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【2024年12月最新】インドのGCCの実態とは?ベンガルールの優遇政策を徹底解説!

インドのGCCの実態とは?ベンガルールの優遇政策を徹底解説!

今回はですね、インドのシリコンバレーと呼ばれるベンガルール、この街のカルナタカ州政府が発表したGCC(Global Capability Centers)に関する優遇制度について解説してみたいと思います。

サービス業を中心に成長してきたインドの経済成長について理解しておくとこのGCC(グローバルケーパビリティセンター)についてもよく理解できるんですけど、インド経済が自由化されてですね、外国直接投資を受け入れるようになった1991年以降ぐらいから、欧米系企業を中心に、コールセンターやさまざまなバックオフィス業務を担うBPO拠点として発展した経緯と、あと、世界中の情報システム部門や経理・人事などの機能を一手に引き受けるシェアードサービスセンターとかもインド国内に設置されるようになったんですね。私が15年ほど前に勤務していたアメリカの会社でも、インドのハイデラバードにシェアードサービスセンターを設置していて、日本を含む世界中の経理業務をインド人が一手に引き受けてやっていました。

そんな欧米系企業の下請け・オフショアのアウトソーシング先として成長してきたインドなんですけど、インドが担う役割・領域がサポート業務中心だったところからバリューチェーンの上流工程にまで拡大してきたことがこのグローバルケーパビリティセンターGCCの走りっていうわけですね。グローバルインハウスセンター(GIC)って言われたりすることもあるんですけど、研究開発やマーケティング、サプライチェーンマネジメント、リスクマネジメントなどの領域にまで広がって単なるオフショア拠点だったところからGCCとして上流工程を担う戦略拠点としてより強く認識されるようになったんですよね。

例えば、アメリカの大手小売業ターゲットもインドには一軒もお店はありませんけど、インド国内で数千人規模のインド人材を雇用して、小売価格を決定するためのプラットフォーム開発をしていたり、米国市場のデジタルマーケティングをやっていたりするわけですね。

現在インド国内には1700を超えるGCCがあって、その30%超にあたる500以上のGCCがカルナタカ州にあると言われていて、カルナタカ州政府は2029年までにこれを1000まで倍増させる目標を掲げています。そこで今回は、2024年9月にカルナタカ州政府が発表をしたGCC特化の優遇政策『Karnataka Global Capability Centre Policy 2024-29』について解説することでですね、インド人材に関心を持っている企業様や、インドで開発拠点やGCCの設置に関心を持っている企業様がインド進出を検討する際に参考にしていただる最新情報をご案内したいと思います。

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カルナタカ州政府が発表したGCC特化のインセンティブ

このカルナタカ州のGCC Policyは(1)Talent(人材)、(2)エコシステム、(3)インフラ、(4)法規制という4つの柱に対するインセンティブを、ベンガルール市内の企業と、それ以外の地域「Beyond Bengaluru」の企業、という2つの区分の企業に対して提供しています。インセンティブの詳細については後で詳しく解説しますが、「Beyond Bengaluru」の企業に対してはより手厚いインセンティブが設計されている点も特徴として挙げられます。「Beyond Bengaluru」っていうのはこの6つの街のことを指していて、最北のグルバルガはベンガルールから500キロぐらい離れているのでかなり遠い街も含まれてはいるんですけど、州政府はそれぞれの街の特徴をこんな感じで説明しています。

この中でも特にバンガロールから近い街3つについて補足をしておくと、
まず、トゥムクルはベンガルールからも車で2時間程度で行ける街で、もともと食品加工業の集積地として発展していましたが、最近はスマートシティ構想として選ばれた街の1つとして、ハイテク産業分野におけるインフラ整備が進んでいます。また、ここにはJapanese Industrial Township(JIT)と称する日本企業向けの工業団地が開発がされていて、すでに日立アステモやブラザー工業などの日本企業も進出をしています。

また、マンガロールはアラビア海を望む港湾都市で、生鮮食品加工業だったり、インド国内のコーヒー豆や木材、カシューナッツの輸出量が多い街としても知られていますが、コグニザントとかインフォシスなど多くのITサービス企業がソフトウェア開発拠点を構えているIT都市としても知られています。

