youtube

新規赴任者向けYoutubeチャンネル

越境テレワークで優秀人材の離職を防ぐ方法|EOR活用と企業の対策とは?【海外移住/インド】

越境テレワークで優秀人材の離職を防ぐ方法

今回はですね、海外で越境テレワークを実施する際の重要論点について、インドの場合にどのような影響があるかを考察してみたいと思います。

海外移住に興味を持っている人も増えていると思いますが、今の仕事を辞めて海外に移住するのは少しハードルが高いって感じる人も多いですよね。そんな中で「日本の仕事をそのまま海外に住みながら続ける」いわゆる「越境テレワーク」という働き方を選択する人や、それをサポートする企業も徐々に増えてきています。しかしその裏側には、ビザの壁、社会保障制度の違い、税制の複雑さといった、私たちが普段あまり意識しない課題もたくさんあります。そこで今回は、インドで実際に越境テレワークをした場合の具体的な事例に基づいて、そのメリット・デメリットや各種論点の影響について解説してみたいと思います。

越境テレワークとは?

リモートワーク自体はもはや新しいものじゃなくなっていますけど、「越境テレワーク」については企業のグローバル展開とともに、新しいリモートワークのトレンドとして注目されつつあるように思います。ここでいう「越境テレワーク」っていうのは、従業員が自社の海外支店や海外現地法人には在籍をせずに、日本国内企業に在籍したまま日本国外で働くスタイルのことを指してまして、今回の動画では特に「日本の仕事をインドで行う」というスタイルにフォーカスをして解説をしたいと思います。これは自らがインドに移住するパターンもあれば、配偶者のインド駐在に帯同するパターンもありますが、日本国内企業に引き続き籍を置きながらも、インドに移住をしてリモートで勤務するっていう点において、従来の「海外転勤」や「海外赴任」とはちょっと違います。

あと、今回の「越境テレワーク」の定義からは少し外れますけど、日本国内で勤務していたインド人が何らかの事情によりインドに帰国をすることとなった場合に、日本国内企業をいったん退職してもらった上で、インドに帰国後も引き続きリモートで日本の仕事をしてもらうというパターンも想定されます。日本でインド人材を雇用している企業様にとっては、こういった越境テレワークの仕組みを活用することで、優秀なインド人材の突然の離職をある程度未然に防ぐことができると思うので、人事制度としてぜひ積極的に取り入れていただくのが良いと考えています。

動画を見る

越境テレワークの法的・社会的課題

この「越境テレワーク」という働き方はいろいろメリットがありますけど、一方で法的な課題や社会保障・課税関係の点からどのような影響があるのか、その仕組みをよく理解しておく必要があります。要は、従業員が異なる国の法律の下で働くことになるため、ビザの要件、労働法や税法、社会保障制度などが複雑に絡み合います。例えば、どのビザを取得すべきか、どの国の社会保障に加入するべきか、所得税をどのように納税すべきか、といった問題で、こういった点が明確になっていない場合、個人所得税の二重課税が発生しちゃったり、社会保障制度に加入できなかったり、最悪のケース不法就労などにも発展しかねません。

越境テレワークを実施する場合の典型的な4つのパターン

ここからはインドで「越境テレワーク」を実施する場合の典型的なパターン4つにおいて、それぞれの重要論点を解説していきたいと思います。

(1)日本に在籍したまま長期出張パターン

まず1つ目は、入門編ですが、日本に在籍したまま長期出張するパターンです。

これは従来からある当たり前の選択肢なのでわざわざ説明する必要はないかもしれませんけど、もっとも簡単に実施できる方法です。つまり、ビジネスビザを取ってインドに出張に来て、越境テレワークをすればいいというだけの話で、社会保障の点では労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金いずれをとっても基本的には日本で勤務をしている従業員と同じ扱いになるんですけど、一方で、いろいろと制限があるのでその点は注意が必要かなと思います。例えば、ビジネスビザで長期出張をしても、インドでルピー建口座を開設することはできないですし、基本ホテル暮らしで、家族を連れていくこともできません。日印租税条約の規定上、課税期間においてももし年間183日を超えてインドに滞在をすると、日本とインドの両国で所得税を納税しなければならなくなってしまいます。なので、長期出張パターンの場合はみなさんインド滞在日数を調整しながら出張されるのが一般的です。ただ、EOR(Employer of Record)という代替雇用サービスを活用することで、こういった制限を解消することができますので次のパターンの中でご紹介したいと思います。

