【駐在員が暴露】インド進出で失敗を避けるための方法は?日本企業が知らない“不都合な真実”と現実とのギャップを解説
今回はですね、 インドで会社を10年以上経営してきた私が、皆さんが知らないインドの「不都合な真実」を暴露していきたいと思います。インドが中国を抜いて世界最多の⼈⼝大国となって、さらに、地政学的な観点からも今、インドへの期待はむちゃくちゃ高まっていますよね。ただ、多くの日本企業からは「インドをどう活用すべきかわからない」という声も聞こえてきます。その裏側にはいくつかの「不都合な真実」があります。そこで今回の動画では、インド進出の際に直面する「光」と「影」の両面を正しく知っていただいた上で、失敗を避けるための具体的なヒントや方法論についても解説していきますので、ぜひ最後まで観ていってください。
インド進出で失敗を避けるための方法は?日本企業が知らない“不都合な真実”と現実とのギャップを解説
「人口ボーナス期真っ盛りのインドは市場として有望だけど、自社にとって具体的に何ができる国なのかがどうもよく分からない」—日本企業の経営者から、こうした手探り状態の本音が聞こえてきます。
なぜ、インドはこれほどに有望視されながら進出をためらう企業が多いのか。「インド進出はリスクが高い」「インドに進出しても黒字化は難しい」こんな噂が流布しているその背景には結構根深い「不都合な真実」がありますので、まずはそもそもインドに対する期待値と現実のギャップから整理していきたいと思います。
期待値と現実の「ヤバい」ギャップ
まず、日本企業がインドに対して抱く期待が、そのまま現実になるわけではないという点を抑えておきたいと思います。
インド経済成長と製造業
現在、インド経済は年率7%台の成長が見込まれていて、14億人超の巨大市場、インドの中長期的な成長は間違いない、こういった期待がありますよね。ただ、一方で、「インドがすぐに中国に代わる世界の工場にはなり得ない」という現実があります。事実、インドは世界ナンバーワンの人口超大国でありながら全産業の中で製造業が占める比率が他の国と比べて相対的に低くなっています。産業別の付加価値シェアを中国と比べたときに、中国は製造業を含む工業、オレンジ色の線が過去50年間で一気に増えているのが分かると思うんですけど、一方で、インドはサービス業で成長をしてきた国であることがわかります。数年前のデータで産業構成をもっと詳しく見ても、中国の製造業比率が33.2%であるのに対して、インドの製造業比率は18.7%にとどまっています。その理由として、労働力の質がまだまだ低い点やインフラ投資の遅れ、そして、内需主導で成長してきたからこそ、輸出拠点としてのエコシステムがまだまだ未整備である、という点が挙げられます。
Made in Japan製品の開拓余地
インドにはまだまだMade In Japan製品の開拓が進んでいない。タイやベトナムなどの東南アジアと同じようにまさにこれからのインド市場に対してMade In Japan製品に対するニーズを開拓していけば勝てる、こういった期待もありますよね。一方で、「Made In Japanじゃなくて、Make In Indiaじゃないと価格勝負に勝てない」という事実があります。Made In Japan製品で勝てる領域を見極めなきゃいけないという論点ももちろんありますが、同時に輸入関税のみならず、昨今のBIS規制や関税当局であるSVBへの対応などを含めた輸入手続きにかかるさまざまな非関税障壁が高く、課題は山積という実態が見えてくるわけです。
黒字化を実現している日本企業
また、JETROが実施した2023年度版海外進出日系企業実態調査においては、2023年度の黒字見込みの企業が7割を超えているというデータが出ています。他国と比較してもインドは黒字化を実現している企業が多いという統計データは、多くの日系企業にさらなる期待を抱かせますよね。
一方で「インドに進出してもぜんぜん儲からない」「なかなか利益が出ない」という声が多いのも事実です。このギャップはどこからくるのか?まず、JETROの統計データを見ていると、この黒字化を実現している企業の多くが2014年よりも以前に進出をした企業、つまりインドに進出して10年以上経っている企業が多いんですね。さらにこれは私の見立てですけど、インドに進出している日本企業のうち一定割合はR&D拠点や開発拠点、また、コストセンターとしての販売拠点、つまりこういった拠点はそもそも自力で黒字化は実現できないので、移転価格税制の観点から初年度から黒字前提のビジネスモデルでインドに進出している企業も結構多い、という仮説も成り立つかなーと考えています。つまり、私の個人的な見解としては、インドに進出してから10年未満の日本企業で、かつ、インド現地法人単独で見たビジネスモデルとして純粋に黒字化が実現できている企業は決して多くないのではないか、と見ています。
