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【日本の○○が爆売れ!?】インドで急成長中の日本企業5社(小売業)を解説します

インドで急成長中の日本企業5社(小売業)を解説します

今回はですね、インドで活躍する日本の小売業の進出事例とその戦略について解説したいと思います。

多くのメディアがインドは今後もっとも有望な市場になると報道している中、小売業でインドに進出する日本企業が増えています。この10年でお金を持っているインド人が一気に増えて、より高品質・高機能な商品を求める消費者や、新しい文化に興味を持つ若者を中心にニーズも多様化しています。この動画では、インド市場を果敢に攻める日本の小売業5社の事例をもとに、進出の戦略や成功の鍵を握る重要なポイントについて解説していきます。

登場企業:

  • ユニクロ
  • 無印良品
  • セブンイレブンダイソー
  • オンデーズ

ユニクロ

インド市場の魅力は、何といってもその成長ポテンシャルですよね。世界一の人口大国になって、2040年代まで続くと言われる人口ボーナス期を迎えているインド市場に参入をした小売業1社目は、ユニクロです。

ユニクロは株式会社ファーストリテイリングが展開するカジュアル衣料ブランドであり、世界中に展開する大手企業です。2023年度の連結売上高は約2兆7,665億円を記録し、海外事業の売上が全体の50%以上を占めています。特に中国市場での成功が目立っていますが、ユニクロは2019年にインド市場にも進出し、現在13店舗を展開しています。

もともとはインド国内繊維・アパレル大手のアーヴィンド社との合弁による進出の可能性も報道されていましたが、結果的にユニクロ単独の独資でインドに進出をしています。インド国内での市場ポジショニングは、中間層から上流層、特に若者やファミリー層をターゲットにしています。ユニクロの価格設定は日本と同程度ですが、インド市場の中ではやや高めの設定です。それにもかかわらず、高品質でデザイン性に優れた商品がインドの消費者に支持されており、2023年度にはインドでの売上が前年比60%増という顕著な成長を遂げました。

ユニクロのインド市場への適応戦略として、現地特有の商品開発が挙げられます。初進出時には、インドのデザインスタジオEKA Design Studioのトップデザイナーであるリナ・シンを起用して、インドの伝統的な服装であるクルタ・コレクションを展開し、現地の文化や消費者ニーズに応じた商品戦略を導入しました。また、2023年にはインド初のブランドアンバサダーとしてボリウッド女優のカトリーナカイフを起用して注目を集めましたが、さらに翌年2024年10月にはついに大物ボリウッド女優のひとりで、日本でも有名なインド映画「きっとうまくいく」にも出演しているカリーナカプールを起用したCMが最近話題になりましたよね。

インドの小売市場に進出する外資企業には国内調達比率30%という外資規制がありますが、ユニクロは製造から販売までを一貫して管理するSPAモデルを採用し、この規制に対応しています。現地での調達を確保しながら、効率的なコスト管理と現地ニーズに合致した商品展開を進めたことで、わずか3年で黒字化を達成しました。これは、インド市場での成功を後押しする重要な要因となっています。

今後、ユニクロはさらなる店舗拡大と地域コミュニティとの協力を強化し、インド市場での事業拡大を目指しています。インドは成長ポテンシャルが高く、ユニクロの柔軟な適応戦略とビジネスモデルが、その成功を支えています。今後もインド市場でのユニクロの成長に注目が集まることでしょう。

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MUJI

インドで活躍する日本の小売業2社目は無印良品です。

無印良品は、株式会社良品計画が展開する日本発のグローバルブランドです。日本国内では生活雑貨や衣料品、食品、家具などの広範な商品群を提供しており、2023年には売上高5,814億円を記録しました。インド市場において無印良品は比較的後発であり、無印良品計画の海外ブランド『MUJI』を展開しています。

インドには無印良品が51%、リライアンスグループが49%を出資する合弁会社として2016年に初出店し、現在は4店舗を運営しています。インド市場における無印良品の最大の強みは、シンプルかつ機能的なデザインと、地元文化を取り入れた地域密着型の戦略です。特に、2023年11月にムンバイに開業した世界最大規模の店舗は、その象徴的な存在になっています。この店舗は、環境に配慮した設計が施され、地元職人の手工芸品を内装に採用することで、地域との共生を図っています。また、無印良品初のコーヒースタンドを併設して、インド市場向けの商品展開を強化しています。

無印良品のインドでのターゲットは、品質やデザインにこだわる中間層から上流層です。無印のシンプルなデザインをベースに多様な商品を提供していますが、現地のニーズに応じた商品開発も行って、価格戦略もインド市場に特化しています。また、現地でのマーケティングにおいては、「感じ良い暮らし」をテーマに、消費者に快適で持続可能なライフスタイルを提案しています。