(2)日本に在籍したままインド移住パターン

2つ目は、日本に在籍したままインドに移住するパターンです。

長期出張パターンで発生するいろいろな制限を解消できるのがEORを活用したインド移住パターンで、EORが現地での法的な雇用主および身元引受人として機能することで、ビジネスビザではなく、正規の就労ビザを取得することができるようになります。就労ビザを取得することで、ルピー建の口座開設ができるようになり、長期滞在を前提としたアパート等の賃貸契約ができるようになり、そして、家族帯同も可能になります。1年以上インドで仕事をする前提であれば、日本では税務上の非居住者になるので日本では原則、所得税を納税せずにインドで所得税を納税する形になります。ちなみに、労災保険は「海外特別加入制度」もあり基本的に日本で勤務をしている従業員と同じ扱いとなりますし、一部であっても日本側で給料が支払われている限りにおいては健康保険・厚生年金も引き続き継続されます。ただ、インドで発生した医療費については、インド国内の病院で日本の健康保険証をそのまま使うことができないので、いったんは全額自分で負担する必要があります。この場合、日本に帰国した時に、「海外療養費」として治療費を請求することができ点も覚えておくと良いと思います。

一方で、雇用保険についてはもし本人都合でインドに移住してしまうと、出張や転勤・出向など会社の命令によるものではないので、被保険者資格を喪失してしまう可能性があるのでこの点はぜひ注意していただければと思います。

(3)日本に在籍したまま配偶者のインド駐在に帯同パターン

3つ目は、日本に在籍したまま配偶者のインド駐在に帯同するパターンです。

従来は、例えば、配偶者のインド駐在が決まった場合の選択肢としては、日本の仕事を辞めて配偶者のインド駐在に帯同をするか、日本での仕事を辞めずに日本に残るか、の2択しかなく、企業にとっては優秀な人材が辞めてしまうひとつの大きな理由になっていました。実際、このアンケート結果でも特に女性の離職理由の圧倒的No.1が配偶者の転勤であることがよくわかります。ただ、EORを活用すれば、日本での仕事をやめずにインド駐在に帯同することができるようになります。この場合、所得税や社会保障の影響についてはさっき説明をしたとおりなんですけど、このパターンにおける重要な論点は主に2つあってですね、1つは、帯同ビザではなく就労ビザを取得する必要がある、ということです。通常、家族帯同者は帯同ビザを取得することになるんですけど、帯同ビザの場合は法的にインド国内では就業しちゃいけないことになっているので必ず就労ビザを取る必要があるっていうことですね。そして2つ目は、逆に就労ビザを取得することによるマイナスの影響はないか、ということです。例えば、就労ビザを取ることで配偶者側の家族帯同手当などが減額されてしまう可能性もあると思いますので、就労ビザ取得によってどのような影響が出るかをある程度事前に確認しておく必要があります。

ちなみに、日本とインドとの間には2016年10月にすでに日印社会保障協定が締結・発効しているんですけど、EORが海外の拠点と見なされる場合には、日本年金機構が発行する適用証明書(COC : Certificate Of Coverage)を取得することでインド側の社会保障制度への加入を免除できるんですけど、EORが海外の拠点と見なされない場合にはこの適用証明書が入手できない可能性もあるので、インドでも社会保険料を払わなければならなくなります。この点は日本年金機構に対して事前に確認しておくことをおすすめいたします。

(4)日本国内企業を退職してインドに移住パターン

最後4つ目は、日本国内企業を退職してインドに帰国するパターンです。

これは日本ですでに仕事をしているインド人がインド本国に帰国しなければならなくなった場合において活用できる典型的なパターンです。
従来は、インド人がインドに帰国しなければならなくなった場合に日本国内企業がインドに支店や現地法人を持っていない限りはインド人はその後まもなく退職をしてしまう、というケースが頻発していました。日本に移住をして勤務しているインド人も、家族の病気や自身の結婚などを理由に数年後にインドに帰国してしまうケースは少なくありません。せっかく優秀なインド人材を日本で採用できたとしても、インドへの帰国を理由に突然辞めてしまってはもったいないですよね。そこでEORを活用して日本国内だけじゃなく、彼らの母国インドでも帰国後に引き続きリモートで活躍ができる中長期的なキャリアプランや人事制度をつくっていくことは、これからの時代に求められている海外人材の離職を未然に防ぐための対応策のひとつになり得ますよね。

人材不足に直面する企業が、越境テレワークという新しい働き方を積極的にサポートしていくことによって、優秀な人材の流出を未然に防いで、かつ、中長期的な視点を持ってグローバル人材を獲得したり、海外事業をより強化していくことにつながっていくものと思います。

さて、皆さん、いかがでしたでしょうか?今回は、インド国内で越境テレワークを実施する際の典型的なパターンと、重要論点について解説してみました。インドへの事業展開を見据えた新しいリモートワークのトレンドにご興味のある企業様、そして、日本ですでにインド人を雇用されている企業様などはぜひぜひ参考にしていただけると嬉しく思います。

動画を見る