インド人採用、成功と失敗を分ける15のポイントとは?現地で学んだ真実を解説!
今回はですね、インド人を採用する前にぜひ知っておいてほしいこと15選をご紹介したいと思います。
インド人の採用を検討されている企業様は多いと思いますが、具体的にどのように採用プロセスを設計すべきか、どうすれば優秀な人材を採用できるのか、頭を悩ませている担当者も多いと思います。実際、人口大国インドにおいて、ピンからキリまで有象無象いるインド候補者の中から自社に合った人材を発掘するのは簡単ではありません。そこで今回は、インドで10年以上採用活動をしてきた私自身の経験と、インドで人材紹介事業を行っている人材のプロから聞いた話を集約して、インド人材採用のTipsをみなさんにご共有できればと思っています。
採用活動における事前準備
それではまずインド人材を採用する際の事前準備フェーズから行ってみましょう。
1つ目は、ターゲットの明確化とメッセージ設計です。
当たり前の話ではありますけど、求人ターゲットの人物像を明確にして、そのターゲットに刺さるであろう企業の魅力を言語化しておくことはインドではむちゃくちゃ大切です。弊社の場合だと、例えば、若手の経理スタッフを採用するときは、経理経験3〜5年程度でまだインド国内取引を中心とした経理経験しかない20代若手の中から、成長意欲が高くてグローバルに活躍したい優秀な若手人材で、かつ、弊社の価値観・企業文化に合う候補者っていうのがターゲットの人物像になっています。こういったターゲットに刺さるであろうキャリアプランとして、日系企業を顧客に持つ弊社が提供できる就業機会として、グローバル企業との国際取引や関連者間取引、国際税務、さらに、上場企業において要求される連結パッケージの作成など、入社いただくことで幅広い会計・税務業務に加えてグローバルな業務経験を積める点、そして、継続的な事業成長によって社内でより高い役職や新たな事業部門の立ち上げなど多様なキャリアを目指していただける点などを魅力訴求のポイントにしています。これは弊社オフィスにも掲示している7つのバリューなんですけど、こういった弊社が大切している価値観・バリューを問うような質問をしたり、候補者からの質問に対しては積極的に弊社の企業文化と関連づけて説明をするようにしています。本来はパワポや動画などを作ってよりビジュアルでわかりやすく説明できた方がいいので、この点はまだ私もできていないんですが少しずつやっていきたいなと思っているところです。
2つ目はジョブディスクリプション(JD)の明確化です。
インド国内では基本的にジョブ型雇用の考え方がベースになっているので、企業様が募集しているポジションでは具体的にどのような仕事をすることが前提になっているのか、ジョブディスクリプション(JD)にはできる限り詳細な業務内容を記載した上で、さらに、面接では追加業務を依頼する可能性も合わせて伝えておくことが重要です。インドでは日本よりも分業制となっていて、仕事も役職も細分化されてしまっているケースも多いので、例えば前職が経理マネージャーという役職であっても、私たちが期待する経理マネージャーとしての包括的な経験を持っていないことがほとんどです。なので、JDの説明が不足すると、入社後に候補者は「思っていた仕事内容とは違った」企業側としても「期待していたパフォーマンスがぜんぜん出ない」ということになって、業務内容のミスマッチを理由に、残念ながら早期離職に繋がってしまうリスクもあるので、JDを明確にすると同時に、仕事の業務範囲に対する柔軟性や意欲についても確認・評価しておくことはむちゃくちゃ重要です。
3つ目はインドにおける転職回数の意味、についてです。
