Vol.0112 デジタルマーケティング界の革命児を目指す『Logicloop』
インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年7 月27日付けの報道で、デジタルマーケティング産業に革命を起こそうとしている『Logicloop』を取り上げています。
デジタルマーケティングとは?
デジタルマーケティングとは、検索エンジンやWebサイト、SNS、メール、モバイルアプリなど、あらゆるデジタルテクノロジーを活用したマーケティングを指します。デジタルマーケティングを活用することで、多様なチャネルを通じて顧客と接触することが可能となり、消費者の行動をよりよく理解することが可能となります。このデジタルマーケティング業界が直面している大きな課題として、1)ブランド-顧客間のデジタルの断絶や、2)ROI(※1)を軽視したデジタルキャンペーン(※2)が挙げられます。
この問題を解決しているのが、ムンバイを拠点とする『Logicloop』です。2017年にMayank Vora氏、Harish Patel氏、Nirav Gosalia氏によって設立されたLogicloopは、データとテクノロジーを駆使したアプローチで、企業が高いROIを達成すること、そして、ビジネスの可能性を最大限に引き出せるよう支援しています。現在、Logicloopは、ムンバイ、プネ、デリー、ベンガルールなどの都市でサービスを提供しており、Saregama India、Aditya Birla Insurance Brokers、Mswipe Technologies、HDFC Life、Kotak Securities、Dr Batra’s Positive Health Clinic、Yardi Systemsなど、様々な業界の約60の国内外企業と取引しています。
Logicloopのビジネスモデル
同社は、最先端のマーケティングオートメーション技術「TRIPLEAD」を開発し、デジタルプラットフォーム上の最初のタッチポイント(※3)からコンバージョンまでのカスタマージャーニーを追跡することを可能にしました。また、セッション記録、ヒートマップ(※4)などのエンゲージメント測定ツールや、デジタルキャンペーンをより深く理解するための高度な分析機能も提供しています。
同社には「Logicloop Tech」「Logicloop Digital」「Realatte Ventures LLP」の3つの部門があります。
Logicloop Techはテクノロジー部門で、ITサービス、スタッフ増加、CTOサービスを利用したビジュアライゼーションからデリバリーまでの製品開発など、多様なテクノロジースタックに特化しており、Logicloop Digital部門は、SEO、ソーシャルメディアマーケティング、ペイドメディアマネジメント、コンバージョン率の最適化、デジタルブランディングなど、エンドツーエンドのデジタルマーケティングソリューションを提供しています。そして、Realatte Ventures LLPは、不動産に特化したデジタルマーケティング会社で、共同設立者2名が運営しています。
Logicloop Digital部門がLogicserve Digital、Iprospect、Performics、AdGlobal360などと競合しているのに対し、Logicloop Tech部門は、Nelito Systems、Collabera Technologies、Sparx IT Solutions、Mind IT System、ValueCodersなどと競合しています。
『弊社は、インド大手ブランドの大規模な予算を、デジタルプラットフォーム上で毎年管理してきました。さらに、Googleプレミアパートナー企業であり、キャンペーンやユーザージャーニーの自動化、測定、最適化を成功させるための強力な技術的ノウハウを備えている』と、Patel氏は語ります。
750万ルピー(約1100万円)の資金でスタートしたLogicloopの収益化モデルには、毎月のリテイナーフィー、メディア費用の管理費モデル、月額15万ルピー(約22万円)からの契約などがあります。同社は、20-21年度に先に挙げた3事業すべてで350万ドルの収益を上げたと発表しています。
Logicloop設立までの歩み
コンピュータサイエンスを専攻した共同創業者の3人は、2007年に自宅の小さな勉強部屋から起業の道を歩み始めました。そして、彼らにとって最初のスタートアップであるRealty Redefinedを共同設立し、Rustomjee、Kanakia Spaces、Tata Realty、JLL、Puravankaraなど、100社以上のデベロッパーと提携しました。Realty Redefinedをインド8都市に事業拡大し、従業員を250人まで増やしたあと、Quikr.comに事業を売却しました。
『Realty Redefined設立での経験が、この競争の激しいデジタルソリューション市場に参入するための道を開いてくれた。我々は一貫してROIと先進的なツールという言葉を使ってきたので、比較的容易に参入することが可能だった。』と共同創業者のGosalia氏は話しています。
ソフトウェア業界とデジタルマーケティングの分野で15年以上の経験を持つVora氏は、Logicloopのスケールアップに注力しています。そしてPatel氏がエンジニアリングチームとプロダクトチームを率い、Gosalia氏はデジタルマーケティング活動のあらゆる側面を監督し、LogicloopのROIとブランドの成長を促進しています。現在、Logicloopは150人の従業員で構成されており、年末までに約200名まで増員することを計画しているようです。
Logicloopおよびデジタルマーケティング産業の展望
インドのデジタルマーケティング産業は急激に成長しており、インターネットユーザーは2023年までに6億6,000万人に増加すると推定されています。
最近の報告によると、デジタルメディアの広告費平均は、2019年の20%から2020年には28%に増加しています。コロナウイルスの流行により、Tier II、IIIの企業やB2B産業のデジタル化が加速したため、この数字は2022年には34%に達すると予想されています。
『教育分野に特化したビジネスユニットの設立も計画している。この事業部では、リードジェネレーション(※5)とテクノロジーに関する弊社の専門知識を組み合わせ、LMS(※6)、CRM(※7)、デジタルマーケティングなど、教育分野における総合的なソリューションを提供する予定だ。また、革新的なプリント・オン・デマンド(※8)のEコマースポータルにも取り組んでおり、今年の10月から11月までに立ち上げる予定だ』とVora氏は語っています。
コロナ禍で様々な企業がSaaS化・DX化を進めている今、デジタルマーケティングの需要はますます高まっていくでしょう。またあらゆる業界にとって基礎となるデジタルマーケティング法は同じなのでLogicloop社のように知見のある会社は信頼も得やすく今後の事業拡大にも期待が持てます。
※1 ROI:Return On Investmentの略。投資した費用に対して、どの程度の利益が出たのかをパーセントで表した指標。「投下資本利益率」
※2 デジタルキャンペーン:Webを中心に行われるキャンペーンのこと。ユーザーを特定の商品サイトに誘導し、アンケートやプレゼントの応募などでリピートを増やしたりユーザー情報(個人情報)を得たりすることを目的とする。
※3 タッチポイント:マーケティング用語。企業やその商品・サービスが顧客と触れる場所。
※4 ヒートマップ:大量の多次元データを、一目で関係を指し示すために色を利用し、可視化するための手法
※5 リードジェネレーション:マーケティング活動によって見込み顧客情報を獲得する活動のこと
※6 LMS:Learning Management Systemの略。学習管理システムのこと。
※7 CRM:Customer Relationship Managementの略。顧客管理のこと。
※8 プリント・オン・デマンド:Web上で販売されており、注文ごとに1冊ずつ印刷し、製本して届くという形態の出版物。通常PODと表記される。
Logicloop:https://www.logicloopdigital.com/
Source:デジタルマーケティングに革命を起こすLogicloop