【2025年4月の最新ニュース】衛星通信スターリンクついにインド参入!対立から一転の舞台裏とは
衛星通信スターリンクついにインド参入!対立から一転の舞台裏とは
今月からですね、インドの経済やビジネスに関連する最新ニュースを毎月1つ取り上げて解説する、という企画をスタートしてみたいと思います。これは、インド関連のニュースに対してもっと感度を上げてキャッチアップしていこうという試みで、皆さんと一緒にインドの経済やビジネスについて学んでいければと思っていますので、ぜひぜひ楽しみにしていてください。
さて、記念すべき初回に私がピックアップしたのは「スターリンクがインド進出、現地2大通信企業と提携」というニュースです。
スターリンクっていうのは、アメリカの実業家イーロンマスク氏の宇宙企業スペースXが提供している衛星通信サービスですよね。イーロンマスクはテスラでもインド市場に参入しようとしていて、すでにインド国内で人材採用を始めている、という報道もありますけど、このスターリンクが、インド国内通信大手のジオやエアテルと提携をすることで、何が起きようとしているのか、その背景にはどのような戦略があるのかを考察してみたいと思います。
まず、衛生通信サービス「スターリンク」の概要と、インドにおけるこれまでの動きについて整理しておきたいと思います。
衛生通信サービス「スターリンク」の概要
スターリンク(Starlink)っていうのは、何千機もの低軌道衛星を使った「衛星ブロードバンドインターネット」のことで、これを導入すると、通信環境が整備されていない山間部や農村地域など、これまで通信インフラが届きにくかった遠隔地に対しても、高速かつ遅延の少ないのインターネット環境を提供できる、という特徴があります。
あと、万が一衛星が軌道上で故障して高度が低下してしまった場合でも、地球の大気圏に突入すると消滅するように設計されているので、宇宙ゴミが発生しなくて、かつ、地球にも危険を及ぼさない、という安全性に配慮して設計されている点も大きな特徴としてあげられます。
現在私たちが使っているインターネットの多くは、世界中に張り巡らされた海底通信ケーブルと基地局の設置という多額の長期投資によって支えられているわけですけど、衛星通信の場合はその仕組みが根本から変わるので、初期投資はかかるけど長期的に見ると事業コストが抑えられるという側面もあるようです。事実、スターリンクの仕組みとしては、受信機としてのアンテナを屋上とかに設置するだけで、その近くを飛んでいる衛星と通信を行ってインターネット環境をつくることができるので、原則、場所を問わずブロードバンドインターネット環境を構築できるわけですね。
インドにおけるこれまでの動き
日本ではすでにNTT DocomoやKDDI・ソフトバンクなども正規販売代理店としてスターリンクのサービスを提供していますが、インドでは2025年3月末現在まだ正式にスタートしていません。っていうのも、スターリンクは2022年10月にインド政府に対してGMPCSライセンスを申請したんですけど、2年以上経った今もまだライセンスが取れてないんですよね。同じくAmazonの『Project Kuiper』もインドで衛星通信サービスを提供するべくライセンスを申請していますがまだ承認されていません。GMPCSっていうのはGlobal Mobile Personal Communication by Satelliteの略語で、インド通信省の電気通信局(DoT)が規定するインド国内で衛星通信サービスを提供する事業者が取得すべき衛星利用移動通信ライセンスを指すんですけど、2025年3月末現在でこのライセンスを持っているのは、インド国内通信最大手のジオ・プラットフォームズと、2番手のエアテルが提携しているワン・ウェブの2社だけとなっています。
こういった背景もあって、すでにこのライセンス持っているインド国内通信最大手のジオは、競合にあたるスターリンクのインド市場参入に対してかなり敏感に警戒をしてきた経緯があるんですけど、ここにきて一転、2025年3月12日についにスターリンクとの提携に合意をした、というわけです。さらに業界2番手のエアテル、3番手のボーダフォンまでスターリンクとの提携に動き出していることを考えると、通信業界に与えるインパクトがむちゃくちゃデカいことがよくわかります。
ちなみに、ジオは2016年9月に発表した4G対応の携帯端末と通信サービスの無料提供によってインドのインターネット普及率が爆増するというインドの通信革命を引き起こした立役者なんですけど、
ジオはインド大手財閥リライアンスの傘下の企業で、リライアンスの会長・ムケシュ・アンバニ氏は、毎年長者番付の上位に名を連ねるインド最大の富豪です。つまり、今回のジオとスターリンクの提携っていうのは、ムケシュ・アンバニとイーロン・マスクというこの富豪たちが競合せずに協業していくという流れに変わったということを意味しているので、インド国内のインターネット通信環境のさらなる変革につながっていく可能性も計り知れないものと感じています。
スターリンクのこれからの動き
一方で、先行きが不透明なところもたくさんあります。
今回の一連の提携については、スターリンクがインド政府からGMPCSライセンスを取得することが条件になっているんですけど、果たしていつライセンスが取れるのは現時点で分からない、ということです。つまり、このライセンスを取得するために、こういったさまざまな条件を満たす必要があって、特にスターリンクを通じた衛星通信が、インドの国家主権や安全保障を脅かす結果とならないよう、インド政府も外国企業に対するGMPCSライセンスの付与についてはかなり慎重になっているわけですね。
また、すでにライセンスを持っているジオやエアテルが、衛星事業に対して積極投資をして自力で事業拡大をしていく可能性もありますよね。つまり、スターリンクへの依存度をどんどん下げていく可能性もあるので、今回の提携合意がどれぐらい続いていくのかは正直まだわからない、というのが現状だと思います。このあたりが先行きが不透明なところとして残っているので、今後の動向が注目されるところです。
皆さん、いかがでしたでしょうか?今回は、インドの経済やビジネスに関連する最新ニュースとして、スターリンクがインド進出についてのニュースを取り上げてみました。インドに住む日本人駐在員やインドに進出を検討されている方はぜひ参考にしていただけると嬉しく思います。