インドでは日本と違って「転職回数が多い=市場価値が高い人材」と見られる節があるんですよね。我々日本人の感覚だと、例えば30歳で3~4回の転職はちょっと多すぎるんじゃないかとか、この人はいわゆるジョブホッパーなんじゃないか?とネガティブなレッテルを貼ってしてしまいがちなんですけど、インドではむしろ30歳で3〜4回の転職は当たり前で、転職の都度普通に年収が30%ぐらい上がるインド転職市場において、30%も年収を上げたとしても内定が取れている人材として、実際に優秀な人材はたくさんいるので、レジュメの書類選考のタイミングで転職回数をあまり過度に気にする必要はないと思います。むしろ、こういった人材が入社した後にすぐに辞めないよう、社内でキャリアアップの仕組みやインセンティブ設計を整備して、自社で中長期的に仕事をすることの将来性・メリットをどれだけ伝えられるか、それをどれだけ言語化できているかの方がよほど大切になります。
4つ目はレジュメの信頼性を鵜呑みにしないということです。
インドには履歴書・レジュメ作成代行サービスも結構多くて、同じようなレジュメに出くわすことも多々あります。自分でちゃんと作成していたとしても上司がやっていただけ、部下にやらせていただけ、という業務を自分がやっていたかのように記載しているケースも多いので、正直、レジュメの内容はそもそも信頼していなくて、私が面接をする際も事前にレジュメを見ることはほとんどありません。履歴書の写真からもう結構テキトーですからね(笑)、旅行先で撮ったようなカジュアルな写真を使っているケースも多いですし、過去にグラサンかけた写真でエントリーしてきた強者もいたそうです(笑)。なので履歴書はいったん置いておいて、面接を通じて候補者の実務経験を深掘りして、レジュメに書かれている内容と整合するかどうかを見ながら、候補者のパフォーマンスの期待値をひとつひとつ見極めていくイメージですね。
5つ目は採用基準の社内トレーニングです。
最初は日本人駐在員や本社人事部門の日本人が自ら書類選考や1次面接、最終面接までの一連の採用プロセスを実際に経験できると理想的です。つまり、インド人候補者に対してどのような採用基準を設定すべきか、いろいろと試行錯誤する中で徐々にその基準を共通認識として固めていくことができるといいんですけど、ただ、会社の事業規模の拡大とともに採用人数が増えてくると、すべての候補者の1次面接に日本人が同席するのが難しくなってきます。この時、インド現地法人であれば日本人駐在員の代わりに人事部門や部門責任者のインド人が1次面接の役割を担っていったり、人材紹介会社に1次面接によるスクリーニングを任せていったりするケースは多いと思いますけど、この1次面接を実施するメンバーが同じ採用基準で候補者を評価できているか、面接手法として候補者に対してより有効な質問やアプローチができているか、という点でのモニタリングは疎かになりがちです。日本人メンバーが2次面接や最終面接のみを実施する場合においては、最初のスクリーニングで隠れた逸材を間違って不採用としてしまうリスクや、明らかに不採用とすべき候補者を次の選考に進めてしまうリスクを軽減するために、採用基準の社内トレーニングはむちゃくちゃ重要になります。
採用活動における面接について
ここからはインド人材の面接フェーズに入っていきますが、
6つ目は面接は“見極め”より“マッチング”重視という点です。
これは当たり前の話ではあるんですけど、採用面接の目的は候補者の見極めではなくて、企業と候補者のマッチングですよね。インド人に対してなぜか高圧的な態度をとってしまう日本人もときどきいますが、面接は「お互いが選び合うための場」という大前提をあらためて認識をした上で、むしろ候補者にジャッジされているという意識を持って、自社のこともより多く知ってもらうためにオープンに質問を受け付け、丁寧に説明をすること、場合によってはわかりやすいプレゼンテーションを事前に準備しておくなどして、自社に対してより良いイメージを持ってもらったり、強く印象付けられるよう工夫をするなども有効です。
7つ目は英語面接に慣れない場合の対応策です。
