Vol.0159 Web3とブロックチェーンが開く未来
インドでは、Web3の採用が急速に進展しており、2023年には1,000社以上のスタートアップが出現し、3,500万以上の取引アカウントが主要な取引所で開設されました。この情報は、Web3ベンチャーキャピタルのHashed Emergentが、他社と共同で作成した「India’s Web3 Landscape 2023」という報告書から得られました。この報告書によると、インドは世界150カ国以上の中でオンチェーンでのWeb3採用で首位を獲得し、特にベンガルールがこのセクターの新たな中心地として浮上しています。注目すべきなのは、インドのWeb3開発者コミュニティの世界的シェアは、2018年の3%から2023年には12%へと拡大していることです。また、女性の参加率も過去5年間で3%から14%へと増加しています。
報告書は、インドがWeb3の普及で著しい上昇を遂げており、大きな経済、熟練した技術人材、テクノロジーに明るい教育を受けた若者の多さなどの有利な人口統計学上の特徴を背景に、革新とチャンスに満ちた活発なWeb3セクターの存在が示唆されています。ただし、このセクターは2022年の資金調達総額から、前年比で81%の投資減少を経験し、2023年の投資額は約2億5000万ドルにとどまりました。初期のWeb3資金調達は金融セクターに重点が置かれていましたが、現在はインフラプロジェクトへのシフトが見られます。
また、不利な経済状況にもかかわらず、プレシードおよびシード段階のスタートアップに対する投資家の関心は依然として高く、さまざまなセクターや業界にわたるWeb3とブロックチェーンの採用は、インドの技術人材とビジネスにとって大きなグローバルな機会を提供しています。
また、トレーディングだけに限定されず、Web3とブロックチェーンの採用は,分散型金融(DeFi: Decentralized finance)*¹、現物資産のトークン化(RWA:Real-world asset tokenization)*²、自己主権型アイデンティティ(SSI:self-sovereign identities)*³、トラック&トレース*⁴などの革新的なソリューションを含む様々なセクターに拡大しています。
報告書はさらに、Eros、Infosys、Shemarooなどの大企業がWeb3エコシステムに積極的に参加していることを強調しました。
さらに、インド政府はブロックチェーン技術を活用することで、児童労働の防止に係る情報収集・確認調査などをしています。他にも、新たにコミュニティー・ファイナンスのプラットフォームを作成する案などが挙がっています。また一部の州政府でも、ブロックチェーン技術を用いた土地登記や電子証明などのアプリケーションが利用されています。この集団的な動きは、分散型デジタルソリューションを採用することへの強い国家的なコミットメントを示しています。
*1 中央集権型の銀行や金融機関に代わるものとして、ブロックチェーン上で実現される金融サービス。これにより、ユーザーは仲介者なしで直接貸し借り、取引、保険、その他の金融操作を行うことができる。
*2 不動産や美術品などの実物資産をデジタルトークンに変換し、ブロックチェーン上で取引できるようにするプロセス。
*3 個人が自身の情報を自らコントロールし、第三者を介さずにその情報の共有を管理できるデジタルIDシステム。
*4 サプライチェーン管理において、製品が原材料の段階から消費者に到達するまでの全過程を透明に追跡し、追跡可能にする。これにより、品質の保証、偽造の防止、リコール時の迅速な対応が可能となる。
Source:Web3スタートアップの躍進
Web3技術は、日常生活においても様々な利便さを提供してくれるため、こうした変化を積極的に受け入れ、最新の技術トレンドに敏感でいることがとても重要だと感じます。
インドがWeb3とブロックチェーン技術を急速に採用できたのは、独自の国内要因によるものが大きく、さらなる成長が期待できます。
インドがこのような革新的なデジタル技術をどのように活用し、さらなる発展を遂げるのか楽しみです。
(文責:大森太郎)