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【2025年9月の最新ニュース】インド人材は“日本企業の救世主”か?日印首脳会談が示した未来の人材戦略

今回はですね、先日の日印首脳会談とそこで合意された日印人材交流・協力アクションプランについて徹底解説していきたいと思います。

インドのモディ首相は、2025年8月29日の日印首脳会談の中で「インドには規模の経済や政策の支援がある。日本には技術的な専門性と経営の知見がある。この2カ国が一緒になれば、ともに達成できることに限界はない」こういった発言をしたんですけど、この日印首脳会談の場で、インドから日本への熟練した人材および将来性のある人材を5万人増加させる、さらに、インドと日本の双方向で 50 万人以上の人材交流を目指す、こういった壮大な目標が発表されたんですよね。
そこで今回の動画では、日本とインドが今後どのように人材交流を推進して、それが皆さんのビジネスやキャリアにどのような影響をもたらすのかを一緒に考察してみたいと思います。この動きをいち早くキャッチし、御社のインド進出や、皆さんのグローバルキャリア形成に役立てていただければ幸いです。

インド人材は“日本企業の救世主”か?日印首脳会談が示した未来の人材戦略

さて、日印首脳会談における両国の合意を踏まえて「日印人材交流・協力アクションプラン」というものが発表されたんですけど、そこには「日本とインドとの間の新たな人的交流の波を起こす」と書かれていてですね、こういった目的に向けて取り組む旨が明記されています。

1つ目は、インドから日本への熟練した人材及び将来性のある人材の関心の喚起と、相互認識のギャップを解消すること。
2つ目に、両国の人的資源の補完性を活かして、共同研究、事業化、そして価値創造を推進すること。
3つ目は、インドにおける日本語教育の促進と、将来への投資としての双方向の文化・教育・草の根交流を推進すること。
4つ目は、IT人材を含む人材不足に直面する日本と、技能開発・製造業の強化を目指すインドとの間の、経済的利益をもたらす補完性を活用すること。
そして最後に、日本企業とインドの学生との接点を強化すること。

この目的のために策定されたのがこの日印人材交流・協力アクションプラン、ということですね。
ちなみに、2024年時点で在日インド人の数は約54,000人程度と言われていますので、今後5年で5万人を受け入れることが実現すれば、単純計算では倍増するイメージですけど、双方向では50万人の相互交流というケタ違いの目標も同時に掲げているので、果たしてこの目標をどうやって実現していく予定なのか、その具体的なアクションプランの内容を6つに分けてひとつひとつ見ていきたいと思います。

章1:高度人材の促進

まず1つ目は、高度人材の交流促進です。これは、今後5年間でインド国内のエンジニアや学術関係者が日本で仕事をするための流れやその土台となる取り組みとして位置付けられています。

つまり、半導体やAIを含む分野において日本企業ではどのような雇用機会があるのかをより認知してもらうために、日本企業がインドの高等教育機関に対して特別ミッションを派遣したり、現在に日本で勤務しているインド高度人材の雇用状況の実態調査を実施して、ベストプラクティスや成功事例に関する情報を発信することで日本での雇用がより円滑に進むようなアクションプランが想定されています。さらに、JETプログラム、これは語学指導とかを実施する外国青年招致事業ですけど、英語指導助手としてインド人が日本で仕事ができるように、このJETプログラムの英語教師枠にインド人を拡大するなど、日本での雇用をより促進していくことも目指しているようです。

あと、高度人材の促進においてぜひ個人的に着手してほしいなーと思っているのが、高度専門職ビザの要件緩和とか発給手続きの迅速化などです。

大きくは、J-Skipと言われる「特別高度専門職」と、通常の「高度専門職」に分かれるんですけど、まず、特別高度専門職の場合はどれも要件がむちゃくちゃ厳しいんですよね。修士号以上取得かつ年収2,000万円以上とか、関連した実務経験10年以上かつ年収2,000万円以上、会社経営や経営管理業務に関する実務経験5年以上かつ、年収4,000万円以上の方とかってなっているので、特別高度専門職ビザの対象者はかなり限定的です。

さらに通常の「高度専門職」についても結構条件は厳しめなんですよね。こちらはポイント制になっていて、外国人材の「学歴」「職歴」「年収」などの項目ごとにポイントを設定していて、その合計ポイントが70点以上あれば要件を満たすという制度になっているんですけど、項目ごとのポイントを見てみるとどれも結構ハードル高いですよね。当然、一定のスクリーニングは必要だとは思うんですけど、評価項目についてはもう少し検討の余地があるんじゃないかとも感じます。

