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【成功したい企業は必見】インド法人設立後に最適な資金調達方法を解説します

インド法人設立後に最適な資金調達方法を解説します

今回はインド法人設立後に最適な資金調達方法というテーマで話していきます。

インド現地法人を設立したはいいけど、すぐに資金が底をついてあわてて資金調達に奔走する、なんて企業も結構多いんですよね。
一方で、資金調達方法によってはすぐにお金を送金できないケースもありますし、そもそも資金調達にはどのような選択肢があって、それぞれにどのようなメリット・デメリットがあるのかを正しく理解していないと、資金効率が悪くなってしまったり、最悪のケース、インド事業の立ち上げをいったんストップしなければならない事態にもなりかねません。

この動画を見ていただくことで、インド現地法人を設立した後の資金繰りの考え方や資金調達の選択肢、そして、御社にとって最適な資金調達方法について、正しく理解できるようになります。

資金調達の選択肢とは?

インドに現地法人を設立した後に考えておくべきもっとも重要なことは資金繰りです。会社経営は資金繰りが命って言われますけど、特に、インド事業立ち上げ初期フェーズにおいては、資金繰りと資金調達こそが、ビジネスの安定的な運営と、立ち上げのスピード感を大きく左右する重要な要素です。御社が想定しているビジネスモデル・事業計画にもとづくと、いつごろ売上が立って売掛金を回収できそうか、立ち上げ当初どれぐらいの運転資金が必要となりそうか、その資金を出資金でまかなうのか、借入をするのかなどひとつひとつ検討をする必要があります。それでは早速いってみましょう。

インド国内で利用できる主な資金調達手段はこの4つです。
増資、親子ローン、銀行借入、役務提供による資金の受け取り、それぞれにインド特有の手続きや規制、税制が影響してきますのでひとつひとつ見ていきましょう。
(1)増資
(2)親子ローン
(3)銀行借入
(4)役務提供による売掛金回収

(1)増資

1つ目は増資です。

増資には主に(1)株主割当増資と(2)第三者割当増資と、そして、(3)公募増資の3種類がありますが、インドに現地法人や子会社を設立した日本企業が実施する増資は基本的に親会社やグループ会社、つまり、既存の株主に対して新規株式を割り当てる「株主割当増資」が該当します。英語ではRights Issueって言いますけど、この増資手続きは定款に記載されている授権資本(いわゆる出資できる上限枠ですね)この範囲内で増資をすることになりますが、増資をすれば資金を自由に使うことができます。ただ、手続きが少し煩雑ですし、最低でも2ヶ月ぐらいかかりますので注意が必要です。

なお、授権資本をさらに引き上げて増資をするようなケースでは、増資手続きをする前にまず定款を変更する必要があるので、インド政府に収める登記費用が別途発生する点も注意が必要です。
具体的には、増資をするタイミングでの株価評価が必要となるんですけど、5カ年事業計画に基づくディスカウントキャッシュフロー法(いわゆるDCF法ですね)これにより株式の時価評価をして、インド勅許会計士が発行する株式評価証明書(Share Valuation Certificate)に基づいて株式発行価格を決め、取締役会で株式割当の決議をとります。


あと、この増資金額を日本から送金する際にWISE等の海外送金サービスを利用すると、増資後のコンプライアンス対応において支障が出るため必ず銀行窓口で海外送金手続きを実施していただく必要があります。資本金がインド側の口座に着金後は、60日以内に取締役会で株式割り当ての決議をとりおこなった後、株式割当から30日以内にインド準備銀行および会社登記局ROCに報告・登記する必要があります。

ちなみに、2023年10月に発表された通達によって、一定の条件を満たす企業は株式等の電子化が必要となります。株券の電子化の具体的な手続きについては次回の動画で解説をしたいと思いますので見逃したくない方はぜひチャンネル登録をしてお待ちください。

