【衝撃の内部事情】インド5大財閥の歴史や後継者問題などを徹底解剖!
インド5大財閥の歴史や後継者問題などを徹底解剖!
今回はですね、インドの経済界で圧倒的な存在感を誇るインドの財閥について解説してみたいと思います。
インドの大手財閥と言えばみなさん何を思い浮かべますか?日本の財閥と言えば住友・三井・三菱、世界の財閥と言えば、ロスチャイルド・ロックフェラー・モルガンなどが思い浮かびますけど、インドはなんといってもタタグループです。2024年10月に元会長のラタン・タタ氏が死去したニュースを見た人も多いと思いますけど、タタグループは自動車から鉄鋼、ITサービス、消費財、外食チェーンの運営まで、10業種・100カ国以上で事業展開をしていて、100万人以上の従業員を抱えるむちゃくちゃデカい財閥なんですよね。
そこで、今回の動画ではインドでビジネスをする上で知っておくべきインドの財閥について、そして、意外に知られていないタタグループと日本との繋がり、タタ一族の生い立ちや宗教、そして、後継者問題について解説したいと思います。
まず最初にインドの5大財閥について見ておきたいと思います。インドの財閥は大手から中堅財閥までたくさんあるんですけど、特に大手財閥はタタ・リライアンス・ビルラ・アダニ・マヒンドラの5つですね。
リライアンスグループ
タタグループについては後で詳しく見ていくので、まずは2つ目のリライアンスグループから見ていきましょう。
リライアンスグループは、1960年にディルバイ・アンバニ氏が貿易会社として創業して一時期は一代でタタグループをしのぐ規模にまで成長した新興勢力なんですけど、創業者が発作で倒れたあとに、兄弟が経営圏をめぐって対立して、母親が仲裁に入る形でグループを2分割して今にいたっています。兄のムケシュ・アンバニ率いるリライアンスインダストリーズと、弟のアニル・アンバニ氏率いるリライアンスADAグループです。お兄ちゃんのムケシュがかなりやり手で、2024年のForbesの世界長者番付でも9位にランクインしているんですけど、お父さんから引き継いだ石油化学事業はもちろんのこと、例えば、小売事業でもかなり手広くやってます。この動画でも詳しく解説しているんですけど、日本と関わりがあるところで言うと無印やセブンイレブンの小売事業に関わっているのもこのお兄ちゃんの方ですね。
こんな感じでインターナショナルブランドをむちゃくちゃ持っていてここに無印も入ってますが、アディダス、バレンシアガ、バーバリー、ボッテガ、アルマーニ、ポールスミスやフェラガモ、ティファニー、トゥミなど、80以上の外資ブランドと組むことで広範囲に事業展開しています。あとは、なんといってもReliance Jioが2016年9月に発表した4G対応の携帯端末と通信サービスの無料提供ですよね、これによってインターネット普及率が急増するというインドの通信革命を起こした立役者として、インド経済の発展にもっとも大きな影響を与えた財閥のひとつと言えます。
ビルラグループ
インドの5大財閥3つ目はビルラグループです。
ビルラグループは、1860年にラジャスタン州の商人コミュニティとして有名なマルワリのヒンドゥー教徒、セス・シヴ・ナラヤン・ビルラ氏が繊維事業を創業して以来、ビルラ家によって繁栄してきた財閥です。中核企業としてインド最大のセメント会社、UltraTech Cementを持っていて、インド国内の住宅やインフラ整備において大きな貢献をしてきました。また、インド国内アルミニウム製造大手、Hindalco Industriesがアルミニウム製品や銅製品を供給していたり、繊維事業としては現在もGrasim IndustriesがLivaというブランド名で知られるレーヨンなどの天然素材由来の高品質な生地を生産しています。ちなみに、インドの国民車として有名なヒンドゥスタン・モーターズの「アンバサダー」は2014年にすでに生産を終了していますが、ビルラグループ傘下の自動車ブランドだったことも知っておくと良いと思います。
アダニグループ
インドの5大財閥4つ目はアダニグループです。
アダニグループは、1988年にグジャラート州出身のジャイナ教徒、ゴータム・アダニ氏が貿易会社を創業して以来、一代で築き上げた5大財閥の中でもっとも歴史の浅い新興財閥です。1995年に参入した港湾事業においてインド最大の民間港湾施設と経済特区を設置して大きく成長を遂げて、その後炭鉱や電力、再生可能エネルギー分野において大きな成功を収めます。少し余談ですけどアダニ氏は2008年にムンバイで発生したタージマハルホテルのテロ事件で、ホテル内のレストランで食事をとっていたところを襲撃されたんですがトイレに隠れて翌日無事に救出された生存者の一人です。強運の持ち主ですよね。2022年にはイーロンマスクに次ぐ世界第2位の富豪になったこともあるほどとんでもないお金持ちですけど、2023年に株価操作等含む詐欺容疑で告発されてからは大きく転落しました。それでも直近2024年のForbesの世界長者番付で引き続き17位にランクインしています。同じグジャラート州出身のモディ首相との関係が深いことからここ最近は、政府との癒着が問題視される声も上がっています。2022年にはこれまで中立的な報道をするメディアとして定評のあったNDTVをアダニグループが買収したことにより、政府との癒着による情報操作がされている可能性についても指摘をされています。
マヒンドラグループ
インドの5大財閥5つ目はマヒンドラグループです。
