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【現地化の鍵】インド人材の適切なマネジメント方法とは?【インド駐在】

インド人材の適切なマネジメント方法とは?

今回はですね、インド人材のマネジメント方法を3つパターンに分けて解説してみたいと思います。

インド人をマネジメントするのって大変そう、そう思われている人は多いと思いますし、実際に苦労をされている日本人駐在員の声もよく聞きます。そこで本日は、インド人材のマネジメント方法を3つのパターンに分けて、それぞれのメリット・デメリット・注意点について解説をしたいと思います。

インド人材のマネジメントスタイルやその方法としては主にこの3つのパターンがあります。

1つ目は、日系企業の典型的なスタイルである日本人がインドに駐在をしてマネジメントするスタイル。
2つ目は、日本語ができるインド人を採用してマネジメントするスタイル。
3つ目は、経営経験のあるインド人材を採用してマネジメントをインド人に任せるスタイル。

また、それぞれのパターンの中でも、日本スタイル寄りになるパターンとインドスタイル寄りになるパターン、その中間の融合スタイルで分かれるのでそれによってパターンは9つに区分されることになりますが、特に、日本人が日本スタイルに寄り過ぎるパターンと、インド人がインドスタイルに寄り過ぎるパターンにおいて日系企業が陥りがちな落とし穴があるので、ひとつひとつ解説をしていきたいと思います。

日本とインドの手法の違い

そもそも、一般的なマネジメント手法として、日本のマネジメントスタイルとインドのマネジメントスタイルではどのような違いがあるかを最初に見ておきたいと思います。
ちなみに私個人としては、新卒でドメドメの日本企業で約5年と米国企業で約3年、そして、インドに移住してから12年超の業務経験からそれなりにいろんなマネジメントスタイルを見てきたつもりではあるんですけど、それでも多分に私の偏見が含まれていることを最初にお断りさせていただいた上で、

まず、日本のマネジメントスタイルとしてよく出てくるキーワードとしては、
部下からの報告・連絡・相談(ホウレンソウ)の大切さや、職場の人間関係、和を重んじてチームで協力、といったことが重要視される傾向にありますよね。

「お疲れさまです」「お先に失礼します。」といった相手を気づかうこういった言葉も日本の文化やスタイルをよく表しているなーと感じます。

それに対して、インドのマネジメントスタイルとしてよく言われるのは、
部下からのホウレンソウっていうよりは、むしろ上司からの的確な指示や会社としてのモニタリング機能の大切さだったり、職場の人間関係っていうよりは仕事のタスクが完了したかどうか、あとは明確な評価基準をベースとした個人間の競争といったことが重要視される傾向にあると思っています。

また、世界で初めて各国の国民文化の価値観を可視化したホフステードの6次元モデルに基づいて比較をすると、こんな感じになっているんですけど、ここで日本とインドの違いを見ると結構いろんなことが見えてきます。つまりこの6つの次元、権力格差、個人主義か集団主義、達成志向、不確実性の回避、長期志向、人生を楽しむ充足志向、それぞれについて、私の経験も踏まえて解説をするとこんな感じになります。

  1. インドは集団主義が強く、家族・出身地域を重視するし、集団に属さない人を排除する傾向がある
  2. インドは権力格差が大きいので、上司は部下に明確な指示をするし、部下をそれを期待する傾向がある
  3. 日本は不確実性の回避が異常に高く、曖昧なこと・不確実なことを嫌うが、インドはそれを許容できる耐性・柔軟性がある
  4. 日本は達成主義が世界的に見ても異常に強く、時間厳守・目標必達・徹底的に仕事の成果を求める
  5. 日本はインドよりも長期志向で、今日の利益を犠牲にしても、来年のより良い仕事の成果や生活の質を追い求める
  6. 日本は生活を楽しむ傾向が強く、インドは抑制志向が強いので、より厳格なルールはインドの方が受け入れられやすい。

