India Weekly Topics

週刊インドトピックス

vol.0173 新しい時代の乾杯:アルコールインフルエンサーの台頭

近年、ソーシャルメディア上でのアルコールに関するインフルエンサーの影響力が増大しています。政府の規制が少ない中、アルコールインフルエンサーは、魅力的なコンテンツを提供しながら、マーケティングの新しい手法として注目されています。
ビラーイー出身のシッダールタ・クリシュナン氏は、ベンガルールでのワインとホスピタリティ業界での経験を活かし、地元でアルコール教育のソーシャルメディアプラットフォーム「Alcogeek」を立ち上げました。彼の情熱は、ビールの歴史や様々な酒類の起源、安全な飲み方に関する知識を共有することにあります。
デリーのバーテンダー、ニティン・テワリ氏も同様に、COVID-19のパンデミック中に始めたインスタグラムライブから、その影響力を広げました。彼のアカウント「The Bartrender」は、ユニークなカクテルレシピや家庭で試せるバーテンダーの技を紹介し、現在は40万人以上のフォロワーがいます。クリシュナン氏とテワリ氏は、アルコールに関する革新的なコンテンツを提供することで、多くのフォロワーを獲得し、アルコール市場に新たな視点を提供しています。

インドのアルコール市場は急速に成長しており、2024年は52.4億ドルと評価されている市場が、2030年には64億ドルに達すると予測されています。この成長には、都市化の進展や所得の増加、アルコールへの態度の変化が寄与しています。特に、18歳から35歳の若年層がオンラインでの情報収集を積極的に行い、新しい飲み物やその楽しみ方に関心を寄せています。
このような背景から、アルコールブランドはインフルエンサーとの協力に力を入れるようになりました。従来のメディアでは、アルコール広告が禁止されている中、ソーシャルメディアは規制が少なく、ブランドが直接消費者とつながるための重要な手段となっています。例えば、ゴアのブランド「Pursue Hard Seltzer」は、ソーシャルメディアを通じてブランドのデザインや美学、味わいを広めるためにインフルエンサーを活用しています。

 

現在、インドではソーシャルメディア上のアルコール関連コンテンツに対する政府の規制はほとんどありませんが、今後ソーシャルメディア広告が進化するにつれて、より厳しい監視が予想されます。例えば、米国では、ソーシャルメディア投稿に対して必須の表示事項が求められています。インドでも、将来的には他国のベストプラクティスを取り入れたガイドラインの策定が考えられます。

インフルエンサー自身も、正しい知識と責任を持って情報を発信することが求められます。ニティン・テワリ氏は、自身の投稿に飲酒の適量や法定飲酒年齢の記載を行うなど、自己規制の重要性を強調しています。今後、アルコールインフルエンサーが持続的に活動を続けるためには、自己規制と正しい情報発信が鍵となるでしょう。

 

Source:アルコールインフルエンサーの成長

 

インドでは、ムガル帝国の統治下(1526〜1857年)で、イスラム教の戒律に従ってアルコール消費が禁止されていたことや、インド独立後(1947年)、ガンディーの影響で一部の州では禁酒法が施行されていたことなど、一般市民の飲酒習慣に長い歴史があるとは言えません。
記事にあるように都市化と経済発展に伴い、若年層や都市部の中産階級では飲酒習慣は広がりを見せていますが、お酒に飲まれる人も多いという話をたびたび耳にします。
アルコールインフルエンサーの活躍は、アルコールに関する知識や最新のトレンド情報を提供してくれるため、日常生活での交流や楽しみを上手く広げる手助けとなるでしょう。

 

(文責:大森太郎)