India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0070 インドのストレージスタートアップ、Safe Storageがコロナ禍で急成長

Safe Storageのビジネスモデル

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年1月24日付けの報道で、オンデマンド物品保管サービスを提供しているスタートアップ『Safe Storage』を取り上げています。同社は2015年に元IBMの同僚であるRamesh Babu Madisetty氏、Venu Madhav Maidam氏、Nageswar Midam氏の3人によってバンガロールを拠点に設立されました。バンガロールにある1BHK(※1)の広さの部屋から始まったこのサービスは、今ではハイデラバード、プネ、チェンナイにまで拡大し、合計30倉庫以上、50万平方フィート(約46,450平方メートル)以上まで成長しました。

Safe Storageには1)家庭用ストレージ、2)ビジネス用ストレージ、3)ドキュメントストレージ、4)テープボールティング(※2)のサービスがあり、目的に合わせて利用することができます。料金体系は保管するアイテム量に依存しており、1BHK相当の家財を1ヶ月間保管した場合2,999ルピー、2BHK相当の場合は3,999ルピーとなります。法人クライアントの場合はパレット毎に価格が決定し、最低価格は800ルピー(約1,140円)です。また文書やレコードの保管に関してはSafe Storageが提供する箱に保管され、1箱あたり15ルピー(約21円)、サーバー保管用のテープボールティングは、1テープ当たり20ルピー(約28円)とのことです。

 

梱包から保管までのワンストップサービス

倉庫には、煙探知機、24時間365日の専用セキュリティ、CCTV監視、バーコード在庫管理システム、生体認証セキュリティシステム、害虫安全装備などの設備が備わっており、商品を安全に保つことに徹底しているようです。また、火災、盗難、自然災害に対する保険を追加料金なしで提供しており、顧客が安心して荷物を預けることができます。Safe Storageはモノを保管したい人々にとって、商品の梱包から、ピックアップ、配送までワンストップで対応しています。顧客はウェブサイトを通じて見積もりをし、集荷の予約をすることが可能で、最短1カ月からSafe Storageの倉庫に保管できます。

Ramesh氏は『すべての商品が倉庫に移動されたら、顧客の氏名、搬入日付と共に、各商品固有のバーコードが生成され、他のお客様の商品と混ざらないようにしている。また、商品の撮影をし、お客様のポータルにアップロードすることで、お客様自身が商品の状況を確認できるようにしている。』と述べています。

 

コロナ禍によるオンデマンドストレージニーズの高まり

Ramesh氏によると、新型コロナウイルスによるロックダウン、在宅勤務、減給などにより、従業員が地元に帰省するケースが多く、そのことが家財などの保管需要の増加につながったと説明しています。実際に2020年5月から需要が急増し、『過去8ヶ月間で8,000のクライアントを取得し、コロナ禍以前の14万平方フィート(約1,300平方メートル)から50万平方フィート(約46,450平方メートル)以上のスペースに成長した』と述べています。FY2020-21 の 売上高は15.88 クロアルピー (約2億2600万円)で、現在ではHCL、Infinite、Siemens、NTT Data、Therapivaなどを含むB2B、B2C合わせて10,000以上の顧客を抱えているとのことです。

 

Safe Storageが目指す先、ストレージ産業の見通し

同社の倉庫の一部はIT企業に囲まれているホワイトフィールドに位置しているとして、倉庫内の余ったスペースをコワーキングスペースとして提供することを検討しているようです。さらに、今後数年間で10都市に拡大、パッキングや引越しサービスも開始予定で、今年4月までにムンバイとコルカタで同サービスを開始するとのことです。

Research and Marketsによると、世界のセルフストレージ市場は2019年に876億5000万ドルと評価され、2025年には1,156億2000万ドルに達すると言われています。インド国内の競合としてはStownest、AirAttix、Storagians、Your Space Doctorなどがあり、どのスタートアップもコロナ禍の中でストレージの需要の増加を経験しています。しかしSafe Storageの創業者は『インド国内のストレージスタートアップで20万平方フィート(約18,580)以上保管している会社はない』と同セクター内でトップであると主張しています。

長期間家を空ける際に、家具や貴重品などの保管には心配事がつきものです。特に賃貸住宅に住んでいる人の場合は、家具や貴重品を安全に保つために、家賃を払い続けるか、もしくは実家などに移動させる必要があります。Safe Storageのサービスを利用することでこのような悩みを解決することができ、また保管方法も徹底しているため、家具や重要資料などの品質悪化の心配もありません。コロナ禍が追い風となり利益を伸ばしてきたSafe Storageが今後、どのような戦略で顧客を拡大していくのか気になります。

 

※1 1BHK:1ベッドルーム、ホール、キッチン

※2 テープボールティング:バックアップ手法のうちの一つ。テープ内にデータを複製しておくこと。

Source:オンデマンドストレージスタートアップのSafe Storage