優秀なインド人材とその評価実態
他にも、インド国内には約500万人ものSTEM人材が働いていて、毎年150万人以上の工学系人材を輩出しているとも言われています。さらに、在外インド人いわゆるNRIとか印僑と言われるインド人は世界に3,200万人もいて、グーグルやマイクロソフトのCEOに見られるように、世界中で活躍するインド系グローバル人材がたくさんいる、「インド人=優秀」こういったイメージが醸成されていてインド人材に対する期待値はむちゃくちゃ高かったりしますよね。ただ一方で、「実際にインド人と一緒に仕事をしてみたら、期待はずれ、どうもうまく噛み合わない」こういった声も聞こえてきます。このあたりの真意についてはこちらの動画でいろいろと考察していますのでご興味ある方はぜひ見てみてください。
優良なインド企業とその協業実態
さらにもっと見ていくと、インドはAIやフィンテックなどの分野を中心にユニコーン企業が2025年現在で70社以上も生まれているスタートアップの宝庫で、日本企業が特に強みを持つ製造業系のスタートアップや、インド地場の優良企業もたくさんあって、インド企業と一緒に組めばインド事業をうまく立ち上げられるのではないかという期待もあるようです。一方で、「インド企業と一緒に合弁事業を立ち上げたらパートナー企業側ともめて泣く泣く撤退」といった事例は枚挙にいとまがありません。
インドで成功するための3つの方法論—発想転換と覚悟
それでは、ここからは期待値と現実のギャップを埋めるために、日本企業がどのような戦略を立てるべきか、駐在10年の経験から3つの方法論を提言したいと思います。
人材戦略の見直しとトップ主導
1つ目は、人材戦略の見直しとトップ主導という観点です。
「中国や東南アジアで成功したから」といって、その延長線上として同じ人材にそのままインドを任せるのはむちゃくちゃ危険です。インドはビジネス環境も文化も別世界ですし、東南アジアの成功体験がむしろインド事業の立ち上げを邪魔してしまうリスクさえあります。インド事業を立ち上げる責任者には大胆に権限移譲をした上で、トップ自らが強いリーダーシップで陣頭指揮をとって、スピーディーかつ機動力のあるチーム体制を構築するべきなんですよね。本社の決裁待ちでビジネスチャンスを逸するような従来型の意思決定だと命取りになってしまうので、現地で優秀な人材には大胆に権限を与えて、かつ、最低でも5年以上の十分な時間を与えて、少しずつでも着実に「インド発で新規事業を立ち上げていく」くらいの覚悟で挑む必要があると考えています。
「インドのスタートアップ生態系」に飛び込む
2つ目は、伝統的な日本企業病を捨てて、「インドのスタートアップ生態系」に飛び込むということです。
特定の企業との業務提携や合弁事業に固執するんじゃなくてですね、オープンイノベーションの視点を持って複数のスタートアップ企業とガンガン連携していくスタイルですね。インド経済の活力の源泉はなんといっても無数のスタートアップにあるので、複数社への資本参加を通じてさまざまなデータを入手し、出資先企業とともに一緒に成長ができる新規事業案を検討したり、VCやファンドなどへの投資を通じて、「インドの成長を自社の成長エンジンに取り込んでいく」くらいの気概が必要だと考えています。
タイ・シンガポール中心のアジア戦略に頼らない
3つ目は、タイ・シンガポール中心のアジア戦略に頼らない、ということです。
アジア統括拠点のタイやシンガポールからインド市場を俯瞰すると、インドの実態を正確に把握できない可能性があるんですよね。例えば、タイの日系企業で仕事をするタイ人と比較して、インド人材はむちゃくちゃグローバル志向が強い傾向にあるので、優秀なインド人を採用したら、インドを拠点にむしろ中東や東南アジアへの事業展開を狙うくらいのダイナミズムが必要になります。つまり、タイやシンガポールからインドを見るのではなく、むしろ逆なわけです。インドから東南アジアや世界を見る。そして、インド市場を攻めるという観点だけでなく、世界市場を攻めるための触媒としてインドを活用するという視点が必要です。