英語での面接に慣れていないケースは多いと思いますし、インド人の場合は早口で自己主張も強い、話が長い候補者も比較的多いんですけど、こういった場合には、途中話を遮っても良いのでゆっくり話すように依頼をしたり、理解ができなかった場合は再度分かりやすく簡潔に説明をするように依頼をしたり、いったん自分の理解を伝えて、その理解で正しいかどうかを相手に確認してもらうといった形をとるのが良いと思います。そもそも、こういった依頼に対して候補者がどのように対応するか、そのプロセスそのものを見ることで相手のコミュニケーション能力や人となりを評価できる機会にもなります。また、人材紹介会社やコンサルタントに同席を依頼して、候補者とのやりとりを観察することで、候補者をより客観的に評価しやすい環境をつくるという対応策も有効なのでぜひご検討ください。
8つ目はスキル確認はオープンクエスチョンで、ていう論点ですね。
インド人候補者は自分ができないことをできないとは言わず、できると思う(たぶん)という感じでYes I can do thatと自信満々に答えてくる傾向があります。つまり、”Can you ~?”とかっていう質問はほぼほぼ候補者全員が「Yes」って答えてくるので、Yes/Noで答えられる質問についてはほぼ聞く意味がありません。できるかどうかを確認するのではなく、何をやったのか、ひとりでやったのか、誰と一緒にやったのか、どうやってやったのか、それをやる理由はなんなのか、などいわゆる5W1Hのオープンクエスチョンで候補者の具体的な経験を深掘りして、レジュメに書かれていない内容も含めて現場感のあるリアルな情報をひとつひとつ確認していくことが大切です。
9つ目はスピード重視のスケジュール設定です。
インドでは2週間ぐらいでオファーが出るケースも多くて選考プロセスが結構速いんですよね。1次面接をして数日で結果を出して、1週間以内に最終面接をしてそこから数日で採用結果が出るみたいなスピード感です。なんなら当日に今日の午後面接しましょう、と即日面接をしてしまうケースもあるので(笑)、いきなり職場を抜けて面接をしてしまう候補者も候補者ですが、このへんのスピード感は割と一般的なのでむしろこのスピード感を活用していく戦略はありだと思います。あとは、候補者同士の比較ができた方が選考しやすいという側面もあるので、ある程度候補者をまとめて面接をして比較検討ができるように一定期間に集中して日程調整を組んだりして、あらかじめ日本よりも早い選考スピードに備えておくと良いと思います。
10個目は面接官によって見え隠れする候補者の表裏です。
これは日本でも起こり得ることだとは思いますけど、これまでインドで私がよく経験したことのひとつです。例えば、1次面接を担当した部門長が推薦している候補者を、私が最終面接すると(このとき部門長もオブザーバーとして同席させるんですけど)、候補者の印象が1次面接のときとはまったく違って部門長がショックを受ける、ということが頻発するんですよね。これは面接官がどのような質問をして、どこまで深掘りするかで候補者の印象がまったく変わってしまうことを意味しています。レジュメに沿った質問、一般的な質問だけをしているとお互いに心地の良い面接となって、その結果、お互いに相手への印象が良い形で終わるわけですけど、これだけと候補者の本質に向き合えていないという状況が起こり得るわけですね。候補者の説明に対してどれだけ現場レベルにまで深掘りしていくか、場合によっては面接官が期待している回答とのズレを整合したり、ロジックの粒度を揃えるために厳しいコメントをして相手の反応を見たりすることで、多少の緊張状態における候補者の対応能力や、思考の深度を推し量ることにも繋がります。
あと、ちょっと本題からはズレますけど、逆に細かいことは気にしない、というのも大切です。日本ではなかなかあり得ないですが、面接に裸足で来たり、髭が50センチぐらいある候補者がいたり、父親と一緒に来た女性の候補者も過去にありましたけど、宗教上の背景や、ご家庭の事情もあるとは思いますので、こういったことを理由にいきなりネガティブなレッテルを貼らないように配慮しましょう。
採用活動におけるオファーから入社まで
最後にオファーから入社までのフェーズに入っていきますが、
