India Weekly Topics

週刊インドトピックス

vol.0183 技術と支援で変える母子健康:FMCHの取り組み

Shruthi Ranganath Iyer氏は、エンジニアとしてのキャリアを経て社会的活動に身を投じ、現在はFoundation for Mother and Child Health(FMCH)の共同創設者兼CEOとして、特に母子の栄養失調の予防に焦点を当てた活動を行っています。
彼女は、2009年にTeach for India Fellowshipに参加したことをきっかけに、社会的な使命を追求するようになりました。その後、教育機関やMentor Me Indiaなどの子供向けにメンタリングプロラムを行う非営利団体での経験を積みました。
そして2019年にはFMCHに参加し、最初は小さな組織として活動していたFMCHを、テクノロジーを活用してジェンダー関連の問題を大規模に解決する組織へと成長させました。

インド政府が2023年に発表したPOSHANトラッカー(子供の栄養状態を監視し、管理するためのデジタルプラットフォーム)によれば、インドには14万以上の深刻な栄養失調児がいます。FMCHは、この栄養失調の50〜70%は予防可能であり、特に出産後、最初の1000日間における栄養介入が重要だと考えています。FMCHは、地域社会の女性を訓練して母親や家族に適切な栄養指導を行っています。さらに政府と連携して現場の保健スタッフをトレーニングしています。これにより、妊娠中の女性が必要なサプリメントや診察を受け、出産後も適切な授乳や補完食の導入が行われるよう支援しています。

 

FMCHは、独自に開発したNuTreeアプリを使い、現場のスタッフが家庭ごとの情報に基づいてカウンセリングを行い、行動変容データを収集しています。また、啓発セッションを通じて妊娠中の正しい食事と栄養指導を行い、栄養失調の予防に努めています。FMCHのAnganwadi Accelerator プログラムでは、インドのいくつかの地域で政府と協力し、母子の栄養状態を改善するための活動を展開しています。

 

現地での主な課題としては、栄養に関する情報の不足、ジャンクフードの浸透、女性の家庭内での意思決定権の欠如、そして政府システムの負担過多が挙げられています。これらの問題に対処するため、FMCHは政府の保健スタッフ向けのNutriLiteアプリや、母親が利用できる栄養指導のためのチャットボットも提供しています。今後は、ムンバイやバンガロールの都市スラムでの活動を拡大し、さらなる地域での展開を目指しています。

 

Source:母子健康の新たな未来

 

インドにおける母子の栄養失調は、複数の要因からなり、とても根深い問題です。世界の栄養不良児の人口の3分の1以上がインドに居住しているとさえ言われています。その中でFMCHは、妊婦への栄養指導や授乳指導などの具体的な取り組みから、アプリを利用したデータ収集やカウンセリング、政府との協力するなど様々な方面から問題に対処しようとしています。都市部のスラムと問題を限定することで、活動を拡大している彼らの今後に期待したいです。

 

(文責:大森太郎)