ここで面白いなと思っているのは、日本もインドもほぼ同じ集団主義よりの中間に位置しているというところです。
私がもともと思っていたイメージでは、日本はかなり集団主義よりで、インドは個人主義よりなんじゃないかと思っていたんですけど、実は日本もインドもほぼ同じ中間に位置しているんですよね。
「インド・ウェイ 飛躍の経営」という書籍でも、インド人リーダー達が共通して行っていることの原則の1つに、「従業員とのホリスティック・エンゲージメント」っていうのが出てくるんですけど、ホリスティックっていうのは包括的なとか、全体的なという意味で、「従業員との包括的な深いつながり」とかっていう意味合いになりますけど、この点は私も50名ほどのインド人をマネジメントしている立場としてむちゃくちゃ共感できるので、ぜひご紹介したいと思います。

つまり、さっきホフステードの6次元モデルでも出てきたインドの「権力格差の高さ」と「集団主義」という文化的傾向から、インドでは従業員を家族的に包み込むようなリーダーシップが期待されている感があってですね、イメージとしてはインドの経営者は「良き父」でありかつ「慈悲深い独裁者」っていう感じなんですよね。つまり、さっきの表では一般的なスタイルとして日本こそが職場の人間関係を重視する傾向にある、という整理をしていたんですけど、インドの方が圧倒的に職場の人間関係に「家族感」を期待している傾向があると感じます。圧倒的な権力を持った愛情深い親とその家族たち、っていう関係というか、イメージ、例えば、圧倒的な権力を持った父親がCEO、愛情深い母親がCHRO、とその家族たちが従業員、という構図がインドの組織の縮図なのではと感じています。ここは、一定の組織においてインド人をマネジメントするすべての人が意識しておくべき特徴で、かつ、権力格差と集団主義というインドの文化的特徴としてむちゃくちゃ面白いところだと思っています。

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日本人駐在員自らがインド人をマネジメントするスタイル

それではインド人のマネジメント方法を見ていきたいと思いますが、まず1つ目は、日本人駐在員自らがインド人をマネジメントするスタイルですね。

日本企業はこのパターンがいちばん多いとは思うんですけど、実際、インドの文化を理解した上で、日本の良さとインドの良さをうまく融合できればこのスタイルでもうまく機能するケースは多いと思います。ただ、このスタイルのいちばん難しいところは駐在員の任期がだいたい3年ぐらいなので、マネジメント側とインド人従業員との継続的な信頼関係を構築しにくい、という弱点と、最悪、駐在員が交代したときに会社の雰囲気が良くも悪くもゴロっと変わってしまうケースもあるので、そのあたりのコントロールは簡単ではないなーと感じます。先ほどのインドの文化を考えても、父親が定期的にころころと変わってしまう家族の繋がりを維持するのって簡単ではないですよね。

あと、日本人駐在員が日本式のマネジメントスタイルをインド人従業員に押し付ける形になってしまうと、たいていチームづくりに失敗しているような気がするので、そこは要注意です。典型的なパターンだと、ホウレンソウをしてこない部下にイライラしてしまう一方で、むしろ部下に的確な指示ができていないケースや、時間通りに出社してこない部下を怒ってしまう一方で、むしろ遅くまで残業してくれている部下への配慮が一切ない、といったケースですかね。さっきインド人経営者のイメージとして「良き父」でありかつ「慈悲深い独裁者」っていう表現をしましたが、従業員との接し方やコミュニケーションの取り方については、ある種、従業員を家族と思えるほどの愛情と厳しさのバランス、そして、細かいことは気にしない遊び心を持って接していく必要はあるので、なかなか私自身もできていないので人のことは言えないんですけど、きっとこの感覚を意識的に持ちつつ経営していくことが重要なんだろうなーと実感しています。