(2)親子ローン

2つ目は親子ローンです。

親子ローンは、親会社がインド現地法人に貸し付けを行う方法です。ある程度利率を低く設定したり、のちに資本金へ振り替えることも可能なので一定の柔軟性はありますが、この親子ローンを選択する場合には、為替リスクが発生することに加えてインド準備銀行RBIが規定するECB規制を遵守する必要があるので注意が必要です。

ECBとはExternal Commercial Borrowingの略称で日本語では「対外商業借入」と言われたりしますけど、具体的にはこういった制限事項があってですね、例えば海外から借入をした際の最低借入期間や資金使途・借入金額の上限などが規定されていて、定期的に改訂されているので最新の情報を確認しておく必要があります。

親子ローンの手続きとしては、まず親子ローン契約書を準備した上でForm ECBという書類と合わせてAD Bankというインド準備銀行RBIから認可を受けた金融機関を通じて事前登録申請をして、LRN(Loan Registration Number)というローン登録番号を事前に取得します。

このLRNが発行され次第ローンの実行が可能となりますが、借入実行後も毎月Form ECB-2という書類を使って外部のインド勅許会計士の証明をつけた上でインド準備銀行RBIに対して毎月翌月7日までに報告を行わなければならないというルールがあるので注意が必要です。借入手続きは最低でも資金が必要となる1〜2ヶ月ぐらい前から始めておく必要があります。

(3)銀行借入

3つ目はインド国内からの銀行借入です。これはインド国内の金融機関を通じて資金を調達する方法です。

この場合、基本的には為替リスクが無く、資金使途や最低借入期間などのECB規制もありませんが、利率や融資条件は当然金融機関との個別に交渉する必要がありますし、インド国内借入は日本の親会社保証をつけたとしても比較的に借入利率が高くなるため日本企業にとってはあまり一般的な資金調達手段にはなっていません。

ちなみに、銀行に対して日本の親会社保証をつける場合には、インド子会社は日本の親会社に対して保証料を支払うのが一般的ですが、もし仮に保証料を支払っていなかったとしても、インドの消費税GSTという税務上の観点では保証料を支払われているものとみなして「みなし保証料」に対してGSTが課税されることになるため注意が必要です。

(4)役務提供による売掛金回収

最後の方法は役務提供による資金の受け取りです。

資金調達と言うと少し語弊があるかもしれませんが、これは現地法人が親会社に対して何らかのサービスを提供し、その対価としてクイックに日本本社から資金を受け取るという方法です。

例えば、インドの市場調査業務や日本本社のバックオフィス業務などをインド子会社がリモートで支援したりして、その対価として日本本社に請求するようなケースですね。あとは、インド現地法人がR&D拠点やオフショア開発拠点のようなコストセンターとしての役割を担っているようなケースでもよく活用されます。

っていうのも、こういったコストセンターの場合、インド現地法人が単独で収益を上げるのは現実的に難しいので、もし仮に増資をしたとしても増資をし続けなければならない構造となって、半永久的に資本金が膨らみ続けてしまいますし、もし親会社から借入をしたとしてもそもそも返済することができないですよね。こういったケースにおいては、一般的に何らかの役務提供を行うことで本社からその対価として送金をしてもらったり、インド側で発生したコストにマークアップ、つまり一定の利益を乗せてインドでちゃんと営業利益がでるような取引スキーム・ビジネスモデルを設計して、日本本社に請求をするのが一般的です。

この方法は資金をすぐに調達できて、手続きも比較的に楽なんですけど、GST(消費税)・TDS(源泉所得税)・Transfer Pricing(移転価格税制)などの観点から幅広い税務対応が求められるので事前に専門家に確認されることをおすすめいたします。

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資金調達方法の留意点と判断基準

ご紹介した4つの資金調達方法をざっとまとめるとこんな感じになると思います。
どの方法が御社にとってもっとも相応しいかについては、このマトリックス図にある5つを論点を基準に判断すると良いと思います。