11個目は内定辞退は”前提”として複数候補を確保する、です。
インドってびっくりするぐらい内定辞退が多いんですよね。オファーを受理したにもかかわらず入社1週間前になってやっぱり他の会社に行きます、と悪びれる素振りもなく連絡がきたり、入社予定日当日に無言のまま出社してこなかったケースもこれまで何度かありました。やっと見つけた良い人材、そこから何ヶ月も待ってやっと入社、というタイミングで辞退されるとかなり心身ともにダメージ大きいので、あまり期待しすぎず、2番手候補にもすぐにオファーが出せるような第2群の選考プロセスを同時並行で進めておくことでリスクを軽減することができます。あと、オファーを出す時の給与交渉はダメ元でかなり強気で交渉してくる傾向にあるのであまり希望給与を鵜呑みにする必要はないかなと思っています。自社の予算に合わせて交渉をして、お互いが譲歩をして落とし所を見つけるというスタンスで行って、結果的に希望給与に満たなくても入社してくれるケースは多いです。
12個目は退職準備期間をチェックする、です。
一般的に、雇用契約書上でNotice Period(いわゆる退職通知期間)ていうのが設定されていますけど、インドでは退職までに1~3ヶ月かかるケースが一般的です。退職までの期間が長いとそれだけ企業様が発行したオファーレターを使って現職と昇給交渉をしたり、他の会社のオファーレターと比べてより良いオファーを探し求め続けられる期間が長いということになって、内定辞退のリスクも高まっていく傾向にあるので、一般的には短期間で退職可能な候補者の方が望ましいとは思います。ただ、これは役職によっては3ヶ月が長すぎるとは言えないケースもあるので、ケースバイケースで個別に判断が求められるところです。
13個目は入社意思の「確約」を確認する、です。
さっきご説明をした内定辞退リスクを可能な限り軽減したり、入社日当日になって突然内定辞退という最悪のケースを回避するために、オファーレターへの署名という内定承諾だけじゃなくてですね、現職へ送信した退職通知のメールを転送してもらったり、その後の現職からの退職通知に対する受諾メールが来ているかどうかも継続的に確認したり、最終出社日と入社日を確認したりして、入社意思を間接的に確認するために徐々に外堀から埋めていく作業はむちゃくちゃ有効なのでぜひ実施していただきたいと思います。
14個目は入社までの継続フォロー、です。
これは特に役職が高い候補者に当てはまるケースが多いんですけど、入社までの期間が2〜3ヶ月と長い場合には、月1回程度のオンライン面談もしくは対面でのお食事をしたりして、候補者との関係構築と同時に入社に向けてモチベーションを高めていく工夫ができると、内定辞退リスクの軽減につながりますので、先ほどの入社意思の確認と並行して実践していただくのが良いと思います。
15個目はバックグラウンドチェックの活用です。
こちらは別途コストがかかるので企業様のご判断によって分かれるところではありますけど、学歴詐称・経歴詐称などを防ぐために、職歴・学歴・犯罪歴・薬物使用歴などのバックグランドチェックを行ってくれる専門機関はあるので、利用するかどうかを事前に検討しておくと良いと思います。っていうのも、これは人材紹介会社の方に聞いた話なんですけど、極端な例だと、まったく他人の履歴書を使ってエントリーしてきたケースが過去にあったらしく、履歴書の人と面接に来た人がまったく別人だった(笑)、つまり、人生まるごと詐称っていう事例もあったらしいんですよね。このバックグランドチェックは結構時間がかかってしまうケースも多いので悩ましいところではありますけど、事前に利用するかどうか検討しておくことをおすすめいたします。
皆さん、いかがでしたでしょうか?インド人を採用する前にぜひ知っておいてほしいこと15選をご紹介いたしました。もし皆さんがご経験されたインド人との面接エピソードがあればぜひぜひコメント欄に書いてみてください。この動画を見ている他の人にもきっと参考になるものと思います。