日本語ができるインド人材を採用してインド人をマネジメントするスタイル

次に2つ目は、日本語ができるインド人材を採用してインド人をマネジメントするスタイルです。

このパターンは日本人駐在員の英語力が比較的に低い場合に多いスタイルで、例えば、タイやベトナムで日本語ができる現地人パートナーと一緒に仕事をしてきた経験がある日本企業が、同じスタイルで日本語ができるインド人材を通じてインド人をマネジメントしようとするケースに散見されます。このパターンの場合、まず最初に疑うべきは、日本語ができるそのインド人は本当に優秀か、という点です。タイやベトナムなどの国と比べて、英語がほぼ公用語になっているインドの都心部において、よっぽどアニメや漫画などの日本文化に興味を持っているインド人でない限りはそもそも日本語を勉強するインセンティブは基本的にないので、日本語が話せるインド人というのは本当にほんの一握りです。ビジネスレベルの日本語会話ができるインド人の中にはもちろん優秀な人もいますが、むしろ日本語という言語を武器に仕事をしてきたインド人の、日本語以外の仕事能力・スキルは大したことない、っていうケースも多いので、この点は十分に考慮した上でインドのマネジメント人材を採用する必要があります。

逆に、日本語は話せなくても、日本の文化や技術に興味を持ってくれているインド人を採用してですね、時間はかかりますけど、日本に駐在員として赴任してもらって将来の経営者候補を育てるという形もアリだと思います。

つまり、現時点で日本語が話せるインド人を採用するっていうものすごく狭いパイの中から見つける必要があるので優秀な人材を採用できる確率が低くなってしまいます。「人材の宝庫」と言われるインドにおいてそれはあまりにももったいないですよね。もう少しパイを広げて日本に興味を持っている優秀なインド人を見つけて、時間をかけて育てるわけですね。日本駐在期間中に日本語能力や日本の商習慣を時間をかけて理解してもらって、将来のインド拠点の経営者候補として育てることができれば、駐在期間が終わって本人がインドに帰国をしたときにインド現地法人のトップマネジメントとして活躍してくれる可能性、その確度は高められるのではないかと思います。

インド人材を採用してマネジメントをインド人に任せるスタイル

最後、3つ目は、経営経験のあるインド人材を採用してマネジメントをインド人に任せるスタイルですね。

これは欧米系の企業や一部の日系企業が採用をしているパターンなんですけど、例えば、グローバル企業でのマネジメント経験がある優秀なインド人材を採用して、インド人のマネジメントやインド法人の経営そのものをインド人に任せてしまうスタイルですね。

つまり、こういったインド人の部下として日本人が駐在する、というパターンだったり、インド現地法人の社長がインド人で、従業員も数百人・数千人いるにもかかわらず日本人駐在員がそもそもいなかったり、いても数人程度、というケースもあったりします。英語で対等にコミュニケーションが取れる日本本社の経営陣が社内にいて、それなりに高額な給与に対して予算が取れれば、なんなら日本本社の社長・役員メンバーなんかよりも高い給与をインド人に提示するケースもあると思いますが、圧倒的に優秀なインド人経営者のリーダーシップ能力・即戦力を買って、現地の経営をスピーディに現地側に任せていくスタイルですね。もはや、ここには日本のマネジメントスタイルがうんぬん、という話はほとんどなく、基本的には現地に権限移譲をして任せながら、日本側はグループ全体としてのシナジーや事業戦略の方向性という観点からインド現地側と調整をしていくようなイメージです。

個人的には、最終的に多くの企業がこのスタイルを目指すべきだと思っているんですけど、一方で、弊社も含めて身の丈にあった人材を採用しないとすぐ辞めてしまう、ということにもなりかねないですし、そもそも予算的に難しいっていう場合も多いとは思いますので、1つ前のところで紹介をしたような、時間をかけて、将来のインド人経営者候補を丁寧に育てる、というのも一案だとは思います。

