India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0178 テクノロジーで変える果物流通:Fresh From Farmの挑戦

2021年にロヒット・ナグデワニ氏によって設立されたFresh From Farmは、デリーNCR地域の果物小売業者にエンドツーエンドのソリューションを提供するアグリ・フードスタートアップです。
インドでは食糧廃棄が重大な問題となっており、2023年の世界飢餓指数では125か国中111位という低い順位に位置しています。特に果物や野菜の30〜40%が毎年廃棄される状況は深刻です。これには多くの中間業者の存在、冷蔵輸送の欠如、高品質の冷蔵施設の不足、限られた加工能力などが原因となっています。このような問題を解決するために、Fresh From Farmは小売業者の果物調達、取り扱い、選別、配達の全てを管理し、業者が販売に専念できるように支援しています。

ナグデワニ氏は、2010年に自動車業界を担当するジャーナリストとしてキャリアをスタートさせました。業界の洞察を深め、多くのネットワークを築いた後、2013年に自動車アクセサリーのオンライン販売企業「299kmph.in」を立ち上げました2017年には水耕栽培に興味を持ち、エキゾチックなハーブや野菜を育てる「Farming V2」を設立しました。しかし、COVID-19の影響で果物の需要が増えたことを受けて、2021年に「Fresh From Farm」にリブランドし、新鮮な果物の需要に応える形で事業を拡大しました。

 

Fresh From Farmは現在、65人のチームで運営されており、農家から直接果物を調達し、デリーNCRの中央施設で処理し、選別・格付けされた果物を業者に配達しています。業者はアプリを通じて前日の夜に注文し、翌朝7時半から8時の間に受け取ることができます。このモデルにより、業者は卸売市場での早朝の買い付けから解放され、時間とコストを節約できます。同社は、現在は約400〜500の業者にサービスを提供しており、その中には大型・小型の店舗や半常設の露店も含まれます。

 

Fresh From Farmの技術インターフェースは、供給チェーンの効率を向上させ、需要と供給を予測し、廃棄物を最小限に抑えます。インド全土の600の農家から果物を調達し、デリーの約1,400平方メートルの施設で処理しています。このスタートアップは20%のマージンで農家から仕入れ、業者に販売するコミッションベースのモデルで運営されており、過去12か月間で95%のリピート率を達成しています。今後は、チャンディーガル、アグラ、ラクナウ、ジャイプールなどの都市に拡大し、年間経常収益を100億ルピー(約15億円)にすることを目指しています。

 

Source:農家と小売業者をつなぐ!Fresh From Farmのイノベーション

 

創業者のナグデワニ氏が、ジャーナリストとしての経験を生かして、インドの果物供給チェーンの問題点を理解し解決策として、Fresh From Farmを運営している点がとても興味深いです。現場のニーズに答え、農家と小売業者の双方の利益を確保しながら、廃棄物を減らしていく取り組みには感心させられました。今後の成長とともに、インドにおける農業廃棄の割合が少しでも減ることを期待したいです。

 

(文責:大森太郎)