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【インド予算2026】バラマキ封印で「製造業・インフラ」へ集中投資!日本企業が掴むべき3つの勝機と税制改正の全貌

12兆200億ルピーの衝撃。選挙イヤーにあえて「規律」を選んだインド

突然ですが、「12兆200億ルピー(日本円にして約21兆円)」。皆さんはこの数字が何を意味するか分かりますでしょうか? これは、インド政府が2026年度に投じる資本支出(Capex)の額であり、もちろん過去最高額です。もっと驚くべきなのは、選挙イヤーにも関わらず、あのモディ政権が農民への現金給付などの「バラマキ」をきっぱりと捨てて、「規律ある成長」を選んだという事実です。

今回は、2026年インド予算案の全体像を捉えながら、日本企業に突きつけられた「現地化の最後通告」と、そこに隠された「巨大な商機」について、予算案からインドの未来を読み解いていきます。

【ポイント】

インド政府は短期的なポピュリズムを排し、インフラと製造業高度化による中長期的な成長基盤の強化を選択しました。日本企業は「部品製造の現地化」と「南部エリアへの進出」が急務となります。

重要インパクト:
 ・製造業: 完成品だけでなく「部品」から作れる企業を優遇(逆傾斜関税の是正)
 ・インフラ: 東部の貨物専用鉄道や、南部の高速鉄道・レアアース回廊への集中投資
 ・税制: データセンターへの長期免税や、自社株買い課税ルールの変更

2026年予算案の全体像:財政規律と成長の両立

歳出総額53兆ルピー超。インフラ投資11.5%増でも「財政赤字4.3%」の理由

2026年度のインド予算案は、歳出総額が過去最高の約53兆4,700億ルピーに達し、前年度修正予算比で約7.7%増となりました。 特にインフラ投資には過去最高の12.2兆ルピーが投じられ、前年比で11.5%も増額されています。鉄道や高速道路、新たな貨物回廊などの整備に加え、製造業振興においては従来の「Make in India」をさらに進化させています。

一番注目すべきは、これだけの投資を行いながら、財政赤字を対GDP比4.3%に抑え込んでいる点です。

肥料補助金などのバラマキ経費の削減や、直接的な中間層への減税や現金給付の見送りなどを行い、短期的な人気取りよりも中長期的な産業基盤の強化を選ぶんだ、という政府の本気度が伝わってきますし、投資家からの信頼も高まっているようです。

実質GDP成長率7%の見通しと構造的課題

インド経済は実質GDP成長率で約7%の高成長が見込まれています。しかし、政府歳出の中で「利払い費」が資本的支出を上回ってしまっている構造的な課題や、世界経済の減速リスクも内在しています。高い成長と財政健全化のバランスをどう舵取りしていくかが今後の焦点です。

【メガトレンド①】製造業の進化:「インドで作る」から「部品から作る」へ

予算倍増の「電子部品製造スキーム(ECMS)」と日本企業への商機

結論から言うと、政府のメッセージは「インドで売るならインドで作れ。しかも部品から作れ」ということです。 スマホの組み立てには成功しましたが、肝心の主要部品は輸入頼みになっている現状を変えるため、今回の目玉政策として出てきたのが電子部品製造スキーム(ECMS)の倍増です。

具体的には、

  • 予算規模: 4,000億ルピー → 7,000億ルピーへ倍増
  • 対象部品: 半導体だけでなく、コネクター、コンデンサー、PCB(プリント基板)など
まさに日系企業が得意とする高機能部品が対象になってくるわけです。これは大きなチャンスと言えます。
今回の目玉政策として出てきたのが電子部品製造スキーム(ECMS)の倍増です。

逆傾斜関税の是正=現地化しない企業への「最後通告」

一方で、これは脅威にもなり得ます。「逆傾斜関税」が是正される方向にあるからです。 つまり、完成品の関税は高いまま維持される一方で、部品関税の減税や免除については、「インド国内でそれが作れるようになったら廃止します」という方針だからです。 インドで作れるようになった部品に対しては高い関税をかけていく。これは事実上、現地化を進めない日本企業に対する最後通告とも言えるわけです。

【メガトレンド②】インフラ物流の変革:選挙を見据えた「南部・東部」集中投資

東部(西ベンガル州等):資源と輸出拠点を結ぶ「新・貨物専用鉄道(DFC)」

物流コストを対GDP比8%未満にする目標に向け、鉄道予算に巨額が配分されました。 例えば、東部の西ベンガル州では、ダンクニからグジャラート州のスーラトまでを結ぶ東西の「新貨物専用鉄道(DFC)」が発表されました。これにより、東部の資源地帯と西部の工業地帯・輸出拠点が直結する巨大な物流回廊が形成されます。

南部(タミル・ナドゥ州等):高速鉄道とレアアース回廊

モディ政権(BJP)が苦手とする南部(タミル・ナドゥ州、ケララ州)に対しては、「ルックサウス戦略」として以下のプロジェクトが発表されています。
  •  高速鉄道回廊: チェンナイ、ベンガルール、ハイデラバードといった南部主要都市を結ぶ路線。
  • レアアース回廊: 沿岸部を中心に、重要鉱物の採掘から加工、磁石製造までを一貫して行う産業クラスターの形成。

