甘んじてきたインドのカカオ農家も正当な価格を要求できるようになります。彼らは、品質向上に努めることで、高価格帯の市場に適応しようとしています。
この状況は、インドのカカオ豆が特に森林伐採や児童労働の問題がないという点で、国際的な評価も高まっているため、国内外の市場での更なるシェア拡大が期待されます。

Source:インド製クラフトチョコ、高騰カカオをバネに世界へ挑む

 

インドのクラフトチョコレートは、近年注目を集めています。インドでは、カカオ豆の栽培からチョコレートの製造までを一貫して行う“Bean to Bar(豆から板チョコまで)”のクラフトチョコメーカーが増えています。
筆者が住んでいる場所の近くでも、ベンガルールに拠点を置きお土産としても人気のクラフトチョコレートブランドのSMOORがあります。彼らの、添加物や保存料を避け、純粋な製法にこだわったチョコレートは特に若者に人気で、併設されたカフェは連日盛況です。
彼らのように、こだわりを持ったインドのチョコレートブランドが世界的なカカオ豆の不作で、国内外でさらに注目されることに期待したいです。

 

(文責:大森太郎)