Vol.0055 コロナ禍で野菜価格高騰に対抗するインドの農業戦略
玉ねぎ・じゃがいも・トマトの価格高騰が家計を圧迫
ザ・ヒンドゥ誌の11月1日の記事によると、トマト・ジャガイモ・タマネギなどの日常的に必須な野菜の小売価格がここ2ヶ月でインド全土で急騰し、インドの7割の家庭での野菜の購入費がこれまでの125~200%となっているとのことです。コロナウイルスの感染拡大の影響で収入に影響が出ている中、この野菜価格高騰は家計にさらなる動揺を与えています。
これらの生鮮野菜の価格は、供給の途絶などいくつかの要因により、各州の小売市場で上昇しています。
LocalCirclesが実施した調査によると、2020年9月11日に発表された調査では、約6割の世帯がトマトは1kgあたり60ポンド以上、ジャガイモは30ポンド以上、玉ねぎは25ポンド以上の出費だと回答、11月1日時点では約7割の国民がトマトは1kgあたり50ポンド以上、ジャガイモは40ポンド以上、タマネギは50ポンド以上の出費になっていると答えています。
大多数の世帯が1kgあたりに支払う平均小売価格は、1か月でジャガイモが3割、タマネギが2倍に上昇したことになります。10月のムンバイでは、これらの必須野菜の価格が記録的な高値を記録し、1kgあたりトマトは60ポンド、ジャガイモは60ポンド、タマネギは130ポンドで販売されたという記録もあります。
インド政府による価格安定のための介入
特にたまねぎに関してはいくつかの都市で玉ねぎの価格が1kgあたり₹100を超えるなど問題となっており、ザ・ヒンドゥ誌の10月30日の記事によると、これに対し中央協同組合(NAFED)は高騰する価格を安定させるため、すぐにタマネギの輸入促進を開始し、あわせて玉ねぎ・玉ねぎ種子の輸出の禁止が行われました。
検疫や燻蒸の要件を免除することで輸入を促進、9月には玉ねぎの輸出、10月29日にはタマネギ種子の輸出も禁止されました。タマネギはすでにエジプト、アフガニスタン、トルコから民間業者が市場価格で購入し、すでに7,000トンが到着しており、さらに25,000トンが到着する予定とのことです。
さらに当局は買いだめを防ぐために年末まで卸売業者や小売業者に在庫の制限を課しました。10月23日から12月31日までの間、卸売業者は25トン、小売業者は2トンまでに玉ねぎの保管量が制限されます。
在庫制限を課してからの1週間も玉ねぎの国内平均小売価格は上昇を続け、1kgあたり10ポンド上昇し、ほぼ66ポンドとなりましたが、ピユシュ・ゴーヤル食品・消費者省大臣は価格はその後ほぼ安定していることを強調しました。
もう一つの主食であるジャガイモについては、インド全土の小売平均価格が1kgあたり42ポンド前後で推移していますが、輸入関税は1月末まで30%から10%に引き下げられており、ゴーヤル氏はブータンから3万トンが輸入されていると発言しています。
一方で別の問題も
一方で、価格安定のための玉ねぎ輸出制限により「バンガロールローズ」品種の玉ねぎの輸出ができなくなるなどの弊害も出ています。
ザ・ヒンドゥ誌の9月15日の記事によると、この品種は辛味が強く、インド国内では人気がありませんが、東南アジア諸国で高い需要があり、年間生産量推定約6万トンのうち約90%がマレーシア・タイ・シンガポール・台湾など東南アジア諸国に輸出されています。
またインドでは9月20日に可決された新しい農業法案では農作物取引の自由化が推し進められており、これに反対する農民による反対運動が起こっているさなかでもあります。
激動のインドの農業を注視していく必要がありそうです。
ソース:タマネギ、ジャガイモ、トマトの高値が家計を圧迫している
7,000トンのタマネギが輸入され、25,000トンがディーパバリの前に到着する可能性が高いとPiyushGoyalは言います