たとえば日本人だけでプロダクトをつくりアメリカ市場を攻めるよりも、インド⼈と⼀緒にプロダクトをつくり、インド人材が世界中に持つグローバルネットワーク、そのフットプリントを生かして、インドをハブに、インド人と共に世界に打って出る方が成功確度が確実に高まる。こういった⼈事戦略という観点からの発想転換も必要になってくるわけですね。
インドの「不都合な真実」への対処法—リスクと向き合う
最後に、インドビジネスを具体的に立ち上げていくプロセスにおいて多くの日本企業が直面するリスクと闇、そしてその対処法についてお話したいと思います。
当局対応の煩雑さとコンプライアンス違反
1つ目は、当局対応の煩雑さとコンプライアンス違反です。
インドでは税務当局や各種許認可当局とのトラブルが頻発しがちなんですけど、法規制が複雑でかつ州ごとに制度も違ったりするので、無数のコンプライアンスが点在している状況です。産業ごと規定されたライセンスなどもあれば、インド中央政府が管轄する税務コンプライアンスや労働法、インド州政府が管轄する環境局ライセンスやリカーライセンス、労働当局への届出等もあり、とにかく全貌を把握するのは至難のわざです。自社内ですべて抱え込もうとすると本業がまったく立ち上がらないという状況になってしまうので、当局との対応や各種コンプライアンスへの対応については、各領域の専門家に積極的に外注をすることが大切です。具体的な外注プロセスとしては、まずは自社のビジネスモデルと進出州における適用法令を洗い出して、各法令に基づいてどのような規制があるか、またどのような登録義務やライセンス取得義務などがあるかを洗い出すこと、その上で、それぞれ必要な手続きを代行してくれる専門コンサルタントを選定していく流れです。
企業不正の多発
2つ目は、企業不正の多発です。
残念ながらインドでは、社内横領や賄賂などの企業不正が珍しくなく、インドに進出されている日系企業様からも「従業員による不正」についてご相談をいただくケースは少なくありません。文化的背景の違いに起因するものや、立ち上げ初期に見られる内部統制の弱さから、日本では考えられないような不正が起きるリスクも潜んでいるわけです。
不正対策の鍵は、主に予防的統制と発見的統制に分けられますが、特に私が重要だと感じるのは、こまかい違和感に敏感に気づくことができるように経営者自らが現場に足を運んだり、普段は忙しいのでなかなかすべてを完璧に、というのは難しかったとしても、仕事の成果物や業務プロセスに対してある程度優先順位をつけて定期的にむちゃくちゃ細かくレビューをすること、そして「不正は絶対に許さない」というメッセージを間接的に発信しつづけることで、潜在的な不正の芽を、顕在化させずに摘みとることができます。また、会計事務所などに定期的な事後チェックとしての内部監査を依頼して、第三者の目で定期チェックを実施することで一定の牽制をかけておくことも有効です。インドの企業不正については実態の具体的事例も含めてこちらの動画で詳しく解説していますのでご興味ある方はぜひご覧ください。
官僚的な手続きが生む『抜け道』
3つ目は、官僚的な手続きが生む『抜け道』です。
インドの行政手続きは煩雑でとにかく時間がかかるケースも散見されるので、ビジネスを前に進めるために非公式な手段に頼る土壌が育まれてしまったという経緯があります。いわゆるスピードマネー、つまり手続きを前に進めるためのアンダーテーブルマネーを要求されるというのはまさに汚職の典型例ですよね。グローバルに事業を展開する日系企業にとっては、法令遵守は当然の基本方針だとは思いますので、手続きの遅延による損失と、法的リスクを天秤にかけてしまって難しい判断を迫られる、こういった局面に遭遇してしまうこともあると思います。こういったケースにおいては、企業様が不適切な金銭の授受に直接手をつけることがないよう、まずは正攻法で当局と粘り強く交渉をすると同時に、専門家やコンサルタントを通じてその都度、状況を好転させるより良い方法がないかを一緒に探っていく必要があります。いちいち面倒くさいことは本当に多いんですけど、普段から複数の専門家と良い関係を構築しておくことで、こういった問題に対してもすぐに相談ができる体制をつくっておくこともむちゃくちゃ重要になってきます。
さて、皆さん、いかがでしたでしょうか?今回の動画では、インドに対する期待値と現実の「ヤバい」ギャップ、そしてインドの「不都合な真実」について解説してみました。ぜひインド進出の際の参考にしていただければと思います。そして、引き続き情報をキャッチアップしていきたいという人はぜひぜひチャンネル登録をお願いいたします。