なので、例えばインドのデトロイトと言われるチェンナイに対する州内第二の製造拠点と言えばコインバトールですが、ベンガルールに対する州内第二の製造拠点と言えばトゥムクル、州内第二のIT拠点と言えばマンガロールって感じですかね。

ちなみにマイソールはカルナタカ州で2番目に人口が多い街なんですけど、文化的首都とも言われるほどかつてマイソール王国の首都として栄えた歴史のある街で、日本企業が進出する街というよりは、マイソール宮殿を中心に日本人駐在員が観光として訪れるイメージが強い街です。ただ、インフォシスなどのIT企業の拠点があったり、日本企業でもアルミサッシ大手のYKKAPがマイソール企業の事業を買収する形でマイソールに進出しています。

少し脱線してしまったので話を戻しますと、カルナタカ州政府が発表したGCC特化のインセンティブはこの4の柱に基づいて提供されていて、それぞれの概要はこんな感じになっています。

(1)Talent(人材)に関しては、スキルトレーニングやインターン生受け入れにかかる費用補助、採用支援
(2)エコシステムに関しては、設備や技術投資補助、ラボやオフィススペースにかかる費用補助、イベント開催にかかる費用補助などがあります。
(3)インフラに関しては、「Beyond Bengaluru」の企業のみが対象となっていますが、オフィスの賃料や電気代や固定資産税の補助に加えて、社会保険料やインターネット通信費用の補助、コワーキングスペース運営事業者に対する補助、研究開発のインフラ投資にかかる補助などがあります。
(4)最後、4つ目の法規制に関しては、ヘルプデスク機能の提供、品質認証や特許出願にかかる費用補助があります。

人材に関する主なインセンティブ

人材に関する主なインセンティブについてはこの3つです。

詳細はここに記載されているとおりなんですけど、スキルトレーニングとインターン生受け入れに関するインセンティブについては、州内すべてのGCCが対象となっていますが、人材採用に関するインセンティブについてはベンガルール以外の6都市のみが対象となっています。また、スキルトレーニングと人材採用については従業員100人以上という条件付きとなっていますのでご留意ください。

エコシステムに関する主なインセンティブ

エコシステムに関する主なインセンティブについてはこの3つです。

詳細はここに記載されているとおりで、上の2つについては州内すべてのGCCが対象となっていますが、ラボやオフィススペースに関するインセンティブは、GCCが所有もしくは運営している既存のラボやオフィスを利用するスタートアップ向けのもので、州内すべてのスタートアップ企業を対象に、その利用費用100%を補助するという内容になっています。

インフラに関する主なインセンティブ

インフラに関する主なインセンティブについてはこの3つです。

こちらは原則、ベンガルール以外の6都市「Beyond Bengaluru」のGCC企業のみを対象としたインセンティブ設計になっているんですけど、唯一オフィスの電気代だけはベンガルール市内のGCCにも適用される形になっています。

オフィスの賃料や電気代、固定資産税、通信費用、社会保険料であるPFの拠出金などの補助については、新設のGCCに対してのみ適用され、かつ、従業員が100人以上という条件付きです。オフィスの賃料については100人以上雇用するGCCは最大500ルピーまで、500人以上雇用するGCCには最大2,000万ルピーまでの賃料補助が提案されています。

ちなみに、GCCではなく、コワーキングスペース運営事業者に対するインセンティブが提案されているところも大きな特徴です。

法規制に関するインセンティブ

最後に、法規制に関するインセンティブについてご紹介します。

このカテゴリーでは、「インセンティブクリニック」と呼ばれるヘルプデスク機能の設置が提案されていて、GCC設置に関する戦略支援や不動産仲介、また、政府職員や税務・法律の専門家チームによるサポートが得られる仕組みになっています。

また、品質認証手続きにかかる費用や、特許出願にかかる法定費用の一部を補助するというインセンティブが提案されていて、これらは州内すべてのGCCに適用されるもので特に条件の設定はされていません。

さて、本日はカルナタカ州政府が発表したGCC(Global Capability Centers)に関する優遇制度について解説いたしました。インド人材に関心を持っている企業様や、インドで開発拠点やGCCの設置に関心を持っている企業様がインド進出を検討する際に参考にしていただると嬉しく思います。

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