しかし、MUJIのインド市場での展開は決して順風満帆ではなく、現状では「ブランド力が不足し、リソースが分散している」ことが大きな課題となっているようです。インド進出時に各都市へ一気に出店を拡大しすぎた結果、ブランド認知が浸透する前にリソースが分散し、どの都市でも思うような成果が得られていない状況で、デリーやベンガルールにあった数店舗が閉鎖に追い込まれてるんですよね。

さらに、インド政府による外資系企業への規制や制約もMUJIにとって大きな課題です。ユニクロと同様に現地での製造・調達要件により、MUJIも国内調達の比率を上げる必要があり、現地でのサプライチェーン構築に取り組んでいます。当初オープンしていたバンガロールとニューデリーの店舗はすでに閉鎖されていますが、今後はこれまでの狭い店舗では表現ができなかった無印良品の生活スタイルや世界観の表現をムンバイで実現することを目指していて、ムンバイでの販売実績を着実に積み上げた上で、徐々に他のインド市場への事業展開を進めることで、持続的な成長を目指しています。現地ニーズに即した店舗運営や商品の拡充、認知力の向上やブランド力の強化をどこまで進めていけるかが、今後の無印良品のインド事業の鍵を握っていると言えます。

セブンイレブン

インドで活躍する日本の小売業3社目はセブンイレブンです。

セブンイレブンは、株式会社セブン&アイ・ホールディングスが展開する世界最大級のコンビニエンスストアブランドです。日本国内に約21,000店舗を構え、海外では17カ国以上に展開しており、日用品や食品、金融サービスなど幅広い事業を手掛けています。

しかし、複数ブランドを取り扱うインド国内コンビニ事業については、ユニクロやMUJI以上に厳しい外国直接投資規制(FDI)が課されています。小売業には、ユニクロやMUJIなどのように自社ブランド商品のみを取り扱う単一ブランド小売業と、コンビニや百貨店などのように複数のブランド商品を取り扱う複数ブランド小売業の2つの区分があって、後者の複数ブランド小売業に対する外国直接投資はその出資比率が最大51%までと制限されていているんですよね。

なので、100%子会社が設立できないので、セブンイレブンは現地企業とライセンス契約を締結する形をとっています。進出当初は、セブンイレブンのアメリカ法人と、インドの小売大手フューチャーグループ子会社との間でマスターフランチャイズ契約を締結していました。ただ、コロナ禍の2021年にこの契約を解消して、現在はリライアンスグループ子会社である7-India Convenience Retail Limitedとマスターフランチャイズ契約を結ぶことによって、インド事業を展開しています。ライセンシーであるリライアンスグループからロイヤリティ収入を得る形ですね。

セブンイレブンにとって、こういった出資比率の規制や現地事業パートナーとの調整に加えて、現地の中小規模製造業から30%以上の調達を義務付けられているなど、経営環境としては難しい舵取りを強いられていますが、インド中堅財閥リライアンスグループのインド全土の販売網を積極的に活かすことによって、インド市場での展開を加速させていて、2021年10月に1号展オープンさせてから3年間で、リライアンスの本拠地であるムンバイ・プネを中心に56店舗をオープンさせて急拡大しています。現地企業と組むメリットを最大限に活かしたローカライズ戦略によって地域密着型のコンビニエンスストアを目指していて、現地の消費者ニーズに応じた商品ラインナップとして、スナックや飲料など地元の嗜好に合わせた商品開発を進めています。

これからはムンバイ・プネでの実績をベースに、インド全土への店舗数を増やしていく方針で、また、デジタル化やスマートストアの技術も導入することで、より幅広い消費者層にリーチする計画を打ち出しています。メディア報道等を見ている限り、24SEVENやEasyDayなどのインド国内コンビニチェーンも苦戦を強いられていますし、また、日系として初めてコンビニ事業としてインド市場に進出をしていたインパクトホールディングスも2023年1月に撤退することを発表している中で、セブンイレブンが外資コンビニチェーンとしてインド市場で生き残っていけるのか、どれだけインド人消費者の心をつかむことができるのか、これからの事業展開に注目が集まっています。

ダイソー

インドで活躍する日本の小売業4社目はダイソーです。

ダイソーは、日本発の100円ショップとして知られる株式会社大創産業が展開する小売チェーンです。日用品や文房具、食品など幅広い商品を取り扱い、2023年の売上高は約6,272億円を記録しています。現在、国内外で5,000店舗以上を展開していて、アメリカでも最近は大谷選手の試合を観るたびにドジャースタジアムでダイソーの看板をよく目にしますが、むちゃくちゃ海外展開を進めてますよね。その中でインドは今後の成長市場として注目されています。