マヒンドラグループは、1945年に9人兄弟の上2人、長男と次男のマヒンドラ兄弟が鉄鋼事業を創業して以来、自動車や農業機械、小型民間航空機、金融、ITサービスなど幅広い事業を展開してきた財閥で、中核企業である自動車メーカー、マヒンドラ&マヒンドラはジープやスコーピオ、ボレロなどのSUVを生産して人気を博しました。また、チェンナイでは、タミル・ナードゥ州産業開発公社TIDCOとの官民共同プロジェクトとして、2002年にインド初の統合型ビジネス都市「マヒンドラ・ワールド・シティ」をスタートさせ、
さらに住友商事40%・マヒンドラグループ60$の合弁により2019年からチェンナイ北部40キロほどの場所に位置する「オリジンズ工業団地」もスタートしていて、この工業団地にはすでにヤンマーやオムロンヘルスケア、日星電気などを中心に多くの日本企業が進出しています。また、日本の物流会社であるセイノーホールディングスはマヒンドラ・ロジスティクスとの合弁で、日本の自動車メーカー向けに特化した物流ソリューションの提供を進めており、日本企業のインド事業においても日印関係の強い財閥の1つです。
タタグループ
それではインド最大の財閥・タタグループについて見ていきましょう。
タタグループは、1868年にゾロアスター教徒であるジャムシェトジー・タタ氏が綿貿易会社として創業しました。創業以来150年以上にわたって事業を成長させ続けていて、自動車や鉄鋼、ITサービス、消費財などを中核企業とする100万人以上の従業員を雇用するインド最大の財閥に成長して、ジャムシェトジー・タタは「インド産業の父」とも言われています。
インド経済自由化が始まった1991年に、グループ統括会社のタタ・サンズの会長に就任したラタン・タタ氏は、イギリスの高級車ブランド、ジャガー・ランドローバーなどの大型買収を成功させて、タタグループを世界的なグローバル企業への押し上げた手腕や、当時ワンラックカーと呼ばれた10万ルピーの車、その当時のレートで日本円約25万円ぐらいですかね、この斬新な低価格車を開発するなど、革新的なアイデアにも注目が集まった人物です。また、新日家だったラタン・タタ氏は三菱商事やNTTドコモ、日立建機との合弁事業を手掛けたり、日印経済連携協定EPAの立役者としての貢献もあって、日印外交関係樹立60周年にあたる2012年に、外国人ビジネスマンへの勲章として最高位である「旭日大綬章(きょくじつだいじゅしょう)」を授賞しています。
現在、タタグループは、この図にあるような事業領域においてさまざまなサービスやブランド商品、製品を保有していて、
僕たちに身近なところでいくと、自動車のタタ・モーターやジャガー・ランドローバー、航空のエア・インディアやヴィスタラ、ホテル事業のTajやVivanta、小売で時計ブランドのTitan(タイタン)やジュエリーブランドのTanishq(タニシェク)、コーヒーチェーンのスターバックス、消費財でミネラルウォーターブランドのHimalayanなどがあります。2B向けの事業においても、鉄鋼のタタ・スチールやITサービスのタタ・コンサルタンシーサービス(TCS)、電力のタタ・パワーなどを中心に幅広い事業を展開しています。
ちなみに、このタタグループの一族は、インドでは一般的にペルシャ人を意味する「パールシー」と呼ばれるゾロアスター教徒で、ムンバイやプネ、アーメダバードとかにゾロアスター教の寺院があります。遺体を「沈黙の塔」において鳥がついばんで骨になる、という「鳥葬」を行うことでも有名ですよね。ラタンタタ氏が亡くなったとき、ムンバイの空港近くにあるここの「沈黙の塔」で鳥葬が行われるのではとの憶測がありましたけど、結局はマハラシュトラ州による火葬が執り行われました。有名なゾロアスター教徒と言えばイギリスのロックバンド「クイーン」のボーカル、フレディーマーキュリーもパールシーのひとりで、幼少期をムンバイで過ごしています。
少し余談ですけど、インド国内にもパールシー料理のレストランを時々見かけるんですけど、辛さが控えめて日本人の口に合う料理が多いのでぜひぜひ食べてみてください。
話を戻すと、このゾロアスター教徒、年々減少してるんですよね。というのも、父親がゾロアスター教じゃないと信徒になれないので、女性が異教徒と結婚をすると信仰を捨てないといけないわけです。ラタン・タタ氏は生涯独身を貫いてそもそも子供がいなかったので後継者選びにはかなり苦労をしたみたいなんですけど、ゾロアスター教徒でかつ親族という限られた選択肢の中から、異母兄弟の妻の兄弟というサイラス・ミストリー氏を選んで、2012年から会長職を引き継いだんですけど、残念ながら2016年に解任され、2022年には交通事故で亡くなっています。2017年から新たに会長職についたのは、タタグループの150年近い歴史において初めてゾロアスター教徒でもなく親族でもないナタラジャン・チャンドラセカラン氏です。彼は、タタグループのITサービスTCSでCEOを務めた経験があるという実力者ですが、歴史の転換点を迎えているタタグループが今後どのような成長を見せてくれるのか、興味深いですよね。
さて、皆さんいかがでしたでしょうか?今回は、インドでビジネスをする上で知っておくべきインドの財閥について、そして、意外に知られていないタタグループと日本との繋がり、タタ一族の生い立ちや宗教、そして、後継者問題について解説いたしました。インドでの事業展開やインド人との関係構築の際の話のネタとしてもぜひご活用いただければと思います。また、インド財閥についてみなさんが知っている他にも面白い情報があればぜひぜひコメント欄で教えていただけると嬉しく思います。