ちなみに、インド人にマネジメントを任せてうまくいく場合の背景としては、もちろん選ばれたインド人経営者のインドにおけるリーダーシップ能力の高いから、っていうのもちろんそうだとは思うんですけど、GoogleやMicrosoft、IBMやシャネルやスターバックスなど、そうそうたる超一流企業のCEOにインド人が多い背景としても、私が感じているインド人経営者のリーダーシップ能力を分解するとこの5つに集約できると考えています。

妄想力と鈍感

1つ目は妄想力と鈍感力です。
会社が持っているリソースやスキルの限界を気にせずに将来の野望やヴィジョンを描く妄想力というか、普通に考えたら不可能に見えるむちゃくちゃ高い山を登ろうと、誰がどう思おうが、何を言われようが、気にせず目標を設定できてしまう鈍感力みたいなものですかね。

自信と愛情

2つ目は自信と愛情です。
根拠のない謎の自信に満ち溢れていて、愛情を持ってあなたなら絶対にできる、と無理に思えることを相手に可能だと思い込ませる超ポジティブ思考の人が多い気がします。このインド人マインドのおかげで、私も起業する勇気を持てた部分もありますし、半信半疑でやってみたら意外とできたみたいなことってよく起こるので、こういうマインドはインド人から学んだことの1つですね。

積み上げ力

3つ目は積み上げ力です。
インド人ってびっくりするほど失敗を想定しない、というかそもそも失敗を失敗だと思っていない節があって、日本人から見ると「ほら〜それ見たことか、だから言ったやん」って言いたくなるような状況になってもとにかく気にせず前に進もう、とにかく積み上げよう、っていう足し算思考のタイプが多い気がします。失敗を失敗だとは考えず、単なる通過点・何ならむしろ改善できるチャンスとさえ捉えているひとが多いところもインド人リーダーの特徴かなと思います。少し余談にはなりますけど、この点においては、引き算思考が得意な日本人はむしろ失敗やリスクを事前に予測して緻密に計画を立てるのが得意な傾向にあるので、事業計画の策定やリスクマネジメント・品質管理などの領域において日本人の強みを発揮できる傾向にあるのでは、と感じています。

トラブルシューティング力

4つ目はトラブルシューティング力です。
インド人経営者は 「とりあえずやってみよう」と見切り発車するスピード感のあるリーダーが多い印象ですが、同時に、トラブルシューティング能力がむちゃくちゃ高いんですよね。さっきお話した積み上げ力とも関係しますが、失敗もトラブルも織り込み済み、そんなことが起こるのは当たり前という感覚です。なので、状況に応じて素早く対応をする、いわゆるアジャイル式のソフトウェア開発との相性はいいように感じますけど、逆に、決められたとおりに作らなければならないフォーターフォール型とか、欠陥品が許されない精密さが求められる製造現場との相性はもしかしたら悪い傾向があるようにも感じるので、この点はインドの教育システムという観点もセットで中長期的に考えていくべき課題かなと感じています。

猛獣使いスキル

最後5つ目は、猛獣使いスキルです。
インド人経営者は、表現は悪いですけどあらゆる猛獣を使うスキルが異様に高いんですよね。多種多様な人材に対して分業させて的確に指示を出す。細かいことは気にせずにある程度の自由は与えつつも、必要なルールや仕組みを作って、ビジネスの結果に対してはトップダウンで指示して徹底的に成果を求めます。単なる「独裁者」だと人はついてこないと思うんですけど、冒頭でも少しお話をした「良き父」「慈悲深い独裁者」っていうところとも繋がる部分ですね。

この5つ目の、猛獣使いとしてのスキルの高さは、インドの分業制度や下請け文化から別の観点から考察をすると面白いんですけど、ちょっと今回の動画からは論点がずれてしまうので次回の動画で解説してみたいと思います。見逃したくない方はぜひチャンネル登録をして公開までお待ちいただければと思います。

さて、本日はインド人材のマネジメント方法とそのスタイルの特徴について解説しました。インド進出をご検討されている企業様や、インド国内ですでに事業を行っている企業様は、ぜひ参考にしていただければと思います。

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