【インド闇】賄賂・横領が当たり前!?インド企業で実際に起きている7つの手口を駐在員が暴露!
今回はですね、不正の現場ではいったい何が起きているのか?というテーマで、インドの企業不正の闇を赤裸々に暴露してみたいと思います。
ここ最近、インド進出を検討されている企業様がどんどん増えているんですけど、実はその裏側では、結構深刻な問題も潜んでいます。それが、企業不正ですね。会社の中でお金が盗まれたり、帳簿が勝手にいじられたり、賄賂が飛び交ったり……。言い換えると、会社の中でさまざまな“犯罪”が起きているわけです。
もちろん日本でもそういったことは起こっていますけど、インドの場合は管理体制が手薄になりがちで不正発見が遅れてもはや手遅れになってしまうケースも散見されます。つまり、企業不正の件数も金額もケタ違いにデカくなってしまうリスクが潜んでいます。そしてその背景には、文化的な背景や法規制の複雑さ、そして内部統制の弱さが垣間見えるわけです。
そこで今回はインド国内の企業不正の中でも特に多いと言われている「資産の横領」にフォーカスして、典型的な不正事例7選をみなさんにご紹介していきます。具体的な事例を事前に知っておくことで、すでにインドで事業展開をしている企業様、これから進出しようと思っている企業様が自社でどのような不正リスクを抱える可能性があるのかを把握できるようになります。さらに、なぜ不正が起こるのか?という仕組みと、それをどのように防いだらいいのか?という対応策まで、みなさんと一緒に考えていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
典型的な不正事例7選
『資産の横領』って聞くと、何だか難しそうに感じるかもしれませんが、簡単に言えば“会社のお金やモノを勝手に自分のものにしちゃう行為”のことですね。
そして、なぜこういった不正がインドで多いかというと、急成長している企業が多い一方で、日本と比べて職業倫理観が相対的に低かったり、そもそもの文化的背景の違いが影響していたり、さらに、会社の管理体制が成長速度についていけていない、その結果、不正が起きない仕組み、つまり、内部統制がまだまだ未熟なところが多いからですね。そこで、みなさんにまず知っておいていただきたいのが、資産の横領にはいくつか“パターン”があるってことです。
例えば
- 会社だましての直接お金を盗む現金の着服
- 架空の取引を作って会社のお金を引き出す架空取引
- 存在しない社員に給料を払ったことにする幽霊社員
- 取引先とグルになって裏でお金をもらうキックバック
とかがよくあるパターンです。
それでは企業不正でもっとも多いこの「資産の横領」にフォーカスして、 代表的な7つの事例をご紹介していきます。具体的な事例を知ることで、『あっ、こんなところに不正の入り口があるんだな』『自分の会社も気をつけなきゃな』と気づいてもらえるはずです。それではいってみましょう。
【事例①:現金の着服(不正経費精算)】
「まずは、めちゃくちゃ多いパターンからいきます。それが『不正経費精算』です。
例えば、実際にあったのが、出張費や交通費を水増し請求してポケットに入れるケースですね。タクシー代として請求しておいて、実際にはオートリキシャで済ませて差額をネコババするとか、航空券代として請求しておいて、実際は飛行機をキャンセルして夜行バスで移動したり、なんなら架空の出張を作って“行ったフリ”をして経費を請求するパターンまであります。こういうパターンって、承認する上司が忙しかったり、チェックが甘いとあっさり通っちゃうんですよね。しかも、経費精算って一件あたりの金額が比較的小さいので、『ま、いっか』で流されてしまいがちなんです。
ただ、ちりつもで、これが継続的に積み重なっていくとかなりの被害額になってしまいますので、従業員の出張が比較的多い企業様は、普段から出張旅費精算に対してはちゃんとその実態を確認する仕組みを導入しておく必要があります。飛行機で行ったのならその実際に搭乗したことがわかる搭乗券を確認するルールにしたり、出張報告において訪問先とその連絡先等を共有させるなど、適度なチェック機能を設計しておく必要があると思います。
【事例②:現金の着服(不正送金)】
次に紹介するのが『不正送金』です。これは、親戚や関係者名義の銀行口座を使って、会社のお金を勝手に送金しちゃう手口です。