増資は、調達した資金を自由に使える上にインド事業が軌道に乗るまでは配当金の支給を期待することはないと思いますので、余裕資金は定期預金で運用したりすることもでき、さらに資金効率が良くなります。2024年8月時点の定期預金利息が年利6%ぐらいありますので、かなりインパクト大きいですよね。
ただ、本社株主側で投資有価証券として決算書に計上することになって、大義名分として長期的な成長を前提とした投資目的で増資をすることになるので、すぐに投資リターンが得られるわけではない場合、日本本社の株主に対する説明責任も発生します。また、手続きには時間がかかりますので時間に余裕を持って準備を進めましょう。来月には資金が底をつきそうって状況になってから検討したのではもう手遅れ、なんてことにもなりかねません。

親子ローンは資金使途の制限を受ける上に、利息の支払や毎月RBIへの報告義務にかかる対応コストも発生するので、調達をする資金の金額によっては資金効率が悪くなりがちです。また、為替リスクをどちらが負うのかも決めておく必要がありますし、状況によっては通貨スワップによるヘッジ等も検討をしながら為替リスクに対してどのように管理していくのかを検討しておくことが重要です。
ただ、本社株主の観点では利息収入を受け取りながら、将来いずれ返ってくる貸付金として決算書に計上できるメリットは大きいですね。

インド国内からの銀行借入は基本的に為替リスクがなくECBの規制も受けません。本社株主が債務保証を付けない限りは本社への直接的な影響もありませんが、そもそも借入利息が高金利になってしまい資金効率が悪いのであまり現実的な選択肢にならないケースが一般的です。

そして、役務提供による資金の受け取りについては、手続きが簡単かつクイックにできて一番活用しやすい方法ですが、必要な調達金額と役務提供の対価とのバランスが合っているか、想定している取引スキームだとどの程度の税務リスクがあるか、そしてどれぐらいの税金コストがかかるのかの観点から資金効率も見極めた上で総合的に検討する必要がある、っていう感じですね。
例えば、一定の条件を満たすサービスの輸出取引の場合はGSTの非課税処理が可能なんですけど、そのために必要となるLUT(Letter of Undertaking)という書類をすでにGST税務当局から取得できているかどうか、なども確認しておく必要があります。

親子ローンで注意すべき論点

最後に、もし御社が親子ローンを利用することとなった場合で、かつ、万が一将来インド子会社の業績が悪く、親子ローンの返済ができなくなった場合を見据えて事前に考慮しておくべき点を2つご紹介しておきます。

まず1つ目は「親子ローンの債務免除」についてです。
インド子会社が返済できなくなってしまった場合の選択肢として、親会社がインド子会社の債務を免除するケースがあります。つまり、親会社から見るとインド子会社に対する債権を放棄するわけですね。この場合、インド子会社側には債務免除益が計上されることになるので、税務上の繰越欠損金がないようなケースだと債務免除によって課税所得が発生して、その年度に多額の法人税を納税しなければならなくなるケースもあるので事前に納税シミュレーションを実施しておく必要があります。

2つ目は「親子ローンの資本組入」いわゆるDES(Debt-to-Equity Swap)ですね。
インド会社法上、親子ローンを資本に組み入れる手続きは認められているんですけど、この手続きを実施するためには、親子ローン契約書においてこの資本組入手続きに関する合意条項があり、かつ、その親子ローン契約書が株主総会で承認がされている必要がありますので、将来的な資本組入の可能性も見据えて親子ローン契約書を作成しておくと良いと思います。

みなさん、いかがでしたでしょうか?今回は、インド現地法人設立後の資金調達の選択肢と判断基準、そしてそれぞれの手続きや注意点についてお話しました。自社の状況に応じた資金繰りや最適な資金調達方法を選ぶ際に、本日の動画を参考にしていただけると嬉しく思います。

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