インド市場への本格進出は2022年からで、チャンディーガルに1店舗目をオープンして以来、ラクナウ、バサイ、インドール、ムンバイ、チェンナイなどで次々にオープンし、2024年11月現在インド国内で約10店舗を展開しています。最初の3店舗が主要都市ではなくチャンディーガルやラクナウ、バサイなどのTier2都市にオープンしたのは意外で、投資コストの低い副都心でテストマーケをしているのかなと思ったんですけど、その直後に4店舗目としてムンバイでもオープンしているので、たまたま条件面等の折り合いがついた順番がこうだった、というだけかなと勝手に推測しています。ターゲットは都市部の中間層や若年層で、特に「安価で質の良い商品」を提供することで、日常の買い物をもっと気軽に楽しめるスタイルを提案しています。インドでも、日本の「100円」と同様に「99ルピー」(約170円)のわかりやすい価格設定を採用していて、特に日本製の食器などの家庭用品や文房具が人気を集めています。日本酒用のとっくりなんかも売られてましたけど、インド人は一輪挿しとして購入する人が多いみたいですね。

ダイソーのインド進出のポイントは、現地パートナーとの協力体制です。事業パートナーである、インド小売り大手のアパレルグループ(Apparel Group)が代理店として運営をサポートしているんですけど、現地の消費者ニーズを汲み取った商品ラインナップを実現しています。また、ダイソーは生産の約7割が海外ですが、インドも販売拠点としてだけではなく、製造拠点としての可能性も見据えてこれまでは中国に偏っていた生産をインドに分散させる計画も進行中です。

今後、ダイソーはインドでの店舗数をさらに拡大し、2027年までに50店舗、その後は200店舗まで拡大する計画です。現地のサプライヤーとも積極的に連携し、日本で成功している迅速な商品開発のノウハウと、パートナー企業と組むことによるインド市場の新しいトレンドをいち早く反映した商品開発の推進、この両輪でインドにおける生産から小売販売までを一気通貫で手がける一大SPAブランドに育てるべく事業拡大を図っていく方針だと思います。インド国内の雇用創出や地域経済への貢献も視野に入れたこれからのビジネス展開が期待されています。

オンデーズ

インドで活躍する日本の小売業最後5社目はオンデーズです。

オンデーズは、日本発の眼鏡ブランドで、ファッション性と機能性を兼ね備えたオリジナルデザインの眼鏡を提供しています。代表の田中修二さんのノンフィクション小説『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』でも一躍有名になった企業ですね。1989年に創業し、一時は倒産の危機を迎えますが、田中修二さんが代表就任後に事業を再生させ、現在は国内外で約460店舗を展開。2023年の売上高は約250億円と成長を続けていて、特に海外市場での拡大が業績を押し上げています。

インド市場への進出は、2018年に南インド・チェンナイ1号店オープンさせる形でオンデーズが単独で実現しましたが、現地でのさらなる成長加速と幅広い顧客層へのリーチを目指し、2022年にインドの眼鏡大手Lenskartとの経営統合を発表しました。Lenskartはインド国内で急速に成長中の企業で、オンラインとオフラインの両方で展開するオムニチャネル戦略を採用しています。この経営統合により、オンデーズはLenskartの店舗網と技術的インフラをフル活用して、都市部のファッション志向の高い若年層を中心に、より幅広い消費者層にアプローチすることができるようになりました。例えば、Lenskartが提供するオンライン試着機能やAIを活用した顔型分析技術がオンデーズの店舗にも導入され、顧客によりパーソナライズされたサービス提供が可能になりました。

特に、顧客の顔の型に合わせてフレームを提案することで、眼鏡選びの体験が大きく向上して、さらに、AR/VR技術の導入を検討するなど他ブランドとのさらなる差別化を図っています。また、Lenskartの全国規模の店舗網を活用することで、オンデーズの高品質な日本製眼鏡がさらに多くのインド人消費者に届いて、ブランド認知の拡大と市場シェアの成長を実現しています。

さらに、この経営統合はインド市場に留まらず、アジア全体への拡大戦略の一環にもなっています。Lenskartは、オンデーズとの協力を通じてインド国内のみならず、東南アジアや東アジア市場への展開も強化していて、両社それぞれが持っているブランド力と販売ネットワーク、テクノロジーを融合させることで、価格帯やデザイン性において幅広い顧客層にリーチして、より良い顧客体験を実現できるようになっています。こうした戦略によって、オンデーズはインド市場だけじゃなく、アジア全体でのシェア拡大を目指して、グローバル市場での競争力強化を図っています。

さて、皆さんいかがでしたでしょうか?今回は、インドで活躍する日本の小売業5社をご紹介しました。インド市場は、急速に成長を続け、購買力の高い消費者層が増えている中で、日本企業にとっても大きなビジネスチャンスが広がっています。今回取り上げた企業のように、現地パートナーを見つけ、現地の文化や消費者ニーズに適応し、柔軟な適応戦略をとることで、インド市場を開拓する鍵をつかむことができると考えます。

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