【速報!】株式等の電子化手続きの期限延長とよくある質問集
【速報!】株式等の電子化手続きの期限延長とよくある質問集
今回はですね、インドに進出されている企業様であればみなさんご存知だとは思いますが、ちょうど1年ほど前から騒がれていた株券等の電子化義務に関する新しい通達が発表されましたのでその通達の内容とその影響について解説してみたいと思います。
また、動画の最後には今まさに手続き中という企業様に向けて、株券の電子化手続きや必要な書類について実際に企業様からよくいただくご質問を5つご紹介いたします。
株券の電子化とは
まず、株券の電子化って何?という方に向けて簡単にご説明をしておきますと、2023年10月27日付のインド企業省が発表した通達によって、一部の例外企業を除くすべての非公開会社に株式等の有価証券を電子化することが実質義務付けられた、というものです。インドに進出しているほとんどの日本企業が適用対象になっていてですね、この手続きの全体像についてはこちらの動画で詳しく解説をしていますので、ご興味のある方はぜひこちらの動画をご覧ください。
話を戻しますと、実はこの株券等の電子化の対応期限が2023年3月末の会計年度末日から18ヶ月以内、つまりほとんど既存企業様については2024年9月末までに対応すべきだった、ということになるんですけど、実際に期限内に完了した企業はむしろ稀でした。っていうのも、株券等の電子化義務が発表された後にですね、2024年4月以降ぐらいからISIN(証券識別コード)を発行するRTAというインド証券取引委員会登録業者や、Demat Account 等を管理する金融機関Depository Participantへの業務負荷が集中してしまって、各所で手続きの遅延が多発している状況だったんですよね。
弊社でも、お客様からお預かりをした書類をRTAに確認してもらったり、書類を当局に提出してからDemat Accountが開設されるまでに数週間、場合によっては1ヶ月以上待たされたり、といった状況が継続的に発生していたので困っていたんですが、そんな状況下において2025年2月12日付の通達で、この対応期限が2025年6月末まで延長されることが公表されたわけです。
そもそも2024年の9月末が期限だったわけですから期限延長するならもっとはよ言ってや、って感じですが、2月になってからいまさら延長を発表するあたりがいかにもインドらしいタイミングですよね。
ちなみに、この延長による影響は以下3点であると考えています。
- これまで実際に罰則が科された事例は見受けられなかったものの、形式的に法令違反の状態にあった日本企業にとっては6月末までは罰則対象外となり救済措置が明文化された形
- 2025年6月末までは引き続き紙ベースの株券現物を保有することができ、かつ、増資による新株発行や株式の譲渡については同日まで引き続き現物で手続きを実施することができる
- まだ株券の電子化手続きが完了していない企業様で、今後、増資や株式譲渡を予定している企業様は(さすがにさらなる延長はされない可能性が高いであろうという状況なので)2025年6月末までにいずれかの手続きを終わらせておく必要あり
ちなみに、当初の対応期限が2024年9月末で、今回発表された延長後の期限が2025年6月末なので、形式的には9ヶ月間の猶予期間が与えられた形ですが、この期限延長が実際に発表されたのが2月なので実質あと4ヶ月ぐらいしかないですよね。また、RTAやDPなどの政府公認の関連業者は引き続きパンク状態が続いていて企業様の希望通りに手続きが進むのかどうかも不透明な状況です。これまでは幸いにも罰則が科された事例はありませんでしたが、今度こそは罰則が科される可能性も高くなってきているので、そのリスクも認識をした上で、なるべく早く手続きを進めていく必要があります。
そこで、ここからの後半は、今まさに手続き中という企業様に向けて、株券の電子化手続きにおいて実際に企業様からよくいただくご質問を5つご紹介してみたいと思います。
株券の電子化手続きに関するよくあるご質問
株券の電子化手続きの全体像とそれに要する期間は?
まず1つ目の質問は、株券の電子化手続きの全体像とそれに要する期間はどれぐらいか?というご質問です。
株主側と現地法人側で、それぞれこんな感じで手続きが分かれます。
株主側ではPANを取得して、Demat Accountを開設、そして、株券を電子化するという流れで、特にDemat Accountの開設には大量の書類提出が求められるのでいちばん時間がかかります。弊社のこれまでの事例では必要書類の準備期間も含めて約4〜6ヶ月程度は見ておいた方が良いと考えています。
また、現地法人側の手続きとしては既存法人については附属定款AOAの変更をして、ISIN(証券識別コード)の取得、そして、年に2回会社登記局に対して株式情報に関する登記をする、という流れですが、手続きに時間がかかるのはISINの取得で、こちらは概ね1〜2ヶ月程度見ておいて方が良いと思います。
手続きをスムーズに進めるためのポイントは?
2つ目の質問は、手続きをスムーズに進めるためのポイントは?というご質問です。
手続きをスムーズに進めるためのポイントは、なんと言っても書類の全体像・手続きの全体像を把握した上で、企業様側で準備する必要のある書類や、翻訳が必要となるこういった書類の準備を先に進めておくことが重要です。また、署名・捺印場所の確認、署名が必要となる取締役等のスケジュールなどを確認しておき、スムーズに書類への署名・捺印ができる体制を作っておくことも大切です。
全取締役の本人確認書類を集めるのが困難な場合の対処法は?
3つ目の質問は、全取締役の本人確認書類を集めるのが困難な場合どうすればいいですか?というご質問です。
Demat Accountの開設手続きにおいては株主側の全取締役のID ProofとAddress Proof、通常はパスポートと運転免許証の英訳、いわゆるKYC documentsが必要になります。KYCというのは「Know Your Customer」の略語で、本人確認書類という意味合いで使われる言葉なんですけど、何らかの理由でいずれかの書類の入手が困難な場合も起こり得ます。この場合には、Declaration for KYC documentsというレターを別途準備してですね、特定の書類が提出ができない理由と合わせてその該当の取締役の名前を明記した上でレターを提出することで、KYC documentの提出を一部免除してもらうことが可能です。
公証・アポスティーユ認証が必要な書類とその有効期限は?
4つ目の質問は、公証・アポスティーユ認証が必要な書類の有効期限ってありますか?というご質問です。
例えば、Demat Accountの開設手続きにおいてはこういった書類に公証・アポスティーユ認証の付与が必要になりますが、公証・アポスティーユ認証日から2ヶ月間が書類の有効期限になります。
なので、公証・アポティーユ認証の手続きを行うのは、あくまですべての書類の準備がある程度完了して、かつ、公証・アポスティーユ認証の前にそのドラフト版を提出先であるRTAやDPなどが事前に確認をしてから実施するのが望ましいと思います。
もし期限までに対応できなかった場合の罰則は?
そして、最後の質問は、もし期限までに対応できなかった場合に罰則規定はありますか?というご質問です。
これについては、株主側のDemat Accountの開設や株券等の電子化手続きが実施できなかったことによる株主側に対する直接的な罰則は規定されていないんですけど、インド現地法人側の適用法令である会社法規則に違反した場合の罰則として、インド会社法第450条に規定されるこういった罰金がインド現地法人の企業および取締役それぞれに課される可能性がありますのでご留意ください。
皆さん、いかがでしたでしょうか?今回は、株券等の電子化義務に関する新しい通達の内容とその影響、また、企業様からよくいただくご質問について解説をいたしました。インド進出をご検討されている企業様や、インド国内ですでに事業を行っている企業様はぜひ参考にしていただければと思います。