これにより、鉄道信号システムを持つ企業や、重要鉱物の加工・精錬技術を持つ日系商社などが、インド財閥と連携して事業参画するような商機が生まれるかもしれません。輸出先エリアとしての南インド・東インドのポテンシャルがますます上がってくると期待できます。

ルック・サウス戦略により、東部の資源地帯と、西部の工業地帯かつ輸出拠点が直結する巨大な物流回廊が形成されます。

【メガトレンド③】脱炭素と先端技術:日本企業への「ラブレター」

データセンターへの「2047年まで法人税免除」という衝撃

IT関連企業にとって極め付きのニュースは、データセンターへの法人税免除措置です。 条件を満たせば「2047年まで免税」という、世界でも類を見ない長期の優遇措置が発表されています。データセンター向けの電力・空調設備なども巨大な市場になり得ます。

CBAM(炭素国境調整メカニズム)対応とCCUS技術

欧州向けの鉄鋼やセメント輸出において、炭素排出量に応じた課税(CBAM)が始まるため、インド国内の輸出産業の脱炭素化が急務となっています。 これに対応するため、以下の5つの産業分野においてCCUS(CO2回収・有効利用・貯留)技術の実装が予定されています。

1. 電力(Power)
2. 鉄鋼(Steel)
3. セメント(Cement)
4. 石油精製(Oil Refineries)
5. 化学(Chemicals)

日系企業が持つ環境プラント技術や、日系商社の資源開発力が、今インドから渇望されています。

【税務解説】新所得税法(2026)に向けた5つの変更点

今回の予算案の背景には、2026年4月1日施行予定の「新所得税法(New Income Tax Act 2026)」があります。抜本的な変更も含まれていますので、日系企業に影響がありそうな論点を5つご紹介します。

① 自社株買い(Buyback)課税:キャピタルゲイン課税への変更と親会社リスク

これまで「みなし配当」として課税されていた自社株買いの受取金について、インド政府はまた大きく舵を切りました。 今後は、株主が受け取る金額をみなし配当所得ではなく、「譲渡益(キャピタルゲイン)」として課税をする方式に変更されます。
個人投資家にとっては低い税率が適用されるメリットがありますが、我々日系企業にとってはマイナスの影響が出そうです。 なぜなら、配当を避けて自社株買いで資金を抜こうとする租税回避行為を防ぐため、創業者や出資者たる親会社に対しては「追加課税」がセットで提案されているからです。

② 製造委託(Toll Manufacturing)の5年間免税措置

グローバルサプライチェーンをインドに取り込むためのインセンティブです。 インド国内の保税地区(Bonded Zone)などで製造委託を行う事業者に対して、設備や金型などを供給する非居住者(日本本社等)が、受託製造事業者から受け取る所得を「5年間免除」にするというものです。
将来的に高度な製造ラインをインドに移管したい企業にとっては、まずは製造委託をベースに税務コストを抑えながらインド事業の足掛かりを作る、といったスキームがやりやすくなります。

③ 保税倉庫(Bonded Warehouse)のセーフハーバールール

日本法人がインドの保税倉庫を使って部品を保管・供給する場合、その利益を「インボイス価格の2%」とみなすセーフハーバールールが導入されます。 ジャストインタイムで物流を支援する上で使いやすい制度ですが、倉庫内作業が「製造」とみなされると対象外になるリスクもあるため、慎重な評価が必要です。

④ SEZから国内(DTA)への販売時の優遇関税

トランプ関税などによる需要変動への救済措置です。 SEZ(特別経済区)内の製造ユニットが輸出できずに余った在庫を、インド国内市場(DTA)に売る際に、優遇関税(Concessional Duty)を適用できる一時的な救済策が設置される予定です。 あくまで「ワンタイムメジャー(当面の間)」の措置ですが、工場の稼働率維持に寄与します。

⑤ 個人輸入品(ガジェット等)の関税半減(20%→10%)

駐在員の皆さんにとって身近な話です。個人使用目的の輸入品にかかる基本関税(BCD)が、現行の20%から10%へ半減します。 ガジェットやサプリメントの輸入コストが下がりますが、お酒、タバコ、書籍などは対象外ですのでご注意ください。

日本企業が今すぐ打つべき「3つのアクションプラン」

1. 部品製造の現地化準備

組み立てだけでは関税リスクと競争力維持の両面で限界を迎えます。ECMSやPLI、日本の経産省補助金などを活用し、サプライチェーンの強靭化に係る「部品製造」への投資に踏み込む必要があります。

2. 南部へのエリア戦略

日系企業の集積として、これまではデリー/グルガオンエリアに集中してきた経緯がありますが、ここ数年でバンガロールやチェンナイに進出する日系企業もかなり増えてきています。インド政府としてのインフラ投資も南部を強化していく動きが発表されていますが、優秀なIT・工学系人材が豊富なタミル・ナードゥ州やカルナタカ州を考慮しても、南インドで勃興しつつある商機を取り込むための準備を進めていく必要があります。

3. 税務ガバナンスの再構築

先ほどの自社株買い課税の変更や、2026年4月から施行される新所得税法、また、新しく発表された優遇制度も含めて、必要に応じてこれまでのビジネスモデルや取引スキーム、場合にはよっては社内の業務プロセスをあらためて見直しながら、税務ガバナンスを強化していく必要があります。ぜひみなさんの今後のアクションプランの参考にしていただければと思います。

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