あとですね、高度人材における日印人材交流をより中長期的に実現していくには、インドの高度人材が日本に赴任をして仕事をする際の入り口と出口、つまり、日本に渡航するまでの期間と、日本から母国インドに帰国してしまった後の期間も考慮して、日印両国における継続的な就業環境とともに、インド帰国後のキャリアパスをも合わせて支援をしていく視点が必要だと感じています。逆に日本人駐在員だったらある種当たり前の話ではありますよね。駐在する前は日本本社に所属していて、駐在後にもちゃんと帰る場所があるからこそ安心してインドで仕事ができるわけですが、日本に赴任するインド人はこの「帰る場所」が用意されていない片道切符のケースが散見されます。

この点、例えば、弊社のインド現地法人をEORとして活用することで、インド国内に拠点を持たない企業さまであっても、インド人材の日印両国における中長期的なキャリアパスをシームレスに構築していただけるサービスをご提供しておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせいただければと思います。またこういったEORを活用した越境テレワークについてはこちらの動画でも詳しく解説をしていますので、ぜひご覧ください。

章2:学生と研究者の交流促進

次に2つ目は、学生と研究者の交流促進です。これも、今後5年間でインド人の学生、科学者、研究者が日本に留学したり共同研究したりする流れをより促していくためのものです。

まず最初に、日印の学生交流促進やインド人材が日本の大学卒業後にインターンシップとか就職が円滑にできるように、日本の文部科学省とインド教育省が継続的な政策対話を実施すること、あと、日本の大学がインドのパートナー大学と国際学生交流プログラムを構築・実施できるように、文科省が日本の大学を支援する、といったことが想定されています。
また、日本科学技術振興機構JSTがですね、2023年度からスタートしたインド人学生や研究者を招へいする「さくらサイエンス・インド大学生招へいプログラム」に加えて、文部科学省が新たに導入したインド若手科学頭脳循環プログラム「Lotusプログラム」、さらに、外務省が新たにスタートするプログラム「MIRAI-Setuプログラム」などを通じて、インドの若手研究者や大学院生による日本での共同研究や、インド人学生の日本企業訪問や1か月間のインターンシップなどを行うことで、両国間の長期的な人材交流の触媒としての効果を期待する、といった計画が進行中です。

あと、この点はアクションプランに書かれていませんでしたけど、日本とインドの協定校関係を増やして、単位互換制度とかダブルディグリーなどの留学スキームが増えるといいですよね。あと、日本の大学在学中のインド人が、日本企業でインターンシップをしたり、大学卒業後に留学ビザから特別活動ビザへの切り替え手続きをもう少し簡素化できると就職活動ももっとやりやすくなるんじゃないかと感じています。

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章3:特定技能(SSW)制度と技能実習(TITP)の活用

3つ目は、特定技能(SSW)制度と技能実習(TITP)の活用です。これは、日本政府の特定技能制度のもとでより多くのインド人材の交流を促すための取り組みですけど、具体的にはまずインドの主要都市および北東部で特定技能の全16分野における技能試験や日本語能力試験が受験できるようにあらたに試験センターを設立していくといった計画や、インド人の海外移住者向けポータルサイト「e-Migrate」の対象国に日本を追加して、日本とインドをつなぐ専用ページを設置するなども構想されています。

ちなみに、「技能実習制度」については、来年以降に「育成就労制度」に移行予定ですけど、この新たな枠組みへの移行は結構大きいですよね。これまでの技能実習では、どちらかというと海外への支援を目的とする「国際貢献」とか「技能の移転」みたいな文脈だったものから、育成就労っていうのはむしろ自国の支援を目的とする「人材育成」と「安定した労働力の確保」という文脈に大転換したとも言えるわけですね。さらに、日本で高度な技術・スキルを学んだインド人材が母国に帰って、インドの発展に寄与するという人材の環流が進む、というストーリもいいですよね。この点、SOMPOケアがインド政府系機関NSDCIと共同で行なっている活動はまさに「日本の介護現場を通じてお互いの社会課題の解決につなげたい」こういった想いが形になっていて、素晴らしいなと感じます。

ただ、特定技能1号における家族の帯同不可といった条件については今後ぜひ見直してほしいなーと考えています。
特定技能1号の対象者は人手不足が深刻な特定産業分野において即戦力となる外国人ということになりますけど、当然に独身者だけではなく、配偶者や子どもがいるケースもたくさんあって、私の友人が経営している介護施設ではたくさんのインド人がこの特定技能1号の制度のもとで日本で仕事をしているんですけど、家族の帯同不可のため、小さな子供をインドに残して母親がひとりで日本で仕事をしているという現状もあります。より多くの日印人材交流を生んでいくには、インド人が日本で、そして日本人がインドで、基本的かつ健全な生活環境とウェルビーイングを維持できるだけの環境整備と、それを支える法制度がむちゃくちゃ重要ですよね。

章4:スキル開発の推進

4つ目は、スキル開発の推進です。これは日本の経営、産業、そして製造業分野における専門知識を活用して、インド人材の技能レベルを向上させて、より日本に適応した人材を育成するための取り組みです。

