India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0174 徹底解明:インドの家庭に欠かせない牛乳の価格上昇

インドの家庭に欠かせない牛乳が、近年価格の上昇を続けており、消費者たちはその背景に疑問を抱いています。

世界の牛乳生産量の26.64%を占めるインドは、乳製品産業の大国であり、農業の複雑さを映し出す存在です。2018-19年には1億8730万トンであった牛乳生産量は、2023-24年には2億3635万トンに達しましたが、それでも価格上昇は止まりません。主要ブランドであるAmulやMother Dairy、Nandiniが1リットルあたり約2ルピーの値上げを発表しました。

牛乳価格の上昇の主な原因は、生産コストの増加です。Amulのマネージングディレクターであるジャイエン・メータ氏は、最近の価格引き上げは、生産コストの増加を補うための必要な措置だと述べています。この意見は、Mother Dairyも同様で、消費者に転嫁される価格上昇は3-4%程度に抑えられており、生産者と消費者の利益のバランスを取ることが強調されています。

 

特に重要なのは、牛の飼料価格の上昇です。2022年以降、飼料となる高品質の穀物、ふすま(小麦の表皮と胚芽)、モラセス(廃糖蜜)の価格が大幅に上昇しました。タミル・ナードゥ農業大学によれば、牛は体重の2-3%の乾物を必要としますが、乾物飼料の不足が深刻です。乾物飼料は家畜コストの70%を占めます。主に不規則なモンスーンと農地の減少が原因で、内陸地域では25%、北東部州や北部のヒマーチャル・プラデーシュ州では90%もの不足に直面しています。

また2022年から2023年にかけて、約100万頭の牛がランピースキン病に感染し、牛乳生産量が大幅に減少しました。このような家畜の健康危機は、供給に直接的かつ深刻な影響を与え、価格上昇を引き起こします。さらに、燃料と包装コストの上昇も生産コストを押し上げ、消費者価格に反映されています。

牛乳は需要に依存する生鮮品であり、人口の増加とともに需要も増え続けます。小麦や米といった貯蔵可能な商品とは異なり、牛乳は保存が効かないため、供給チェーンに常に圧力がかかります。また、地域ごとの消費パターンも価格に影響を与え、消費習慣の変化に応じて価格が調整されます。

牛乳と乳製品の価格上昇は、家計に大きな影響を及ぼします。インドの食生活において重要な役割を果たす牛乳は、その価格上昇が家計の負担となり、消費パターンの変化を引き起こします。

インドでの牛乳価格の上昇は、生産コストの増加、飼料不足、家畜の健康問題、運営コストの上昇、そして牛乳の需要依存性といった複数の要因が絡み合っています。これらの課題に対処しつつ、農家への公正な支援と消費者の負担軽減のバランスを取ることが重要です。

 

Source:牛乳価格の上昇を引き起こす要因

 

周知のとおり、ヒンドゥー教で牛は神聖視されており、インドでは多様な乳製品が日常的に使われています。特にギー(精製バター)やヨーグルト、チーズ(パニール)はとても一般的で、乳製品の価格高騰は、生活に直結した問題です。
また、フードデリバリーサービスの普及や健康意識の高まりにより牛乳の需要も増加しています。
インドの酪農業は多くの課題を抱えていますが、政府の支援や技術革新によってさらなる発展を期待したいです。

 

(文責:大森太郎)