例えば、実在しない業者の名前で請求書を出してお金を振り込ませたり、送金手続きの際に口座番号だけ変更してしまって不正に送金しちゃうとかっていうことが起こっています。
こういうのって、承認権限が集中している会社とか、一人の担当者が振込業務を全部担っている会社とかだと、レビューをする機能がないので起きやすいんですよね。特に口座番号だけ変更してしまう、というのはインドの仕組み上できてしまうので注意が必要です。
日本だと、全国銀行協会、いわゆる全銀が、銀行間の振込に関して通信プロトコルを定めているので、口座番号と口座名義が一致しない場合は振込ができずに返金される、という仕組みがありますよね。この仕組みが現時点でインドにはありません。なので、最終承認をしている人って口座名義と金額だけを確認して承認してしまっている人が多いと思うんですけど、実は口座名義は正しくても口座番号だけ変更されてしまうと気づかないまま別の口座への不正送金を承認してしまう可能性があるんですね。この点にはよく留意をして承認プロセスを設計しておく必要があります。
【事例③:架空取引】
3つ目は『架空取引』です。これは、実際には存在しない商談や契約を作って、架空の請求書を発行させて、お金を振り込んでしまうパターンですね。
例えば、最近実際にあった事例としては販売手数料/セールスコミッションの架空取引です。こういったパートナーマーケティングにおける手数料の支払やレベニューシェアの取引はよくある話だとは思いますけど、この企業さんは顧客を紹介してくれた企業に受注金額の10%をセールスコミッションとして支払うという紹介制度があってですね、本当は自社の営業マンが取ってきたプロジェクトなのに、架空の会社が紹介してくれたことにしてその会社(これが親族の会社なんですけど)この会社に10%のコミッションを払っていた、というケースがありました。実際には顧客を紹介したわけじゃないのに売上の10%も持っていかれてしまうわけなのでインパクトむちゃくちゃ大きいですよね。例えば、営業部門と経理部門が癒着すれば、こういうことは簡単にできてしまうので注意が必要です。
【事例④:幽霊社員】
4つ目は『幽霊社員』です。え、どういうこと?って思う方もいるかもしれないですけど、これも実際にあった怖い話です。
要は存在しない社員を従業員台帳に登録して、毎月給料を支払ってることにしたり、退職した社員を従業員台帳から削除せず、給与の振込先口座を自分の口座に変更してしまう、といったやり口ですね。これ、人事部門と経理部門がお互いにチェック機能を果たせていなかったり、従業員台帳を管理する人事担当と、給与計算の担当者が同一人物だったりすると、普通にスルーされちゃうんですよね。特に従業員の多い会社だと従業員名簿や給与台帳の間違いに気づかなくなってきますし、人の出入りが多い会社だったらなおさら気づかれにくくなってしまうので注意が必要っていうわけですね。
【事例⑤:キックバック(支払条件不正利用)】
ここからは『キックバック』のパターンです。
5つ目は『支払条件の不正利用』。たとえば、本来は月末締め翌月末払いなのに、特別に即日払いしてあげる代わりに、取引先から個人的にキックバック(お礼)をもらうっていうやつですね。
これ、経理部門と購買部門がグルになってやるパターンが多いんですよね。『ちょっとこの支払い急ぎでお願いします!』ってか言って便宜を図って、その見返りとしてキックバックを受け取って経理部門と購買部門で山分けしたりするわけです。会社としてはキャッシュフローへの負担がかかるし、こういう不正の手口が見つからずにスルーされてしまうと他の不正にどんどん飛び火していく可能性があるので気をつけないといけないですよね。
【事例⑥:キックバック(単価不正操作)】
6つ目は『単価不正操作』です。見積書を通常より高く設定させて社内で発注承認を取って、当初の金額との差額を後からキックバックでもらうパターンです。
これ、購買担当者と取引先が結託してやることが多いんですよね。例えばちゃんと相見積を取って比較検討させるプロセスや、最終承認者が適切な職業的懐疑心を持たずにザルチェックだと、従業員がおすすめするベンダーに発注しちゃって、結果的に相場より高い値段が普通に通っちゃうわけですね。特に急ぎの案件とか相場がわかりにくいサービス・商品だとあっさりとやられやすいのでぜひ気をつけてください。
