Vol.0062 ヘルステックのPhysiQure、AIとIoT導入ですべての人に質の高い理学療法を
PhysiQureができた背景
インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2020年12 月24日付けの報道でボパールに拠点を置く理学療法部門に革命を起こすであろうヘルステックスタートアップの『PhysiQure』に焦点をあてています。
理学療法は、体力、身体機能、ウェルビーイングを回復、維持、最大化するために不可欠です。麻痺症状のある人や、術後のケア、筋骨格系の損傷を負ってしまった人、その他多くの状況下で理学療法は活躍しています。理学療法士として14年以上の経験を持つAnubha Singhai 氏は、インドは救急医療に力を入れているものの、理学療法を含む他のヘルスケアの側面がおろそかになっていることに気づき、質の高い理学療法サービスを確保するためIOTA Informatics(※1)と協力して、2020年1月にPhysiQureを設立しました。
PhysiQureは、質の高い理学療法を誰もが利用できるようにするために、オンラインでの遠隔コンサルテーションと対面でのクリニックというハイブリッドモデルで運営しています。同社は現在ボパールで4つの理学療法クリニックを運営しており、遠隔で理学療法を提供するためのテクノロジーが統合された機能を備えています。Singhai氏は『理学療法の治療には定期的な通院、長距離移動、定期的にかかる費用などいくつかの要因が影響している。弊社はこれらの問題を総合的に解決しようとしている。』と述べています。
PhysiQureの目指す、質の高い理学療法サービス
PhysiQureは現在、テクノロジーを積極的に導入し、可能な限り短時間で結果を出すことに焦点を当てた遠隔理学療法のためのプロトコルを開発中です。このオンラインプラットフォームでは、患者がPhysiQureの定期的な理学療法セッションをオンライン上で簡単に選択できるようにするとのことです。また、患者の家族が毎日の自宅エクササイズをサポートできるようにトレーニングすることで、患者を支援します。
2021年1月までにマディヤ・プラデーシュ州のItarsi、Betul、Khurai、Mandideepでさらに4つのセンターを立ち上げる予定です。質の高い理学療法には格差があるため、PhysiQureはティアIIの都市(※2)をターゲットにしており、場所に限らず、誰もが質の高い理学療法サービスを利用できるようにすることを目指しています。現在PhysiQure には18人のセラピストが在籍していますが、最終的には、他の理学療法クリニックや医師と連携し、収益の共有モデルを通じて事業展開していくことを計画しているようです。 今後の計画についてSinghai氏は、『2年以内にインド全土に100のセンターを設立するための資金調達を計画している。また、理学療法の実践や管理にAIやIoTを取り入れることも視野に入れている。』と述べています。
世界の理学療法サービス市場は2023年までに年平均成長率5.34%で成長し、1,657億3,000万ドルに達すると予想されています。遠隔医療のヘルステックスタートアップは数多く、成長しているセグメントかもしれませんが、遠隔理学療法はインドでは未だ初期段階にあります。グルグラムを拠点とする『Physio Active』も、スポーツや労災のリハビリテーションに焦点を当てた同様のサービスを提供しており、今後理学療法分野での競争が激化することが予想されます。住んでいる地域や、資金面といった問題から質の高い理学療法を受けることのできなかった人々にとってこのようなサービスは普及しやすく、また定着しやすいでしょう。地方ユーザー体験(UX)にも配慮したテクノロジーを積極導入している点から、都市と地方のデジタルリテラシー格差問題の解消にもつながる画期的なサービスだと思います。
※1 IOTA Informatics:人々のQOLの向上と時間の節約に焦点を当てたヘルステックスタートアップ
※2 ティアIIの都市:人口100~400万人未満の都市
Source: ヘルステックスタートアップのPhysiQure