例えば、経済産業省が実施するINPACTプログラム(India-Nippon Programme for Applied Competency Training)とか、新たに立ち上げられたIndia-Japan Talent Bridge、IJTBプログラムなどを通じて、寄附講座や職業訓練プログラムを提供したり、インドの新卒学生や中途人材を対象としたインターンシップ・プログラムや就職マッチング・イベントなどが積極的に実施されることになります。あと、民間企業でも、インドで日本人の職人が技能訓練校を開校して、インド人労働者に対してスキルを育成する、こういった取り組みも始まっています。私の友人が経営するiTipsというスタートアップが運営する「Oyakata」では、溶接とか板金といった専門技能に加えて、日本の職場文化で不可欠な「報・連・相」といった行動規範を徹底的に指導しています。

こういった、インド現地での事前教育と、日本の現場ニーズを直接結びつけるというモデルは先ほどご説明をしたこれからの「育成就労制度」において極めて重要な考え方ですよね。

ちなみに、高齢者ケア分野においては、駐日インド大使館のAYUSH担当部門とインドのAYUSH省の監督下で日本各地にヨガ及びアーユルヴェーダのセンター・オブ・エクセレンス(COE)を建設する、といったアクションプランも発表されています。

章5:語学力の向上

5つ目は、語学力の向上です。これは、技能分野に関連した日本語教育を促進するための具体的な取り組みです。

例えば、より実践的な日本語教育へのアクセスができるように官民が努力をしていくといった構想のもと、日本語教師のための研修機会拡大だったり、日本語教育の専門家をインドに派遣することによりより効率的なカリキュラムや教材設計を支援したりといったアクションプランが想定されています。また、日本人学生をインド国内の中等教育の学校に派遣する「日本語パートナーズ」プログラムも開始されるようです。あと、特定技能のところでも少し触れましたけど、日本語能力試験(JLPT)とか国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の日本語試験の実施会場やその収容人数を増やすなども計画されています。また、語学研修を実施する日本企業にその費用の一部を補助する制度も含まれています。

この、語学力の向上については、インド人に日本語を勉強してもらう前提のアクションプランがかなり多い印象なんですけど、ここはぜひ日本人も英語を勉強してお互いが歩み寄る、というアクションプランにしていけると良いなーと感じます。特に、人口大国インドの優秀な人材と協業をしていくことを見据えたときに、やはり日系企業がインド人と英語で直接コミュニケーションができる前提で採用戦略・グローバル経営戦略を考えるのと、そうでないのとでは、その戦略の幅や選択肢においてぜんぜん違ってくる可能性がありますよね。

章6:意識向上、支援、調整の強化

最後6つ目は、意識向上、支援、調整の強化です。これは、これまでご説明したような人材交流を、より自立的かつ持続可能にするために、積極的に意識向上をうながしていく取り組みのことを指しています。

具体的には、大学における就職フェアとか、ソーシャルメディアを活用した情報発信、日印人材交流の促進に関する情報を統合したウェブサイトの新設など、インド政府やその他関係者によるこういったさまざまな広報活動であったり、全国技能開発公社NSDCによる雇用マッチングセミナーの開催、また、インドの在外公館がインド人材が日本に到着した際のサポートやオリエンテーション、問い合わせ窓口の整備を実施し、それを日本政府が支援をする、といったアクションプランが検討されています。あと、日印人材交流をうながすための意見交換を目的とした人材交流シンポジウムの開催も計画されているようです。

ちなみに、ちょっと脱線してしまうかもしれませんが、ただ日印人材交流においては特にものすごく重要だと思う項目が、食における生活環境の支援・調整です。

仕事内容や職場環境も大切ですけど、やっぱりなんといってシンプルにその国住みたいかどうかという生活環境が人材交流の量を圧倒的に左右しますよね。今年、インド人のマネージャー陣6人を連れて日本出張に行ってきたんですけど、食事は本当に苦労したんですよね。日本でいちばんベジタリアンレストランが多いであろう東京でさえ、レストラン選びはかなり難しかったんですよね。

野菜スープを注文しても当然にチキンエキスや鰹ダシが入っています。ベジタリアンやヴィーガン、ハラル、鶏肉は食べるけど牛や豚はダメ、卵は食べるけど鶏肉はダメ、人によってほんといろんな食文化を持っている中で、どんな人でもある程度はメニューの中から食べたいものが見つかる、そんなレストランが両国においてもう少し増えるといいなと思います。

こうした飲食業におけるビザ要件の緩和や5年間などの時限立法でも良いと思うので日印飲食業界の支援制度などもぜひアクションプランに入れていただきたいと感じているところです。

さて、皆さん、いかがでしたでしょうか?今回のような日印政府間の取り組みは、日本企業のインド進出や、人材ビジネスにおいて、ビジネスチャンスの決定的な機会を提供してくれる可能性に秘めていますよね。今後も引き続き最新情報で特に重要なものなどがあれば都度今回のように動画にしていきますので、引き続き情報をキャッチアップしていきたいという人はぜひぜひチャンネル登録をお願いいたします。

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