【事例⑦:キックバック(値引き処理不正利用)】
最後は『値引き処理不正利用』です。これは、売上を計上したあとに、架空の値引きをでっち上げて値引き処理して、その分のキャッシュを抜き取る手口です。
例えば、値引きをせざるを得なかった架空の理由をつくって『このお客さんに値引きしました』という説明をするわけですね。実際には値引き分のお金を自分のポケットに入れてしまう。特に小売業の現場とかB2Bの営業部門とかで多く発生しやすい手口です。対応策としては、請求書上で値引き額を必ず明記するようにしたり、値引き理由の記録と合わせて必ず書面で承認記録を取ったり、そもそも値引き処理がひとりでできないように営業担当と請求担当を分ける、などの方法が想定されます。
「ということで、インド国内で実際に起きやすい不正事例を7つご紹介しました。
それではここからはこういった不正がなぜ起きるのか、その背景や仕組みをさらに深掘りしていきたいと思います。
不正の背景の考察
さて、ここまでで資産の横領について7つの具体的な不正事例を紹介してきました。『えっ、こんなこと本当に起きるの?』って思った方もいるかもしれませんが、こういう不正が起きる背景にはちゃんとした理由と仕組みがある場合が多いんですよね。そこで、なんでこんなことが起きるのか?そして、どうしてインド国内企業でより起きやすいのか?その背景を一緒に考察してみたいと思います。
不正のトライアングル理論
まずみなさんに知っておいてほしいのが、犯罪学者のドナルド・クレーシーさんが提唱した『不正のトライアングル理論』っていう考え方です。これは、不正が起きるのは偶然じゃなくて、この3つの要素が揃ったときに起きるっていう理論ですね。その3つがこちらです。
1つ目は“動機(Perceived Pressure)”です。
例えば、お金に困っている、借金がある、家族を養わなきゃいけない……。
いわゆる『生活のために仕方なかった』っていうパターンですね。インドでは日本以上にこういった状況に直面している人は多そうですよね。
あとは、業績を良く見せたいとか、プレッシャーや過度なノルマが課せられているとか、つまり「目標を達成するために仕方なかった」というパターンもあり得ます。
2つ目は“機会(Perceived Opportunity)”ですね。
例えば、社内でチェックが甘い、承認手続きが形骸化している、監査がザルだったりする。
要は“やろうと思えばやれちゃう環境”があるってことです。人間っていうのは悲しいかな弱い生き物で、スキがあるとちょっとした出来心で、魔がさして不正に手を染めてしまう可能性があるわけですが、インドでは日本よりもチェック機能とか内部統制の整備ができていない企業様は多いので、正直やろうと思えばやれちゃうわけですね。
そして3つ目は“正当化(Rationalization)”です。
『別にみんなやってるし自分もいいだろう』とか
『これぐらいの金額なら大した影響はないだろう』とか、
自分の中で言い訳を作っちゃう心理ですね。
この3つが揃うと、人は不正を起こしやすいというわけです。さらに、インドの場合は文化的な背景も後押ししているケースがあります。
つまり、インドって他の国と比べても相対的に権力格差が大きい社会なので、企業トップや上司には逆らいにくい文化があります。 なので、もし上司が不正をやっていたとしても部下は見て見ぬふりをしちゃう可能性がありますし、上司の指示で不正に加担させられたとしても逆らえずに不正に自らが手を染めてしまう可能性すらあるわけです。声を上げると自分の立場が危なくなるんじゃないかっていう恐怖感があるからですね。
不正を防ぐための具体的な方法
さて、ここまででインド企業でよく起こる資産の横領の事例と、なぜそれが起こるのかという背景をお話ししてきました。
『じゃあ、どうやって防げばいいの?』
そう思った方も多いと思うので、次に不正を防ぐための具体的な方法として、
- 予防的統制(不正を起こさせないための仕組み)と、
- 発見的統制(不正が起きてしまったときにすぐ見つける仕組み)
この2つに分けて、解説していきたいと思います。
予防的統制:不正を起こさせない仕組み
まずは予防的統制からですね。これはね、“そもそも不正をやりたくてもできないようにする仕組み”のこと。
