Vol.0012 インド国産の感染経路追跡アプリ『Aarogya Setu』の影響はいかに?
Google Mapsが新型コロナウイルス対応のアップデート
インド大手経済メディアのThe Times of India社の2020年6 月9日付報道によると、Googleは自社の地図アプリである“Google Maps”に新型コロナウイルス関連の情報を追加することを発表しました。
今回のアップデートによって新しく確認できるようになることは、
- 新型コロナウイルスによって活動が制限されている地域や通行制限のある道路、
- 封鎖されている国境、
- 新型コロナウイルスの検問所の位置、
- 各駅の混み具合予想、
- バスの運行ルート、運行本数の制限の有無
などで、アルゼンチン、フランス、インド、オランダ、アメリカ、イギリスをメインに機能を追加し始めていくようです。
インドでもコロナウイルス対応のアプリが開発
インドでは既に4月2日にインド電子情報技術省(MeitY:Ministry of Electronics and Information Technology)によって、新型コロナウイルス対策の携帯アプリ“Aarogya Setu(アローギャ・セツ)”が開発されています。
本アプリは新型コロナウイルス感染者や検問所の位置、また携帯端末の位置情報を利用して感染者との接触履歴を追跡することができます。約2メートル以内に感染者がいる場合、感染確率は高いと認識され、「今すぐその場から離れること」「新型コロナウイルスの検査を受けること」を推奨する画面が表示されます。
また、ダウンロード時に氏名、年齢、携帯電話番号といった基本情報に加え、職業や過去の海外渡航情報なども提出する必要があり、政府のデータベースと照らし合わせ、新規ユーザーの新型コロナウイルス感染確率が分かるようになっています。
市民にインストール義務付けを背景にユーザーを飛躍的に躍進
リリースからからわずか40日後に1億人のユーザーを獲得し、ヘルスケアアプリで世界1のダウンロード数となり注目を浴びていました。現在も利用者は増え続けており、4月には世界で最もダウンロードされたアプリ第7位、5月も8位と新規ユーザー数は伸び続けているようです。
また、現時点で国内線利用時やショッピングモールを利用する際や、オフィスビルに入る際、また、デリバリーの配達員が勤務する際などに本アプリを通じて評価された自身の安全性(感染リスク)を証明しなければならないケースもあり、今後はますます当該アプリの利用義務付けがインド国内に広がっていく可能性があります。
当初はプライバシーや安全性の問題について多く取り上げられていたAarogya Setuですが、5月26日にオープンソースに変更され、6月26日までの1ヶ月間のうちにプログラムの不備や、プログラム向上の可能性を提案した人に対して最大40万ルピー(約60万円)の報酬を与える「The bug bounty program(バグ報奨金制度)」を採用し、機能は徐々に向上しているようです。
同様の国産コロナ対策アプリは英国の「NHS COVID-19 App」やシンガポールの「FaceTogether」、オーストラリアの「COVIDSafe」などがありますが、一般市民にインストールを義務付けているのは現時点ではインドだけのようです。
今週月曜日よりショッピングモールやレストランも運営を再開し始め、新型コロナウイルスの新規感染者数も増えてきていますが、このような対策アプリを上手く利用し、感染確率の多い環境を避けることで自分の身を守ることができます。また感染者の位置情報を知ることは心的不安の軽減にもつながるでしょう。この不確実な状況の中、少しでも安心して生活できる為のアプリが開発されていることはとてもうれしく思います。
Source:
Google Mapsに新型コロナ対策機能追加
5月の世界アプリダウンロード数ランキング
Aarogya Setuの使い方
Aarogya Setu、最大60万円のバグ報奨金制度を採用
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