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週刊インドトピックス

Vol.0109 前Myntra、MedlifeのCEOがD2Cブランドのスケールアップを支援する企業を設立

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年6 月23日付けの報道で、先月プレローンチで5,000万ドルを調達した、インドD2C(※1)ブランドのスケールアップ及び海外展開を支援するMensa Brandsを取り上げています。

 

Mensa Brandsの創業者Ananth Narayanan氏とは?

Mensa Brandsは2021年5月にAnanth Narayananによって設立されました。Narayanan氏はインドで最も有名なEコマースブランドの1つであるMyntraのCEOを務め、その後、Medlifeの共同創業者兼CEOに就任しました。先月MedlifeはPharmEasyに買収され、インドオンライン薬局部門では最大の統合案件となりました。Myntra、Medlifeに続き、D2C産業に進出したAnanth Narayanan氏は、インドブランドがグローバルに販売できるようにしたいと考えています。

Mensa BrandsはすでにシリーズAの資金調達ラウンドを終了し、5,000万ドルを調達しています。このラウンドは、Accel Partners、Falcon Edge Capital、Norwest Venture Partnersのほか、Kunal Shah、Mukesh Bansal、DST GlobalのRahul Mehta、Tiger GlobalのScott Shleiferなどの著名なエンジェル投資家が主導しました。Narayanan氏は今後3年間で、さまざまなカテゴリーのデジタルファーストブランド50社を買収したいと考えています。そして『エンジェル投資家、ベンチャーキャピタルとともにインドデジタルファーストブランドの成長に加速をかけたい』と話しています。

 

なぜD2CブランドはMensaと組むべきなのか?

Narayanan氏によると、Mensa Brandsは、インドD2Cブランドのマーケットプレイスでの成長を支援し、サイトでのB2C提供を拡大し、さらにグローバルに展開するというユニークな機会を提供しています。

Mensa Brandsが対象とする企業には次の条件があります。1) インド国内のD2Cブランドで、2) 売上の70%以上がオンラインで、3) 年間売上高が1〜7億ルピー(約1億5,000万円~10億5,000万円)で、利益を生み出しているブランドです。『このような優秀な創業者やブランドと提携し、それらのブランドの過半数の株式に投資し、調達力、デザイン力、技術力、デジタルマーケティング力、在庫管理力などの専門的な知識を組み合わせることで、ブランドが成長し、有名になるためのオペレーティングシステムを構築することを目指している』のがMensa Brandsです。

 

変化するインド人消費者の動向

この1年間、コロナウイルスが流行する中で、インドの消費者行動は大きく変化しました。社会的な距離を置くことで、人々はオンラインチャネルでの購入を余儀なくされ、その結果いくつかのD2Cブランドの需要が高まりました。『この傾向は今後も続くだろう』とNarayanan氏は言います。顧客の意思決定におけるデジタルの影響力は、非常に大きくなっています。

Eコマースが流行し始めた当初、利用者にとってのメリットは「同じ商品をオフラインよりも安く手に入れることができる」というコストの面でした。しかし、現在は「利便性」を求めてオンラインで購入する消費者が増えています。また、消費者の属性も変化しています。最初の1億5,000万人のEコマース顧客は、メトロやTier-I(※2)の都市に住む人々で、女性よりも男性の方が多かったのですが、次の1億人はTier II(※3)やTier III(※4)の地域に住む人々で、男性よりも女性の方が多くなっています。

 

「オンラインで見て、オフラインで買う」インド伝統的市場でのオンラインの可能性

先に挙げた消費者行動の変化により、多くの伝統的な小売業者もオンライン化を進めています。では、これにより、インドのデジタルファーストブランドのオムニチャネル戦略(※5)はどのように変化するのでしょうか?

『将来的にはオムニチャネルに適したブランド体験を提供していきたいと考えているが、現時点ではオンラインに重点を置いており、オムニチャネルに重点を置いていない。』とNarayanan氏は述べています。

しかし、インドには「オンラインで見て、オフラインで買う」という伝統的な市場があります。このような市場でデジタルファーストのブランドを構築するのはどうなのでしょうか?これに関してNarayanan氏は次のような見解を示しています。『ブランドのオンラインイメージとソーシャルエンゲージメントは依然として重要だ。大規模な小売市場に比べれば、Eコマースの規模はまだ小さいかもしれないが、オンラインがオフラインに与える影響はますます大きくなっている。オフラインで購入することはあっても、ブランドの認知度はオンラインで影響を受けている。』

 

これからのD2Cブランドの展開

インドには現時点で600以上のD2Cブランドがあると言われていますが、Narayanan氏はもっと多くのブランドが存在してもいいと考えています。『私は、今のインドにはブランドが少なすぎると思っている。過去10年間は、ブランド構築のコストが高かったため、ブランドを生み出すことが困難だった。しかし、これからの時代、ブランドを構築するために必要なものは変わってくるだろう。そして今後10年間で、より多くのブランドが誕生するに違いない。』

ブランドは、顧客アプローチのために、費用と時間のかかるテレビ広告に頼る必要がなくなりました。今では、製品販売に利用できる複数のデジタルチャネルがあります。FlipkartAmazonNykaaなどのマーケットプレイスも、デジタルファーストのブランドにとって、物理的リーチの複雑さを解決してくれました。D2Cブランドは、これらの企業の流通ネットワークを活用することで、インドのどの地域にもリーチすることができます。

テクノロジーと消費者のニーズが進化する中で、デジタルファーストのブランドは今後間違いなくビジネスを拡大していくでしょう。そこに目をつけ、優秀なブランドに株式投資をし、あらゆるノウハウを提供することで成長支援、そして株価が上昇しそのリターンを得るというMensa Brandsのビジネスモデルはすごく面白いと思います。これまでMyntraとMedlifeというインドでは欠かすことのできない存在にまで会社を成長させたAnanth Narayanan氏の最新のスタートアップ、『Mensa Brands』。今後の成長に目が離せません。

 

※1 D2C:Direct to Consumerの略。自ら企画、生産した商品を広告代理店や小売店を挟まず、消費者とダイレクトに取引する販売方法。
※2  Tier1:人口400万人以上の都市。デリー、ムンバイ、コルカタ、バンガロール、チェンナイ、ハイデラバード、アーメダバード、プネの8都市を指す。
※3  Tier2:人口100万人以上~400万人未満の都市
※4  Tier3:人口100万人未満の都市
※5 オムニチャネル戦略:企業とユーザーの接点であるチャネルを、ECサイトなどのwebサイトだけでなく、メールやスマホアプリといったその他のオンラインの接点、オフラインの接点も含めて様々なチャネルを連携し、一貫した顧客体験を提供することでユーザーにアプローチする販売戦略

 

Source:インドD2Cブランドのスケールアップ及び海外展開を支援する『Mensa Brands』