ここでもう一度、ドナルド・クレーシーさんの『不正のトライアングル理論』を思い出してほしいんですけど、3つの要素のうち特に「機会」を減らすことが重要になってきます。じゃあ具体的にどんなことをやればいいか?代表的な対応策としては主にこういったことが考えられます。
予防的統制として一番大切なのがまず「職務分掌の徹底」です。つまり、一人の人が全部できないようにする。複数の人で業務を分担して、かつ、そこにチェック機能を持たせることです。あと、これは発見的統制としても機能しますけど、事後チェックでも良いので、第三者機関に定期的にレビューをさせて、一定の牽制機能を効かせておくことも非常に有効です。要はちゃんと常に誰かが見てますよと、「見てるよ光線」を出し続けておくことが重要なんですよね。
そして、さらに承認プロセスを強化することも大切です。例えば、一定額以上の経費は必ず上司と財務部門がダブルチェックする仕組みにするとか、当たり前の話ですが承認者が適切な懐疑心をもって慎重に承認をする、どうしてもすべてをチェックできない場合は二段階承認プロセスにして、第一承認者を外部の会計事務所などに外注するなどの対応策も考えられます。実際、社長が忙しすぎてちゃんとチェックせずに承認しちゃったりしていて、承認プロセスが形骸化してしまっているケース、結構多いですからね。
そして、従業員との良好な関係構築や社員教育。これもめちゃくちゃ大事です。
『不正はダメ』ってことぐらいは社員もわかっているはずですけど、会社との関係が良好ではない場合に不正に手を染めてしまう正当化を助けてしまう可能性もありますよね。従業員としての正しいモラルを社内文化や職場環境の中に根付かせていかないといけないので、経営者が定期的に現場に入って従業員との良好な関係づくりに努めると同時に、経営者がスキを見せない姿勢も大切になってきます。そして、従業員への研修を通じて「守るべきルール」をしっかり伝えていくことも大切。こういう予防的統制をしっかりやることで、例え、不正をする動機が生まれてしまっても、その「機会」を減らして、かつ、「正当化」してしまう環境を作らないようにすることが、最終的には従業員を守ることにつながるわけですね。
発見的統制:不正を早期に発見する仕組み
次は、もし万が一不正が起きちゃったときにすぐに発見するための仕組み、発見的統制です。
ここで参考になるのが、世界最大の不正対策組織ACFE(Association of Certified Fraud Examiners)が毎年発表している調査レポートです。この調査レポートによると、企業不正が発覚するきっかけとして圧倒的に多いのが、実は内部告発とか外部からのタレコミなんですよね。特に多いのが従業員による内部通報です。
社員が『あれ、おかしいな』って気づくこと、そして、気づいたときにそれを匿名で安心して報告できる窓口や経営陣に直接つながるホットラインなどがあることが大切であることがよくわかると思います。
そして、「うちは会計監査を受けているから問題ないよ」とおっしゃる企業様もいらっしゃるんですけど、年に一度しか実施されない会計監査で不正が発覚する割合は全体の3%しかないということもこのランキングからわかります。つまり、不正が発覚するきっかけは内部告発と内部監査、そして、経営者によるレビューという上位3つで全体の70%を占めていることからも、この3つに力を入れていくことが効果的であると言えます。この中では私が特に重要だと思うのは経営者や管理職の方々の日々のレビューです。トップが『不正は絶対に許さない』っていうメッセージを日々のレビューを通じて体現し続けること。その上で、例えば四半期に一度の事後的なチェック機能として内部監査を実施しながら、従業員が社内警察として機能するように、万が一従業員が不正の現場に出くわしたときに声を上げやすい環境をつくっていくこと、つまり、内部通報窓口や経営陣への直通ホットラインなどを設置するなどして、発見的統制を構築していくと良いと思います。
さて、皆さん、いかがでしたでしょうか?今回はインド国内における資産横領を中心に、企業不正の実態とその防止策についてお話ししてきました。
インドに進出されている企業さまはぜひ参考にして、まずは小さな一歩から取り組んでみていただけると嬉しく思います。