Vol.0049 ファイザーとモデルナの新型コロナウイルスワクチンはインドにとって「物流の悪夢 」か?
インドでは要超低温保存のワクチンの取り扱いが難しい
ザ・タイムズ・オブ・インディア誌の11月16日付の記事によると、インド国内の主要な保健専門家は、推奨保管温度が-70℃と低い新型コロナウイルスワクチンを展開するために準備しなければならないインド国内の低温流通体系(コールドチェーン)施設の数に懸念を表明したとのことです。
インド医学研究評議会元事務局長のNK・ガングリー博士は「開発中の新型コロナウイルスワクチンのほとんどは超低温保管を必要とし、(インド国内で)最も発展した都市でさえ保管や輸送が困難な可能性があり、厳しい低温流通体系を必要とするほとんどのワクチンはインドでの導入は非常に困難」との見解を述べています。
現在有効性に関する暫定的な結果が発表された米ファイザー社と米モデルナ社の新型コロナウイルスワクチンですが、ファイザー社のワクチンは-70℃、モデルナ社のワクチンは-20℃での保存が必要とされており、ファイザー社のワクチンは、広範囲の停電や大規模な農村地帯のあるインドにとって 「物流の悪夢 」になってしまう可能性があると同氏は述べています。
また、英国・米国・日本からのファイザー・モデルナ各社のワクチンの大量予約注文により、インドでは2021年までほとんどのワクチンが入手できなくなるだろうという懸念もあります。
同じくインド医学研究評議会の疫学・伝染病の元責任者であるラリット・カント博士は、「ファイザー社のワクチンもモデルナ社のワクチンも「mRNA」という傷みやすい成分が入っており、超低温保存が必要です。わが国にはそのような冷凍庫がなく、インドでは実現不可能である」と述べています。
ファイザー社は、-70℃の温度を最大10日間維持できるドライアイス容器を提供すると発表していますが、論理的にはまだ実現可能ではないというのが実情のようです。
より幅広い要件に応えられるワクチン開発が望まれる
一方で、カント博士は、-2℃から-8℃の間の温度で保存できるワクチンがインド国内で開発中であると発言しています。
保健当局によると、インド国内の製薬会社Bharat Biotech社・Zydus Cadila社・Serum Institute社それぞれのワクチン候補はインドの既存の低温保存ネットワークの要件を満たしているとのことです。インド国内でのワクチン開発が期待されます。
WHOのチーフサイエンティストであるSoumya Swaminathan博士は、例えば、あるワクチンは妊娠中の女性にはより安全で、あるワクチンは高齢者にはより効果的などのように、より幅広い集団と要件をカバーするために、より多くの新型コロナウイルスワクチンの候補を開発しなければならないと述べています。
インドと世界がこの新型コロナウイルス禍を抜け出し、本来の安心と発展を取り戻すためにも速やかな新型コロナウイルスワクチンの開発が望まれます。
ソース:70℃でのコールドチェーンを必要とするワクチンの中には、インドにとって「理想的」ではないものもある。
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