Vol.0051 大注目!前金ゼロのエンジニア育成スクールのビジネスモデルとは
インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2020年11 月23日付けの報道で、バンガロールに拠点を置く、ソフトウェア開発教育のエドテックスタートアップ『Newton School(ニュートンスクール)』を取り上げています。
今年9月にNexus Venture Partnersからシードラウンドで650万ドル(約6億8,000万円)を調達したNewton SchoolはNishant Chandra氏とSiddharth Maheshwari氏によって2019年に設立されました。彼らはインドでエンジニアの需要が高いにもかかわらず、エンジニアを育てる教育システムが創意されていないことに着目し、このギャップを埋めるためにコーディングブートキャンプ会社のような役割を持つ完全オンラインのプラットフォームを提供しています。
Newton Schoolが注目を集めている理由は、その料金体制です。前払い費用ゼロで6ヶ月間の集中プログラムに参加することが出来、卒業後は提携しているUnacademy(アンアカデミー)、Rapido(ラピド)、Toppr(トップアール)などのトップテック企業への就職が約束されています。同社の収益構造はプログラム卒業後、60万ルピー(約85万円)以上の年収を約束されたポジションに就いた生徒から就職後3年間給料の15%を得ることで成り立っており、年収60万ルピー以下のポジションに就職した生徒、また提携先企業からは集金していません。
Newton Schoolにはインド全土から何百万もの応募があり、2週間の入学プロセスを経て選び抜かれた最大限の可能性を秘めた優秀な人材のみが入学を許可されます。モチベーションテストや学習能力テストを経て最終選考に進めるのは応募者の僅か1%程度のようです。激戦を乗り越えて入学した生徒は、半年間に及ぶプログラムの中で1,000時間以上のコーディング、50時間以上のソフトスキルトレーニングを学ぶことが出来、各々のメンターも付くようです。授業は既に仕事をしている人たちにとっても受けやすいように毎日午後9時から深夜0時の間で実施しているようです。同スクールは質の高いトレーニングを提供することに注力しており、AI(Artificial Intelligence:人工知能)を導入し、それぞれの学生のパフォーマンス向上のために定期的に評価が出され、各々に合ったアドバイスが提供されます。また、業界の最新トレンドが学習することができるように設計されています。200人以上いる講師やメンター、面接官はMicrosoft、Google、Amazon、Uber、Dell、Adobeなど、大企業のトップ幹部が名を連ねているようです。最近卒業したばかりの第一期生の就職率は約90%で、そのうちのほとんどが卒業後すぐに前職の2~3倍の年収のポジションに就職しているとのことです。
Verified Market Researchのレポートによると、世界のコーディングブートキャンプ市場は2018年に3億9991万ドルの評価を受け、2026年には8億8937ドルに達すると予測されており、2019年から2026年の間の予想CAGR(※1)は10.7%です。コーディングのブートキャンププラットフォーム分野で注目すべき企業には、Masai School、Pesto、Lambda Schoolなどがありますが、Newton Schoolの Siddharth氏は『弊社は競合他社とは異なり、プログラムはパートタイム制で、それによって大学生も社会人も参加できるようになっている。』と述べています。現在同プログラムに登録している学生は500名で、来年にはこの数を1万人にスケールアップさせることを計画しています。また、今後6~8ヶ月で月収100万ドルに到達することを目指しており、提携企業を増やすために多国籍企業とも話を進めているようです。同社の料金体制は学費を前払いする必要がないため、資金面で妥協せざるを得なかった、優秀で熱意のある生徒が自身の望むキャリアを形成することが可能となります。また、提携企業にとってもゼロコストで保証された人材を採用できる為、両者にとってWin-Winです。インド人エンジニアは世界中いたるところで活躍していますが、Newton Schoolが提供しているようなサービスが広まることで、エンジニアの質の底上げが可能となり、これまで以上にインド人エンジニアが世界から注目を集めるようになることを期待しています。
※1 CAGR:Compound Annual Growth Rateの略。年間平均成長率。
Source:エンジニアブートキャンプの『Newton School』料金体制とプログラム内容で注目を集める